成長のための知識・指針

ミックスボイスが出来ない歌手は存在するの?はい、むしろ出来る人が少数派です

image of a great singer
こんな記事

プロの歌手は皆、ミックスが出来る。そう思っているのなら、それは間違いです。大多数は、満足にミックス出来ていません

私の中で「ミックス出来る」の条件は、声が一本化しており、苦しそうな雰囲気もなく、ブレイクでの揺らぎも感じさせないというもの。

こういった技術を持って歌えている歌手は、メジャーで活躍している歌手の中でも、ほんの一握りだと言えるでしょう。

結論

プロの歌手は、ミックスボイスが出来て当然と思っていませんか?実際に活躍する歌手のうち、その技術をマスターしている人は少ないです。

技術があるに越したことはありませんが、それがなくとも、ほかの要素を適切に利用すれば、魅力的な歌を歌うことは可能です。

プロもミックスできない

ミックスボイスが出来ないと歌手になれないというのは、神話に過ぎません。ジャンルをJ-POP、J-ROCKに絞るならば、そこで活躍する歌手のうち、その技術を完全に体得しているように思われる歌手は、ほんの一握りなのです。

発達したミックスボイスは、聴き手をハラハラさせることはありません。ライブで高音域に入るとファンが心配になるような歌手が多いことは、プロの歌手でもミックスボイスが出来ていないということの何よりの証拠です。

高音になると叫んだり、フラットしたり、声が詰まったりする歌手は、ミックスが出来ていません。観客を煽ったりする際にシャウトで超高音が出ていても、mid2E~hiBあたりを柔らかく出すことが出来ないのは、よくあるパターンです。

「ミックスが出来ている歌手」を挙げるならば、小田和正さん、草野マサムネさん、福山芳樹さん、小野正利さん、ASKAさんなど。高音域でも不安を感じさせず、むしろそこからが見せ場になる歌手ですね。

大勢の中の少数のイメージ

プロにミックスが必須ではない理由

先に述べたように、プロ歌手でも、ミックスボイスが出来ている歌手は少ないです。つまり、ミックスボイスが出来なくてもプロになることはできます

では、どうしてミックスボイスが出来なくてもプロになることが出来るのでしょうか?私は、以下のようなことが、それに関わっていると考えています。

  1. 魅力の要素は様々
  2. 機械の力は偉大
  3. そもそも難易度が高い
  4. ミックスは一つの手段

1.  魅力の要素は様々

極端に言ってしまうと、一般大衆が歌手に求めているのは、歌唱力ではなくほかの要素であることが多いです。必ずしも音楽的な素質にカテゴライズされないものであっても、聴衆を惹きつける魅力というものはあります。

音楽的な才能で言えば、天才的な作曲能力があったり、特徴的な声であったり、何かしらの個性を際立てるものがあれば、それだけで歌手になる素質があるといって問題ないでしょう。もちろん、オールラウンダーである必要はないのです。

「これは自信がある」と言えるような何かがあると良いですね。勿論、それがミックスの技量であってもよいですが、純粋な技術で勝負しようとすると、上には上がいるのは事実です。

finding something you take pride in

2.  機械の力は偉大

制作は、多くの時間と資産をつぎ込み、全身全霊を込めて行います。その献身は、全てリスナーに最高の作品を届けるためであり、その努力に対して批判的な感情は持っていません。しかし、機械が歌手の声を左右することは、事実です。

今の時代、編集作業で声を大きく変えることが出来ます。ピッチ変更はもちろん、声の音圧、響きの調整、ノイズの除去など、その力は非常に多岐に渡ります。ある意味では、CDの音源と歌手の実力は、必ずしも相関性がないと言えるでしょう。

誤解を恐れずに言えば、歌手としての技量が多少不足していても、ほかの要素が魅力的ならば、歌手としての商品価値はあると考えられます。そして、適切に機械を使うことで、不足した技量に補正をかけることが可能なのです。

私自身、編集の力がどれだけのものか、学生時代に実感しました。当時の音楽掲示板では、「編集禁止」というルールがありました。素人のカラオケがプロの音源になってしまう、その変化には驚いたものです。

music studio where everything can be modified

偉大な助けの弊害

ところで、このことはボーカリストにとって助けでもありますが、同時に悪夢でもあります。なまじ編集で上限を突破出来てしまうがゆえに、求められるキーは際限なく上がり、それをライブで再現するように求められてしまっているのです。

緊張するステージで、本来の実力以上の声を披露しろと言われても無理です。この意味で、現代歌手には大いに同情する部分があります。

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3.  そもそも難易度が高い

便宜的に「ミックスボイスを習得した」と自分自身を形容することはありますが、それはあくまでアマチュアレベルで見た時の話です。私自身、自分の技術が完成したなどとは露にも思っていませんし、だからこそまだ練習を楽しんでいます。

ミックスボイスが完成しているように思える歌手、例えば草野マサムネさんや小田和正さんのように、悪い意味で声の切り替わりポイントが分かることもなく、魅力的で開放的な高音で歌うというのは、大変に難しいことです。

あのレベルに達しなければプロになることができないとするなら、素人からプロになるというのはほとんど不可能なことです。草野さんの例を取るならば、デビュー当時から強い個性こそありますが、今ほどの安定感はないでしょう。

年齢にもよりますが、「粗削りだけれど光るものがある」という評価でも、歌手になることは出来ます。私は学生のとき、とあるオーディションに合格しましたが、審査官からそう評価されました。

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4.  ミックスは一つの手段

また、ミックスボイスが全てのジャンルの、全ての声の頂点に立つ声と言うのもそもそも誤解です。ミックスは声帯に負担の無い状態で「地声っぽく聞こえる声」を出す技術です。声の安定性などはともかく、声の迫力では地声そのものには劣ります。

私は高音をラクラク歌いたいと思っていますし、スピッツや女性アーティストの曲も歌い続けたいと思っているので、ミックスボイスに注力しています。ただ、ジャンルによっては、ミックスボイスよりも地声張り上げが相応しいケースもあるでしょう。

 

さいごに

ミックスボイスに関する知識や練習法が広まってきたこともあり、その習得自体も簡単だと思われがちですが、ミックスボイスはベルカントの世界でも真髄とされるほどの技術であり、その習得には長い鍛錬が必要です。

そして、さまざまな要素が評価軸となる音楽シーンにおいて、ミックスボイスの会得は、望ましいものであるとはいえ、必須ではありません。自分自身が音楽を楽しむ中で、技量と個性を磨いていきましょう!

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