「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「俺のすべて」は、ロビンソンのカップリング曲として世に出た楽曲で、今やスピッツライブの定番となったロックチューンです。
この記事では、そんな「俺のすべて」の魅力を語りつつ、歌詞の意味も考察。本能の炎を燃やし、単純に生きる青年の物語を考えました!
「俺のすべて」とは
「俺のすべて」は、1995年に「ロビンソン」のカップリング曲として世に出た楽曲。また、1999年に発売されたスペシャルアルバム「花鳥風月」にも収録されています。タイトルにも滲み出ているように、強気なスピッツを感じるライブの定番曲ですね!
曲名 | コメント | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | 俺のすべて | スピッツロック |
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「俺のすべて」の印象
「俺のすべて」は、スピッツのライブに欠かせないロックチューン。ただし、CD版とライブ版で、その印象が大きく異なる曲です。以降では、ライブ版の「俺のすべて」を中心として、曲に感じている魅力を以下の三点から語っていきます!
1. 演奏について
「俺のすべて」は、ライブでの扱いもあってスピッツロックの中心曲という印象があります。発売当初は「ロビンソン」の影のような存在だったのでしょうが、今となってはどんな有名曲にも引けを取らない、独自の地位を確立したと言えるでしょうね。
CD版の演奏は、イントロのドラムの音などがややポップな響きを放っているのに対し、ライブ版の演奏はロック色が全開です。CD版よりもややテンポを速めて演奏されている印象があり、このテンポアップがライブでの高揚感を煽ってくれますね。
演奏面でのハイライトは、曲のアウトロに配置された歪んだギターソロでしょう。CD版はフェードアウトですが、ライブではもちろん最後まで演奏されます。音を引っ張ってから歯切れよく閉まるラストは、興奮の雄叫びを上げる最高のお膳立てですね!
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2. ボーカルについて
「俺のすべて」のボーカルに関しては、ライブ版がダントツに好みです。CD版のボーカルは、強さと言うよりは輝きが前面に出ていて少年的雰囲気を感じますが、ライブ版のボーカルは強く、太く、そして深い。よりカッコいいのは、ライブ版ですね。
こうしてみると、草野さんの声は長い活動期間を経て随分と変わったなとしみじみと感じますね。ただし、その変化は劣化ではなく、成長や成熟と形容するべきもの。草野さんのボーカルはその輝きを維持しながら、他の魅力を取り込んでいるのです。
ところで、「俺のすべて」はサビでの高音使用率は言わずもがな、Cメロ部分での高音連発もなかなかのもので、歌唱難易度は高め。しかし草野さんの声は、高音の天井などないかのように伸び上がるとともに、深く強い響きを持って観客を包むのです。
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3. 歌詞について
歌詞の個別考察は後段で行うとして、演奏、ボーカル、歌詞を含めた曲のイメージを見た場合、その中心に感じるのはこれ見よがしの「ロッカー魂の掲示」。例えば、歌詞で描かれるアバンチュールを追う刹那的な生き方は、ロッカー的だと感じますね。
また、タイトルや歌詞中で「俺」という一人称を用いている所にも、草野さんがこの曲に込めた意図を感じることが出来るでしょう。普段は「僕」が多いスピッツですが、攻める時は攻める。全体として、強気のスピッツを感じる歌詞になっていますね。
ところで、曲の歌詞を俯瞰してみた場合、「野生の肯定」という感じます。賢いつもりの人間も、本能の火は消せないのです。知性を持つ責任を思えば、開き直りを全肯定はしませんが、妙な思い上がりを避けるため人間を客観視することも大事ですね。
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歌詞の世界を考える
ここからは、「俺のすべて」の歌詞を追いながら、その歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「単純に、愚かになれ」としました。なお、そんなテーマを補足するトピックとして、以下の4つを準備してみました!
解釈は私の感想に過ぎず、全くもって他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、私の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスをまとめています!
