ミックスボイスが出来ない人にとって、その声は蜃気楼のようなものです。不安を抱えながら練習をしている貴方のために、私が考えるミックス習得のロードマップをご提示します。
その考え方は、「ベルカント唱法」を基礎としていますが、私なりのアレンジも加えているので、全く同一とは言えません。
具体的な練習方法は各個別記事に譲るとして、この記事ではミックスボイス獲得までのロードマップ、道しるべを確認していきます。
ミックス習得の手順
ミックスボイスは裏声です。ですから、ミックスを鍛える練習とは、裏声を強化していく練習と言い換えて問題ありません。そのためのプロセスは、以下の通りです。
個別ステップごとの考え方や練習方法は、別記事にて紹介していますので、この記事では手順を示すことを中心に記載します。
1. 裏声に慣れ、ヘッドボイスを作る
大抵の人は、裏声が長い休眠状態に入っていて、まともに出せない状態になっています。まずは、その声に語りかけ、目覚めを促していく必要があります。
【フレデリック・フースラー著 「うたうこと」p10より引用】
声を形成する、すなわち声を訓練することは、再生の過程である。(中略)すべての芸術的考慮から離れて、声の訓練はこのように治療以外の何物でもない。
上記のように、私たちはまずは裏声に慣れる作業から始めましょう。ミックスボイスの獲得のためには、地声と裏声の強さが均一になる必要があります。そのため、低音から高音まで、満遍なく裏声を練習しましょう。
低音域から高音域まで、ある程度の自由度を持って出せるようになったら、今度はヘッドボイス習得を目指します。普通の裏声とは息の使い方を変えることで、少ない息でロングトーンが可能になるように練習しましょう。
「裏声に慣れて、ヘッドボイスを習得」も、ぜひご覧ください!
2. 声帯交錯筋を目覚めさせる
ヘッドボイスがある程度形になってくると、ほとんどの曲をヘッドボイスだけで歌えるようになります。ただし、低いヘッドボイスは弱弱しく、安定しているとは言えません。その状態まで来たら、声帯交錯筋の活性化に取り組みましょう。
フレデリック・フースラー著「うたうこと」P33より引用
この筋束によって初めてふたつの「主要声区」の統一が行われるのである
上記は、声帯交錯筋の重要性を述べた声楽家の言葉です。声帯交錯筋の働き無くして、声区融合は実現できません。イメージとしては、ヘッドボイスの開発で大地を耕し、そこに声帯交錯筋という名の花を咲かせるという感じです。
軽やかに閉鎖した声帯の中央に、点としてのこの筋肉を感じれるようになると、ミックスボイスが力強さを増し、輝きを持ち始めることでしょう。ただし、この筋肉の覚醒には長い時間がかかるものですから、焦って飛び込まないようにしましょう。
「ミックスの核である声帯交錯筋」も、ぜひご覧ください!
3. 体と対話して微調整
ミックスボイスはバランス訓練のようなものだと言われることもありますが、バランスだけで出せる声ではありません。ある程度の基礎訓練が済んでいない声帯がバランスを取った発声を行うことは不可能だからです。
しかし、ヘッドボイスの開発に一定の目途がつき、声帯交錯筋が目覚めるレベルになってきたら、体と対話を通じて発声を微調整していく必要があります。この段階に至ったら、自分の発声を客観視し、改善点を見つけていくことが必要です。
どうすれば声が響きやすいか、力の入れ方はどの程度が最適か、息の使い方や回し方はどうすればいいかなど、発声時に気にするべきことはたくさんあります。自分なりの方法を模索しながら、最小の力で最大の効率を生み出せる発声を目指しましょう。
「私の発声感覚とその微調整の軌跡」も、ぜひご覧ください!
4. ひたすら歌い続ける
私がおススメするボイトレ法は、自分の発声方法の基本を定めたうえで、大好きな歌を歌うことで声帯を刺激し、その扱いに習熟していくという物です。ボイトレに通うのも悪くはありませんが、ボイトレに行かなくてもミックスは習得できます。
ですから、カラオケボックスで歌を歌いながら成長しましょう。当然ですが、ミックスボイスが必要な音域を使う歌手の曲を歌いましょう。あまりにも使用音域が高すぎる歌手は避け、男性ならhiC、女性ならhiD#位が最高音の曲を練習しましょう。
私は、スピッツの曲を中心に歌っています。昔は上手く処理できなかったところがだんだんできるようになってきたり、楽しく練習していますよ!私がおススメする練習曲もご紹介していますので、ぜひご覧ください!
「おススメのミックス練習曲」も、ぜひご覧ください!
さいごに
ミックスボイスの習得に才能が必要というのは、まやかしです。ミックスに才能論を持ち出す人の多くは、継続が足りないだけです。ミックスボイスはコツやひらめきを前提にしたものではなく、地道な鍛錬を前提とした発声法なのです。