hiB程度まで地声を張り上げ、文字通り喉を消耗して歌っていた日々。カラオケ後に喉の奥から血の味がするということもザラでした。そんな日々に光をもたらしたのがミックスボイス。
ボイトレ好きなら知らぬ者のないロジャー・ラブ氏の「例のあの本」でミックスボイスの存在を知ったものの、その詳しい練習法や考え方はなかなか手に入らず、悩むこともありました。
この記事では、かつての私が感じていた「ミックスボイスと音域」に関する疑問を整理してみます。貴方も、同じような疑問を感じているかもしれませんね!
ミックスボイスと音域
私がミックスボイスに関しての持論を確立する以前、ミックスボイスと音域に関して抱えていた疑問は、以下のようなものでした。
いかがでしょうか?貴方がミックスボイスを習得しようと努力している真っ最中なら、貴方もこのような悩みを抱えているのではないでしょうか。貴方の助けになることを願いつつ、それぞれについて私の見解をお伝えしていきます。

1. 地声とミックス
人が地声でしか歌えないとすれば、高音は才能です。地声を何処まで持ち上げることが出来るかは、生まれ持った声帯の形=しゃべり声の高さに大きく依存するからです。
しかし、ご安心ください。私たちは地声でしか歌えないわけではありません。地声に依存せずに高音を出すためにミックスボイスという技術があるのですから。
高音=才能という考え方が常識と考えられるとすれば、それはミックスボイスという技術が、ボイトレマニア以外には正しく理解されていないからです。
「地声が低いのは魅力的なミックスに有利!」も、ぜひご覧ください!
ミックスボイスは、地声では高音が出せない人が高音をラクラク出すための技術ともいえます。そして、その習得に才能は必要ありません。ただ練習に真摯に向き合う気持ちさえあれば、確実に習得できます。

2. カバーする音域
ミックスボイスは、地声が苦しくなる前から使用します。個人差はあるでしょうが、平均を取るならば、男性ならmid2D、女性ならhiA程度から使用するべきです。

上図は私の感覚を図示したものです。私は、mid2C#~D以降はミックスに切り替えて歌っていて、余裕を持って使える上限はhiC#位までの約1オクターブです。
地声で無理をして喚声点を越えてからミックスへ繋ぐことは、不可能です。ですから、地声が苦しくなる音より前で、地声の調整が必要です。
ヘッドボイスの考え方
ヘッドボイスは、ミックスボイスの一種で単純に裏声成分が多い声。声帯フォームを緩めることで意図的に裏声成分を増やすこともできますし、声帯コントロールが出来ずにそうなってしまうこともあります。
ミックスとヘッドの一番の違いは、稼働する筋肉。中でも、「声帯交錯筋」の働きは非常に重要で、この筋肉を稼働させることで声が輝きを帯び始めます。
ミックスボイスとヘッドボイスは、発声が根本から異なる物ではなく、どちらも裏声ベースの声。稼働させる筋肉を調整するなどして声帯の緊張度合いを操作し、音色を変化させます。

3. 音域は広がるのか
「ミックスボイスを習得すれば音域は広がるの?」という問いへの答えは、YESです。ミックスボイスが出来る人は、性別問わず、hiD程度までは出すことが出来ます。
ただし、それはミックスボイスの練習過程で裏声を強化し続けた結果、必然的にヘッドボイスが強化されるからという方がより正確です。
裏声は使い続ければ確実に伸びていきます。だからこそ、正しい練習に取り組みさえすれば、地声のようなパワーを持った高音が、確実に手に入ります。
以前の私は、hiCのファルセットも出せませんでしたが、今はヘッドボイスで余裕を持って出せます。練習は嘘をつかないということですね。

さいごに
ミックス練習とは裏声練習であると言ってしまっても問題はありません。裏声練習ばかりしていると声が弱くなるという指摘に対しては、次の言葉を返しましょう。
【フレデリック・フースラー著 「うたうこと」p88より引用】
仮声をよく練習することは、全然危険はない。たとえ強く十分に訓練されても、それによって初めて、声がある声区から他の声区へひっくりかえる懸念がなくなりこそするが、まったく危険はないのである。
正しい方法で練習すれば、自分の声を失うリスクなしに声を強化していくことが出来ます。私が考える練習方法も記事をご用意していますので、ぜひご覧ください!
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