「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「雪風」は、スピッツの15thアルバム「醒めない」の収録曲。スピッツ初の雪ソングということでも、秘かに話題を集めましたね。
この記事では、そんな「雪風」の魅力を語りつつ、歌詞も考察。今回は、既に現世を旅立った青年が、最愛の君を見守る心情を考えました!
「雪風」とは
「雪風」は、スピッツが2016年に発売した15thアルバム「醒めない」の収録曲。前曲の「ブチ」は軽快な雰囲気を放つコンパクトな良曲でしたが、この「雪風」は温かな光と同時に吹き抜ける寒風を感じる、意味深なバラード曲だと感じています!
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | 雪風 | 意味深バラード |
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1. 演奏への印象
「雪風」の演奏の中心には、寂しさや儚さといった切なげな雰囲気を感じています。そこにあるのにないような、蜃気楼的な印象もありますね。曲の世界に闇を感じるわけではなく、むしろ白すぎる世界の中を歩く青年の姿が浮かぶ曲だと感じています。
そんな「雪風」は、ゆったりとしたテンポで進む曲ですから、雪風が吹き荒れるような印象を受けることはありません。むしろ例えば、陽光降り注ぐ静かな雪原に軽く流れた風が、降り積もった粉雪を宙に舞い上げている情景の方がしっくりきますね。
また、ラスサビ直後のコーラスが幻想的。その膨らみを持った雰囲気が、曲に感じる蜃気楼的な雰囲気を強めている気がします。私はそんな「雪風」に、生命感溢れる白い輝きの中、舞い上がった雪煙に溶けいく青年という対比を感じていますね。
2. 個人的な想い
正直、私は「雪風」に複雑な想いを抱いています。楽曲そのものは良曲だと感じています。ただ、アルバム曲としてみた場合、複雑な感情が胸をよぎるのです。私がそう感じる一番の理由は、歌詞の物語がハッピーエンドだとは感じないからです。
曲の物語は、救いがないとは言わずとも、草野さん自身の曲解説(主人公≒幽霊)もあり、切なさは感じます。私は、この感じがどこか「醒めない」の中でやや浮いていると感じるのです。もちろん、これが個人の感覚であることは強調しておきます。
そんな私は、「夏の魔物」などの初期の悲し気な曲は大好き。私はきっと、後追いした楽曲は結果物として楽しみつつ、ファンになって以降のリアルタイムスピッツには自己投影をしているのでしょう。そして今の私は、明るい話に惹かれるのですね。
歌詞の世界を考える
ここからは、「雪風」の歌詞を追いながら、その歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「雪風の吹く日には」としました。また、その考察テーマを補足するため、以下の4つのトピックを準備してみました!
解釈は私の感想に過ぎず、全くもって他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、私の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスをまとめています!
1. 考察の前提
先述したように、「雪風」は草野さんの作詞意図が明らかになっている曲で、その設定とは、既にこの世を去った主人公視点の曲だというものです。この設定は、曲の儚い雰囲気と合致すると感じるため、以降でもその設定を採用していきます。
ただ私は、彼は幽霊的な意識があるだけで、現世の君との直接交流は出来ない存在だと考えています。そこで、2番メロで描かれている「交流」とは、彼が君の夢の世界の中へ入り込み、在りし日の自分の幻影を君に見せることを指すとしました。
また、タイトルに意味を持たせるため、「雪風」が吹く日を特別な日だとしました。彼は、既に現実を離れた存在ですが、「雪風」が吹く日だけは現実に舞い戻るのです。以降では、大切な君を残して旅立った青年が、君への想いを歌う物語を考えます!
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2. 風吹けば
また、この日が訪れました。今日は、彼が現世に戻ることができる特別な日。眩しい光で照り付ける太陽と、輝きを照り返す白銀の世界。そしてその世界に、一陣の風が吹き抜けるのがその合図でした。彼は、その体を魚に変化させ泳ぎ出しました。
彼を振り落としたことなど気にもかけず、一心不乱に前へ進み続ける現世。ただ彼も、雪風が吹く日だけは世界の流れに逆行し、現世に戻ることが出来ます。そんな彼が目指すのは、現世で一人生きる君の下。何より大切だった、最愛の君の下でした。
心ならずも君を残して旅立った彼は、この特別な日が来る度に、君の下へと還っていました。魚となって、時間の波を泳ぐ彼。現世の苦しみや悲しみから解き放たれた彼は、ただ自由に大海を泳ぎます。その胸に、君との日々をよみがえらせながら。
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3. 夢の中へ
君との想い出を胸に浮かべた彼は、温かな気分に包まれていました。君との日々を思い返すだけで、彼は君の存在を強く感じて、その心が満たされるのでした。そう、二人の想い出の力は絶大。だから離れ離れでも、君は決して一人ではないのです。
時の波を泳ぎ切り、現世へとたどり着いた彼は一目散に君の家まで飛んでいきました。静かな寝息を立てる君の目元は、微かに輝いていました。君は今日も、枕を濡らしたのでしょう。ただ彼は、自分が来たからにはもう大丈夫だと信じたいのでした。
今の彼に出来るのは、君の夢の中に自分の分身を浮かべることだけでした。君の夢の中の自分は、自分であって自分ではありません。ただそれでも彼は、この不完全な交流を続けることで、君が立ち直るための癒しを得ることを願っているのでした。
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4. 雪風
君を残して旅立つことは、彼にも強い心残りがありました。しかし、もはや詮無きこと。そして、今の彼の最大の望みは、君の幸せでした。だからこそ彼は、君にも悲しみの渦から顔を上げて、もう一度歩き出してほしいと強く願っているのでした。
そのために彼が作り出す「交流」は、君には偽りの時間かもしれません。ただそれでも彼は、君が夢の中で楽しい時間を過ごすことを、そして君が朝の光に身を起こすとき、君の顔に彼が愛して止まなかった笑顔の欠片が浮かぶことを望むのでした。
君が深い悲しみに包まれているとしても、それでも君は大丈夫。彼がそうしたように、君も想い出の温もりを心に灯せば、また歩き出すことが出来るはずです。さあ、間もなく夜が明けます。悲しみを受け止め、歩き出すとき。ほら、大丈夫だろう?
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さいごに
1番サビでの彼の問いかけは、彼の願望だと感じています。そして、全ての問いかけは、曲ラストの彼のセリフに繋がると感じます。君にとっても想い出の力は十分で、君は悲しみを乗り越え新たな日々を始めることが出来るという、彼の願望に。