「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回ご紹介する「涙がキラリ☆」は、スピッツの6thアルバム「ハチミツ」収録曲で、美しいメロディーと繊細な歌詞、壮大な雰囲気が魅力的。ミリオンに近い売上も達成した、スピッツの代表曲の一つです。
この記事では、そんな「涙がキラリ☆」の魅力を語りつつ、その歌詞の意味を考えます。二人が待つ星とは、どんな星なのでしょうか?
「涙がキラリ☆」とは
「涙がキラリ☆」は、1995年にスピッツがリリースした6thアルバム「ハチミツ」の収録曲です。音楽情報番組であるカウントダウンTVのオープニング曲にも採用されるなど、一般的な露出も多かった、スピッツでも指折りの人気曲の一つです。
曲名 | コメント | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | 涙がキラリ☆ | 壮大で幻想的 |
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「涙がキラリ☆」の印象
「涙がキラリ☆」のシングルの発売日が意図的に7月7日に調整されたこともあって、この曲は、七夕の幻想的な雰囲気と結びついたイメージを持っています。そんな「涙がキラリ☆」に私が感じている魅力を、以下の3点で語っていきます。
1. 演奏について
「涙がキラリ☆」の演奏には、大きなスケール感を感じて、ロックバンドが奏でるバラードという印象です。全体として重層的な演奏がバックボーンになっていますので、演奏時間は4分弱に過ぎませんが、このアルバムの中でも有数の存在感を感じています。
また、ロックバンドとしての演奏の背骨がある中で、スピッツらしいギターアルペジオなども魅力的です。このアルペジオには、「涙がキラリ☆」が七夕に関連付けられていることもあり、天の川を挟んだ儚い恋のような儚さを感じています。
これらのことから、「涙がキラリ☆」は、ロックバンドとしての重厚な演奏を基礎とする奥深い印象を前提としながら、繊細で美しいアルペジオなどから儚さを感じる曲でもあると言えます。スピッツの本格バラード、と言った感じですね。
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2. ボーカルについて
「涙がキラリ☆」のボーカルは、難易度が高い要素が詰め込まれています。男性であればまず歌い切れない音域が連発されますし、女性でも最後の高音は少し苦しいでしょう。そんな曲をサラリと歌い切ってしまう草野さんには、脱帽の一言です。
一般的にスピッツの高音曲と言えば「ロビンソン」という印象を持つ方も多いかと思いますが、「涙がキラリ☆」でも、ロビンソンに負けず劣らず高音域を連発します。さらに、裏声も含めた最高音に関して言えば、「涙がキラリ☆」の方が半音上です。
なお、Aメロ部分ではそれなりの低音が使用されるため、ラスサビの裏声も含めると殆ど3オクターブ近い音域を必要とします。ライブで積極的にこの曲を起用し、かつ余裕綽々で歌い切ることが出来るのは、本当に凄いことだと感じています。
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3. 歌詞について
「涙がキラリ☆」では、恋に悩める青年の弱気と強気という相反する心が、スピッツらしい繊細な歌詞回しで紡がれています。私は、そんな「涙がキラリ☆」の歌詞に対し、七夕との関連性を抜きにしても、文学的な美しさを感じています。
草野さんは、「涙がキラリ☆」の歌詞に「悶々とする青年像」を重ねているようですので、ピンクな解釈をするべきかもしれません。そうなると「涙がキラリ☆」の歌詞が扱うのは、青年のリビドー、清純な関係から一歩踏み込みたい青年の衝動でしょうか。
ただその前提で見ても、曲に悪い意味での低俗さはなく、むしろ儚さや美しさを感じる点において、スピッツ節の本領が発揮されていると言えるでしょう。そんな「涙がキラリ☆」は、よこしまさと純情が入り混じった恋の歌なのかもしれませんね。
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歌詞の世界を考える
ここからは、「涙がキラリ☆」の歌詞を追いながら、その歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察のテーマは、「あの星を待って」とします。そんな考察を補足するためのトピックとして、以下の4つを準備してみました!
