一般に、自分の声を自分で評価することは難しいとされています。それでは、歌の練習は誰かに師事するべきでしょうか?
一理ある意見だとは思いますが、オペラ歌手になろうとでもしていない限りは、自己評価をベースにした成長が可能だと思っています。
この記事では、自己評価が可能である理由と、声を評価するために考えるべき要素について、説明していきます。
結論
声を成長させるためには声を自己評価する力=自分力が必要ですが、それは独学だろうと誰かに師事しようと変わりません。
自己評価を他人に丸投げしてしまうようでは、自分力を高めることは出来ません。誰しもが、自分力を高めなくてはならないのです。
自己評価が難しいとされる理由
自分の声を正確に評価することは難しいと言われています。私は、このような主張を支えるのは、以下のような理由であると考えています。
- 骨伝導で感じる声と、実際の声は違うから
- 録音機の機能には限界があるから
- そもそも、正しい声とは何かが分からないから
ベルカントの教師を含め、多くの方が「歌は教師に師事するべき」と主張しています。この主張には、無視できない合理性があります。
ただし、これには、幾ばくかのポジショントークが含まれていると考えています。自分達で自らの存在意義を否定するはずが無いのですから。
自己評価は可能だ
自己評価が難しいとされる理由を、以下の通り3つ提示しました。念のため、もう一度リストアップしておきます。
- 骨伝導で感じる声と、空気を伝わる声は違うから
- 録音機の機能には限界があるから
- そもそも、正しい声とは何かが分からないから
しかし私は、以下の2つの理由から、いずれの要素も克服可能だと考えています。
理由1:録音機の声で十分判断できる
自分が聴いている声と実際に空気を伝播する声が違うなら、声を録音すれば済む話です。最近のICレコーダーは、十分な性能を持っています。
なお、録音の目的は、声の方向性確認で、真実の声を複製することではありません。従って、録音された声と真実の声は、同一である必要はありません。あくまで、自分の声の大枠がつかめれば、評価を下すことが出来るからです。
「成長に必要な耳の力を鍛える」も、ぜひご覧ください!
これによって、上記赤枠内の①と②は克服できると考えます。
理由2:判断基準は声だけではない
自分の声を判断するのは、耳だけではありません。声は、体の中で生まれる様々な感覚と結びつくものだからです。では、正しい声の基準とは何でしょうか?
「正しい声の作り方」も、ぜひご覧ください!
私が考える基準は、それが自然かどうかです。つまり、体がOKという発声を探るのです。具体的には、以下のポイントを意識しましょう。
- 全くもって苦しくない
- 心地よい緊張、ハリを感じる
- 歌っていて、開放感がある
これにより、上記赤枠内③の要素は克服可能だと考えています。
参考:聴力を失ったプロ歌手
アメリカには、18歳で聴力を失ってしまった歌手、Mandy Harevyさんがいます。彼女は、有名オーディションであるAGTを経て、プロになっています。
America’s Got Talent 2017 Mandy Harveyさんのコメント(意訳)
聴力を失った後、どうすれば再び歌えるかを考えていました。そして、チューナーを使いながら、体の筋肉の記憶と向き会い、音程が取れると確信しました。
その時の歌は、AGTの公式チャンネルで鑑賞出来ます。彼女の人生すべてを乗せた、素晴らしい歌声です。芸術は、爆発だ。それを強く感じます。
彼女は、体の感覚で声質・音程をコントロールしている、これ以上ないお手本と言えるでしょう。
さいごに
自分で自分の声を評価するのは難しいようにも思えます。しかし、自己評価なくして、成長なし。自分力を高め、効果的に成長していきましょう!