スピッツの曲

スピッツの「SUGINAMI MELODY」の感想。「ちっぽけ」を軸に、歌詞の意味も考察

「SUGINAMI MELODY」のイメージ
こんな記事

「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。

今回の「SUGINAMI MELODYは、スピッツの26thシングル「ハネモノ」のカップリング曲で、穏やかで優しく温かい一曲ですね。

以降では、そんな「SUGINAMI MELODY」の魅力を語りつつ、歌詞も考察。様々なことが起こる人生を旅する青年の物語を考えました!

「SUGINAMI MELODY」とは

「SUGINAMI MELODY」は美しく穏やかなバラード曲で、「色々衣」にも収録されました。そんな曲は、シングルのペアで壮大な雰囲気の「ハネモノ」の余韻、温かな日溜まりの中で微睡むような、母の温もりに包まれるような印象を感じる一曲です。

曲名曲調一般知名度お気に入り度
1SUGINAMI MELODY温かく穏やか
曲が持つオーラのイメージ

1. 演奏への印象

「SUGINAMI MELODY」の演奏は、優しく穏やかで温かい。その歌詞に引っ張られる部分もありますが、古き良き時代を振り返るような懐古の眼差しも感じます。さらに言えば、その眼差しにはどこか聖なる雰囲気、汚れなき雰囲気も感じていますね。

バイオリンに代表されるストリングス演奏など、全体的に柔らかい雰囲気がありますが、所々にアクセントも感じます。例えば、序盤の伴奏ギターや間奏のバンジョーの演奏は、広がりある演奏の中で鮮やかな輪郭を持って曲を彩っていますね。

また「SUGINAMI MELODY」は、そのボーカルが際立つ一曲でもあります。終始低音域を使う曲で、草野さんの心に沁みる深いハスキーボイスを楽しむことが出来ます。後年のバラード曲である「ランプ」でも感じたような、優しく深いボーカルですね。

曲に感じるぼんやりとした雰囲気のイメージ

2. 個人的な想い

「SUGINAMI MELODY」と言えば、「醒めないツアー」に行ったときのことを思い出します。ライブの開演前にインストアレンジされて流れていたのがこの曲でした。アレンジで雰囲気は違いましたが、ライブ開始を待つワクワク感は今でも思い出します。

また、演奏面でバンジョーが使われているのも強く惹かれる部分があります。何せ私は大学時代に、バンジョーをメイン楽器の一つとして使う「ブルーグラス」という音楽をかじっていたので、曲を聴くと大学時代の想い出も温かな形で蘇ってくるのです。

私の演奏経験では、バンジョーは高速で踊りまわってナンボのような感覚もありましたが、この「SUGINAMI MELODY」では穏やかさを付加するアクセント部隊として活躍しています。こういったバンジョーの使い方も、心に沁みるものですね。

バンジョーのイメージ

 

歌詞の世界を考える

ここからは、「SUGINAMI MELODY」の歌詞を追いながら、歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「ちっぽけな旅人」としました。また、そのテーマを補足するために、以下の4つのトピックを準備してみました!

解釈は私の感想に過ぎず、全くもって他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、私の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスまとめています

旅人のイメージ

1. 考察の前提

私は曲の歌詞に、謙虚な人間観を感じています。また、一見過激にも見える2番の歌詞は、彼が人生に対して決定的な支配力を持たないしさ示唆としました。そして、人が矮小だからこそ、一期一会の喜びと悲しみが生まれ、人生の旅路が彩られるのです。

なお、彼が想う「あの人」は、既に彼の前から姿を消したとします。ただ、その離別は旅人によくある一期一会の一部と考え、深堀りはしません。個人的には、演奏に感じる清廉な雰囲気から言って、その中心には悲しさより穏やかさを据えたいですね。

また、歌詞には色々な比喩を感じます。例えば、回る風車は止まることのない「時の流れ」を、メロディは彼の心に残る「想い出」を表しているといった具合です。以降では、大切な「あの人」を想いつつ、人生という旅路を往く青年の物語を考えます。

「あの人」という呼び方は、親し気と言うよりは他人行儀ですから、彼は「あの人」に一方的に憧れていたとします。また、この呼び方には彼が「あの人」に抱く敬慕の情も感じられます。また、「あの人」は正夢とも結びつくのですから、彼の理想そのものだとも言えるでしょう。
人生の新章を開くイメージ

