ミックスボイスの存在議論は、ミックス練習者にとって興味のある話題の一つです。しかし、その追求は本当に必要なものでしょうか?
ミックスでなくても満足いく声で歌えるなら問題ないはずです。ですから、ミックスボイスが存在するかという議論は不毛です。
言葉の定義に捉われず、自分の理想の発声をしっかりと認識し、そこに近づくための練習をコツコツと積み上げましょう。
結論
私たちにとって重要なのは、ミックスボイスが存在するかではなく、地声っぽい声で楽に喚声点を越えて歌う方法があるか、です。
そして、その答えは間違いなくYES。それであれば、その声が何と呼ばれる声であるかは、全くもって些末な問題ではありませんか?
ミックスは存在する
このサイトでは、貴方の独学ミックスボイス習得を補助するために記事を投稿しています。もちろん、私はミックスボイスが存在すると確信しています。
ただし、出発点は、体との対話を通じて考える理想の発声。その理想の発声に対し、後からミックスボイスと言う名をつけているだけであることに注意しましょう。
ミックスボイスはただの名前であり、それが実在するかどうかを議論することより、その声がどんな声なのかを考える事が重要です。
理想の発声の特長
私にとってのミックスボイス、つまり私が考える理想の発声とは以下の通りです。
- 個人個人が持つ独特の地声成分を活かせ、
- 喚声点を越えても苦しさを感じること無く、
- 自由かつ爽快に歌える
簡略化していますが、この発声が私の理想です。そして、このサイトでは、この発声を実現する方法論として、様々な手法でのアプローチをご紹介しているのです。
「ミックスボイス習得のロードマップ」も、ぜひご覧ください!
名前に捉われないで
正しく歩めば、大空を舞う様な自由な発声を習得できます。ただし、その声がミックスボイスと呼ばれなくてはならない理由もありません。
実在が議論される理由
ミックスボイスの実在について議論が出るのは、以下のような理由からでしょう。
- ミックスボイスへの期待値が高すぎるから
- 天然ミックス者の影響力が強いから
- 出来てくると、意外と普通だから
1. ミックスへの期待値が高すぎるから
ミックスは、貴方の声に一定の自由をもたらす素晴らしい声ですが、全知全能の声ではありません。全ての声は、一長一短です。出来ないこともあるのです。
ミックスボイスがある程度できている人でも、その声が完璧ではないという理由で自分のミックスボイスを疑ったりすることが起こり得ます。
「ミックスに出来る事、出来ない事」も、ぜひご覧ください!
2. 天然ミックスの影響力が強いから
天然ミックスで有名な歌手として、スピッツ・草野さんが挙げられます。しかし、草野さん自身がミックスという技術について語っているところは見たことがありません。
「昔から高い声は出せたんですよね」くらいの回答しかしていないのではないでしょうか?間違っても、「輪状甲状筋を鍛えて・・・」などとは言わないでしょう。
そもそも、プロの歌手が歌唱技術論を語ることは、メリットがありません。ミックスボイスは、いわば彼らの商品の下地なのですから。
3. 出来てくると、意外と普通だから
ミックスは、繊細な声帯コントロールを必要とする発声ではありますが、同時に体の自然に近づく発声でもあります。正しいボイトレとは、我々が生まれながらにして持っている歌手としての機能のリハビリに他なりません。
【フレデリック・フースラー著 「うたうこと」p10より引用】
声を形成する、すなわち声を訓練することは、再生の過程である。(中略)すべての芸術的考慮から離れて、声の訓練はこのように治療以外の何物でもない。
このような考え方から、ミックスボイスの習熟が進むにつれ、発声への特別な意識が少なくなっていくのは当然のことと言えるでしょう。
さいごに
私は、理想かつ自然な発声としてのミックスボイスが存在すると考えていますが、その存在の是非は、言葉の定義次第であることは火を見るより明らかです。
大切なのは、ミックスボイスの存在を議論することではなく、自分にとっての理想的発声をしっかりと認識し、コツコツと練習することです。
ミックスボイスはあくまで名です。ミックスという名を追いすぎるのは、天下無双という名に捉われた剣豪と言ったところでしょうか。