曲解釈は私の想像であり、他人に押し付ける物ではありません。ただ、出来る限り想像の根拠が提示できるように、歌詞とリンクさせながら進めていきます。私の想像を楽しんでいただけると、嬉しく思います!
1. 考察の前提
今回の解釈では、七夕の物語を重ねてみます。つまり、曲中の二人は好きあっているものの、その恋の成就には障害があるということです。それを前提に、歌詞では迫りくる別れの定めを前にした、若い二人の最後の想い出作りが描かれているとします。
二人が別れなくてはならない理由には、彼らにはどうしようもない理由が関わっていると考えました。織姫と彦星が、恋に溺れたことを責められて引き離されたように、君と彼の恋を良しとしなかった君の両親が、二人を引き離したのかもしれません。
また、主人公については、弱気と強気が混在した心理を感じています。彼が持っている弱気については、1番のBメロ部分でズバリな描写があります。また、強気の部分については、スピッツの曲では珍しい一人称「俺」の存在が大きいですね。
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2. 夕暮れどきに
世界における彼は、コウモリ。彼は、世界の光の中を泳ぐ存在ではなく、世界が眠りにつく頃に動き出す存在なのです。闇夜を進むための彼なりの強さは持ちながらも、明るい世界を自信満々で渡っていくような真似は、彼にはできません。
そんなコウモリの彼は、世界を包み始めた闇に身を溶かし、出かけていきます。彼が目指す場所は、君の家。彼は、君を迎えに行く約束をしているのです。ただし、もし君の両親に二人の約束がバレたなら、君は外出を許可されないでしょう。
だからこそ彼は、隠密の計画を提案しています。彼には正面突破で君を連れ出すことなどできませんから、あくまで計画はバレないように、こっそりと行われなければならないのです。君の手引きなくして、彼には君を連れ出すことは出来ません。
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3. 恋とまぼろし
君の手引きもあって、君を連れ出すことに成功した彼。彼は、浴衣姿の君の手を引き、最後の想い出作りに出かけます。浴衣姿の君を見た彼は、君と過ごした多くの夏を思い起こしています。思い返せば、多くの日々を無邪気に過ごしてきたものです。
彼は最後の想い出に、二人で花火を見に行きます。かつては、花火に照らされた君の横顔を盗み見た彼の胸の鼓動も、花火の音と共にように高まっていったものでした。しかし、今の彼は、あの喜びと同時に、別れへの悲しみをも感じています。
幾つかの花火がガイコツのように見えたのは、彼の心の有り様のせいかもしれません。花火たちは、闇夜で多種多様な紋様を描き、そして消えて行きます。彼が君と過ごした思い出も、目の前の花火の想い出も、全ては幻のように消えゆくのです。
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4. 涙がキラリ☆
二人は、一緒に過ごす日々が、間もなく終わってしまう事を理解しています。彼の目にも、そして君の目にも澄んだ涙の粒が浮かび、夜空のガイコツたちの光を受けて輝いています。彼らの心にあるのは、離れざるを得ない相手への切ない感情です。
それまでは純すぎる交流をしてきた二人ですが、彼はもう一歩踏み込みたいという衝動を感じています。ただそれは、南風が彼の背中を強く押さない限り、彼には実現出来ないことです。せめてもと、彼は今の瞬間を脳裏に焼き付けようとしています。
引き離される二人は、まるで織姫と彦星。そんな二人が再会出来るとすれば、それは彼らにとっての夏の大三角が夜空に現れたとき。まだ見ぬその星の輝きに願いをかける二人の心は、確かに繋がっています。後は、その星が本当に現れるかどうかです。
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さいごに
「涙がキラリ☆」のピンク要素を絶妙に表現した歌詞には感銘を覚えていますが、それが主題の曲ではないと感じています。七夕の物語に幼い二人の純情すぎる恋というイメージを持っていることもあり、かなり若い二人の恋のイメージを重ねていますね☆