1. 考察の前提
「俺のすべて」の歌詞には、「複雑」と「単純」の対立軸を感じています。2番のBメロにあるように、彼を囲む世界は無数の掟が複雑に組み合って構成されています。そして、1番のAメロにあるように、彼はそんな世界の中で疲れ果てていたのです。
彼の最終的な結論が、単純な野生の炎を燃やすことが「俺のすべて」という宣言なのですから、彼と対立していた掟の内容は、人間の在り方を複雑に規定するものだったはずです。それは例えば、一人前の掟、常識の掟、同調の掟などでしょうね。
また、彼が自分の前世を悪しざまに語るのも、本当の彼が世界の掟、即ち正義と対立するからでしょう。彼は、その現実を前に反抗心と誇りを込め、自分をペテン師だと称するのです。以降では、ライフイズシンプルを地で行く青年の物語を考えます!
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2. 疲労困憊
この世界は、どこもかしこも掟だらけ。賢い人間としての振舞いを事細かに規定する掟が、この世界には溢れているのです。賢い高等生物としてどうあるべきかを雄弁に説く掟が君臨するこの世界には、清く正しく美しい秩序が組み上がっているのでした。
そんな世界の中で、息苦しい思いをしている青年が一人。彼にとっての世界は、右も左も同じ景色に同じ人で、掟の正義に塗りつぶされた均質すぎる世界でした。ただ、圧倒的な力を持つ掟を前にして、彼はそんな本心を隠して生きていました。
もし彼が本心をあらわにしたならば、世界の掟は瞬く間に彼を取り囲み、彼の間違いを矯正しようとするに違いありません。掟を理解できないのは邪か。正しくなろうと掟を学ぼうとしては失敗する日々の中、彼は少しずつ追い詰められていました。
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3. バイバイ
座り込んだ彼は辺りを見回し、いつの間にか全く知らない場所へと来ていたことに気づきました。彼を包むのは美しい陽光、白い花々、そして河に波紋を立てる魚たち。世界の全てを縛っていると思っていた掟も、ここには届いていないようでした。
掟の教えを知らない間違った場所のはずなのに、この場所の全ては輝きを放っていました。そよ風に揺れる花々は美しく、降り注ぐ陽光を受けて跳ねる魚たちは楽し気です。この輝く世界は、掟が唱える正解とは別の真理を彼に伝えてくれる気がしました。
掟など、無視してしまえ。全ての重荷をここで捨て、裸一貫の自分となってこの場所の住人となれ。到底不可能に思えたことですが、今なら出来る。荷物を投げ捨てた彼は、久方ぶりに爽快な気分を味わいました。彼は今、掟と決別したのです。
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4. 俺のすべて
野生の心で、フラフラと。彼は、掟が激怒するような自由気ままな日々を送っていました。そんな彼の近頃のお気に入りは、偶然出会った女性との時間。彼は愚かにも、かつて手痛く傷ついた恋に入れ込み、名すら知らない彼女に全てを捧げていたのです。
彼は恋と言うべき熱さを持っていますが、彼女にはただの時間潰しかもしれませんし、手順を踏まずにただ互いに溺れるのは清く正しく美しいとは言えません。掟ならばこの恋を、吹けば飛ぶ幻に身を委ねるような、知性なき短絡的行動と評するでしょう。
掟からすれば、賢明さを捨てた彼の胸はペラペラで、彼の恋も邪な不良品。ただ彼にとっては、掟が顔をしかめる残飯が生きる糧なのです。掟に反する彼は今日も、野生動物のように石畳の上で眠ります。掟が否定する単純さが「俺のすべて」だと感じつつ。
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さいごに
「俺のすべて」は、ライブにてスピッツとファンを結び付けて一緒に盛り上がる曲という役割が大きすぎて、歌詞の物語の考察を行うのが少し野暮に感じるくらいです。ただいずれにせよ、ロック魂を炸裂させた曲だと言うことは間違いないでしょう!