「ジラーレ」。私のボイトレ論の基礎であるベルカント唱法において、高音を出すための基礎かつ最重要とされる技術です。
そんなジラーレに繋がる今回の独自感覚は、「喉から浮いたフォークボール」。喉仏というマウンドに立ったピッチャーが登場します。
そのピッチャーが投じた一球は、ど真ん中へのフォークボール。これが野球なら、ピッチャーは大ピンチですが、ジラーレという意味では大正解です。
今回は、ジラーレの概念とその効果を簡単に説明したのち、独自感覚の説明をしていきます。貴方も声楽の最重要テクニックを目指して、練習してみませんか?
ジラーレの基礎知識
私は、ベルカント唱法を文章以外で学んだことはありません。しかし、ベルカントという発声は、人体にとって最も合理的かつ自然な発声を体系化した物のはずです。
つまり、特別な勉強をせずとも体との対話を繰り返せば、その神髄の一部を垣間見ることが可能だと考えています。
今回は、私なりに解釈した「ジラーレ」について、お伝えしていきます。
その意味とその狙い
ジラーレとはイタリア語で「回す」という意味で、「息を回す」ことで声楽的な声を引き出そうとする技術です。
その効果
声楽において、高音はジラーレを用いることが必須とされています。それをしないと、アペルトと呼ばれる叫び声になり、声楽的な声とは言えなくなるからです。
ジラーレを行う事で、全身と歌声が連動し、喉仏の位置が安定します。その結果、声が太く豊かな音色を持ち、声楽的な魅力のある声になります。
ジラーレやアペルトについては、声楽に詳しい方が色々と記事を上げてくれています。興味があればぜひ、検索してみてください。

「喉から浮いたフォークボール感覚」
さて、ここからは、私が掴んだジラーレの独自感覚を説明していきます。独自感覚の名は、「喉から浮いたフォークボール感覚」。
ジラーレにおいて特に注意するべきは、息の使い方。「息を回して、声を曲げる」という意識が必要になります。
そのために、息をボールに見立てて、その使い方をお伝えするのが、「喉から浮いたフォークボール感覚」です。
フォークボールは野球の変化球の一つ。下方向に変化するボールです。
独自感覚の説明
ピッチャーとキャッチャーの位置関係
喉仏にピッチャーがいて、口の出口で待ち受けるキャッチャーに対し、息のボールを投げるとイメージしてください。
なお、ピッチャーとキャッチャーは地面と平行の同じ高さにいます。仮にピッチャーが地面と平行のボールを投げるならば、そのボールは「ど真ん中」に決まります。
「狙うコース」と「投じる球種」
キャッチャーの要求は、「ど真ん中にフォークを投げろ」。先述したように、フォークは下方向に落ちる球です。キャッチャーの要求通り、フォークをど真ん中へ届けるには、少し上方向にフォークを投げる必要があります。
ボール(息)の投げ方
ピッチャーは、ボールを上に向けて投げます。弾は弧を描くように緩やかに上昇した後、フォークボールの効果で下降し、最終的にど真ん中に収まりました。

独自感覚の意図
後頭部に貯められた空気が頭頂部に登り、頭蓋骨を滑り落ちて口に到達する。息が、逆U字を描くイメージとも言えます。この感覚を、私なりに再現したのが「喉から浮いたフォーク感覚」です。
この結果として、声の上側に息がかぶさり、声が下方向に曲がるイメージを持つことが重要です。これこそが私が考えるジラーレの感覚です。
・声の上側に息を通し声を曲げる
・息が逆U字を描き、顔の表面を滑り落ちるイメージ
ジラーレを行う事で、喉仏の上昇を軽減し、体と声が結び付いた感覚を得ることが出来ます。その結果、声に地声っぽさが付与され、音楽的な音色を持った声を出すことが出来るのです。

さいごに
ミックスボイスを教えるボイトレスクールは多かれど、ジラーレの重要性を強調しているスクールは殆ど無いように思います。
しかし、ジラーレの感覚を維持しながら喚声点を越えることは、地声っぽい音色を保ったミックスボイスを出すために必要不可欠です。
ミックスボイスの声帯フォームに適切な閉鎖は不可欠ですが、その声帯をどう鳴らすかも同じくらい重要です。
閉鎖、閉鎖と考えすぎず、「声を下方向へ曲げる感覚」も養うことで、豊かな音色を持ったミックスボイスを会得していきましょう!