ミックスボイスが薄くて迫力が無い。この悩みは、裏声の可能性を信じて練習を始めた私を大きく悩ませた問題の一つでした。
しかし、薄い声はミックスボイスの成長過程の中に存在する声です。正しく声を鍛えれば、声は健康的な響きを帯び始めるのです。
この記事では、薄い声の原因を3つに大別し、それぞれがミックスボイス習得にどうかかわってくるかを考察していきます。
結論
練習初期~中期にかけて、ミックスボイスが薄く、存在感が不足するのは普通です。その声を間違っていると判断し、放棄しないでください。
次のステップとして、裏声練習を通じて「ミックスボイスを作る筋肉群」に対する神経支配を強めていけば、音色も改善されていきます。
「薄い声」を生み出すもの
薄い声=悪い声ではありません。薄い声は、正しい成長過程にも必ず現れる声です。薄い声の原因としては、大きく分けて以下の3つがあります。
- 使用する息の量が多すぎる
- 地声を必要以上に弱めている
- 裏声にリリースできているが、声帯閉鎖が甘い
薄い声には「正しい薄い声」と「良くない薄い声」の二種類があります。後者の声で練習を続けても、ミックスは獲得できません。
それでは、「良くない薄い声」について簡単に解説した後、「正しい薄い声」をどうやってミックスボイスに繋げていくかについて解説します。
1. 息の量が多すぎて、薄い
「良くない薄い声」の一つ目として、息を使い過ぎた声があります。とある偉大な歌手は、歌と息の量について以下のように述べています。
【 フレデリック・フースラー著 「うたうこと」p67より 引用 】
息の使用量は極度に少なくしなければならない。(「私は歌うためには、花の香りをかぐ程度にしか、息を吸わない」)
ミックスに必要な息の量は、極めて少ないです。適切な「声帯フォーム」でも、息を吹き上げ、ぶつけてしまえば閉鎖を維持できません。
「ミックスボイスと息の使い方」も、ぜひご覧ください!
2. 地声で息漏れしているから、薄い
「良くない薄い声」の二つ目として、息漏れさせた地声があります。声を一本化するためには、地声にも調整が必要ですが、息漏れさせた地声はNGです。
必要な調整とは、力みを取ること、息の声への変換効率をあげること、声帯をリラックスさせることなどの調整を指します。
3. 声帯閉鎖が甘いから、薄い
「声帯フォーム」の声帯閉鎖の甘さが原因の薄い声は、「正しい薄い声」です。この場合、悲観する必要はありません。正しく練習を積み上げれば、声は発展します。
では、この声は、一体どうすれば正しい声へと発展していくのでしょうか?答えは、次の様な「声帯フォーム」とその鳴らし方を体得していくことです。
- 「声帯フォーム」は、最大限の伸展と最小限の閉鎖
- 息が適切に送られると、その声帯が健康的に振動
- 喉周りはリラックスしている
声に存在感を持たせるために最も根源的な要素は、閉鎖能力です。特に、ミックスを作る筋肉である緑辺機構が目覚めていなければ、薄い声からは脱却できません。
声を強めるために
「緑辺機構の神経支配の回復」は、ベルカントにおいても核心的な要素とされています。言葉を換えるならば、その実現は非常に難しいということです。
必要不可欠な筋肉群
声を強めるためには、声帯の神経支配を回復し、声帯を健康的に鳴らす練習を地道に繰り返すしかありません。声を劇的に変える魔法はないのです。
【フレデリック・フースラー著 「うたうこと」p33より抜粋】
良い流派ではすべて、それぞれ独自の方法で、この帯域の神経支配をよくすることに、絶えず大きな苦心を重ねてきた
この帯域とは、声帯の緑辺機構を指しています。緑辺機構の神経支配の回復は、ミックスボイスを実現するために必要不可欠な要素です。
「薄い声に存在感を与える筋肉群」も、ぜひご覧ください!
練習の注意点
「声帯フォーム」の構築は、ステップバイステップで行われなくてはいけません。声帯交錯筋は魅力的ですが、いきなりそこに飛びついても効果は出ません。
「ミックスボイスの開発手順を知ろう」も、ぜひご覧ください!
「声の開発は焦らず、じっくり」も、ぜひご覧ください!
「貴方の成長を阻む落とし穴たち」も、ぜひご覧ください!
さいごに
「声が薄い」は、ミックスを習得しようとするならば避けては通れない症状です。そこで絶望して諦めるか、まだ見ぬ地平を目指して歩き続けるかで運命が分かれます。
歌の練習は時間が掛かる物です。深刻になりすぎても仕方ありません。少しばかり能天気なくらいが、ちょうどいいですよ!