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2. 旅人

人は誰しも時の流れに流されるもので、その流れに逆らうことは誰にも出来ません。そして人は、その生命が尽きるその日まで、それぞれの道を歩いていく旅人なのです。もちろん彼もまた、涙あり笑顔ありの自分の道を歩いている旅人の一人でした。

これまでの旅路で、彼は多くの出会いを重ねてきました。未知なる景色、経験、そして人との出会い。それらの中には、当時の彼を喜ばせたものもあれば、悲しませたものもありました。彼は、泣いて笑って心を揺らし、この旅路を進んできたのでした。

いつも笑っていられればそれが一番でしょうが、ちっぽけな彼にそんな芸当は出来ません。ただ、彼の旅路には谷があれば山もあるから大丈夫です。不思議なことに、涙を運ぶ何かがあった後には、何故だかいつも笑顔を運ぶ何かがやってくるのでした。

彼の旅には、彼の存在を越えた多くの力が関わっています。例えば、変わらぬ時の流れ、限りある生命の炎、そして気まぐれな運命。それらの力と比べれば、彼の力は微々たるものでした。そして、大いなる力は時に複雑に、時に単純に折り重なり、彼の泣き笑いの旅路を作るのです。
暗く明るい、泣き笑いの世界のイメージ

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3. あの人

これまでの旅路の中で、彼が特に心を動かしたのが「あの人」との出会い。引っ込み思案な彼は、ただ遠くから憧れるだけでしたが、誰にでも優しい彼女は彼の理想そのものでした。秘かにその名前を呟くだけで、彼は幸せな気持ちになったものでした。

そんな「あの人」は、既に彼の手の届かない所へと旅立っていきました。ただし、出会いと別れは、旅の本質でもあります。だからこそ彼は、別れを嘆くのではなく、「あの人」がいた柔らかな日々を大切に胸にしまって、歩みを進めているのでした。

そして、時には立ち止まって想い出を愛でるのも、旅人というもの。彼もまた、時々想い出に浸って優しい温もりに触れ、温かな夢を見るのでした。この街の喧騒とは無縁の、静謐な三日月が浮かぶ夜に。温かな日溜まりで安心しきって眠る猫のように。

過ぎ去った過去は、決して戻らない。ちっぽけな彼に、自身の旅路に横たわる大いなる摂理を捻じ曲げることは出来ません。ただ彼には、そもそもその摂理に抗うつもりもないのでした。彼は、過去を呼び戻してそこで生きたいのではなく、単純に過去を愛でたいだけなのですから。
彼が憧れた「あの人」のイメージ

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4. SUGINAMI MELODY

時は、風を受けて回る風車のように、一時も留まることなく流れていきます。そして、与えられた時間の風が吹く限り、彼の生命の風車も回り続けます。彼は、限りある生だからこそ味わえる一期一会に心を揺らして泣き、そして笑う旅人なのです。

「あの人」は既に想い出ですが、その名前は未だに彼の心で輝いています。これからの旅路で、あといくつこんな素敵な宝物を見つけられるでしょうか。一期一会の日々の中、こんな風に輝く何かを拾い集めるのが、彼の旅の大きな目的になるでしょう。

甘い夢から醒めた彼の目には、並木道が映っていました。この道の先では、きっと悲しくも嬉しい一期一会の連続が待っているはず。樹々の間から差す光に勇気づけられ、彼は歩き出します。泣いて笑って、ちっぽけで美しい生命を輝かせるために。

私にとっての「SUGINAMI MELODY」は、「あの人」の想い出を胸に、自分の人生という名の旅路を往く青年の物語。人生には良いことも悪いこともありますが、それこそが人生。大きな流れの前に翻弄されることもあれど、それぞれの生命は旅人として、それぞれの道を往くのです。
日が差す並木道のイメージ

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さいごに

曲で繰り返されるサビの歌詞は、清廉な雰囲気を生み出す美しいものだと感じます。ある意味では、文学的とも言えるかもしれません。様々な顔を持つスピッツですが、この「SUGINAMI MELODY」には、真面目で優しい顔を感じますね。

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