「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「ときめきpart1」は、スピッツの17thアルバム「ひみつスタジオ」に収録された楽曲の一つです。スピッツの魅力の一つ、優しく温かな雰囲気が染み出るラブソングですね。
以降では、そんな「ときめきpart1」の魅力を語りつつ、歌詞の意味も考察。君と言う光に出会って変わり始めた青年の物語を考えます!
「ときめきpart1」とは
「ときめきpart1」は、スピッツの17thアルバム「ひみつスタジオ」に収録された楽曲で、2023年5月に公開された映画「水は海に向かって流れる」のために書き下ろされた楽曲です。恋の喜びと切なさを同時に感じる、甘い一曲ですね。
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | ときめきpart1 | 明るく切なく、嬉しく |
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1. 演奏への印象
「ひみつスタジオ」はロックな曲から変わった曲までバラエティに富んでいますが、「ときめきpart1」は優しいスピッツ担当ですかね。柔らかく温かく、そして切なくも嬉しく。色々な感情が溢れ出てくる、素晴らしい演奏になっていると思います。
演奏の雰囲気としては、「コメット」がちょっと思い出されるところがありました。外部作品とのタイアップと言うところが共通しているからかもしれません。ただ、聴いていて温かな気持ちになるところは、やっぱり共通点があるように思います。
また、草野さんの声が本当に素晴らしい。「かすれた声」という歌詞が出てきますけれど、草野さんの声も、中低音はザラザラしていて。それでいて、高音では明るい光が湧き出るよう。コーラスも美しく、優しいスピッツを感じられる一曲です。
2. 個人的な想い
この曲は「水は海に向かって流れる」という映画の主題歌だそう。私はこの映画の情報は何も知らないのですが、タイトルから想像するにテーマは「意志」なのではないかなと。水は様々な場所を流れ、やがては海というゴールへ行きつくと言う訳で。
このタイトルを「水は何もせずとも、自然の流れのままにやがて海に行きつく」と解釈することもできそうです。ただ、「流れる」という言葉選びには能動的な響きを感じる自分もいて。やはり、自ら進もうとする意志も大切にされていると感じています。
そう言うタイトルを持った映画だからこそ、「ときめきpart1」は能動的に変わっていこうとする主人公の姿を描いた歌詞になっているのではないでしょうか。私はラブソングが特別に好きというわけではないですが、素敵な歌詞だと思いました。
歌詞の世界を考える
ここからは、「ときめきpart1」の歌詞を追いながら、その歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「光に誘われて」としました。また、そのテーマを補足するため、以下の4つのトピックを準備しました!
解釈は私の直感に過ぎず、全くもって他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、私の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスをまとめています!
1. 考察の前提
先述したように、曲の歌詞には「能動的に変わろうとする主人公の姿」を感じています。もちろん恋愛も大切なテーマとして描かれているのは間違いないですが、私の中でより比重を置きたいのは「変化」であるため、そういった方向で解釈します。
曲に登場するのは主人公と君。歌詞を見るに、二人の関係はまだ決定的ではありません。冒頭の歌詞では、彼が君と会うたびに嬉しくも苦しくなると歌われていますね。ただ、二人は交流を持っているため、君も彼に一定の好意はあるのでしょう。
私が抱く君のイメージは、天真爛漫・無邪気な女性。2番のサビで描かれる楽しそうな雰囲気は、君が主導して作る雰囲気に違いありません。対する彼は、自分の殻に閉じこもってきた恋愛初心者。だからこそ、「ときめきpart1」なのですよね。
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2. 諦念のおわり
彼は長い間、諦念と共に生きてきました。ただ、諦めることは彼には極めて自然なことだったので、別にそれを特別不幸だと感じたこともありませんでした。幸せは選ばれた人のみが味わうもので、自分は選ばれていない。ただ、それだけのことだと。
その代わりに彼が注力していたのは、波風を立てないことでした。凡人にすぎない自分が目立とうとすれば、例えば身の程知らずにも幸せを望んだりしたら、世界からの叱責を受けるに違いない。だからこそ彼は、世界の中で身を潜めて生きてきたのです。
未来に何を望むでもなく、ただ毎日、波風を立てずにひっそり生きる。元々口数が多いタイプではなかった彼ですが、益々その傾向が強まっていました。何せ、口数が少なくて変な奴と思われることはあっても、嫌われることはないのですから。
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3. 心を開いて
彼は君と会って、薄暗い隠れ家から連れ出されるようになりました。彼は世間は打算に満ちていると思っていましたし、彼自身もそうやって生きてきました。しかし彼が出会った君は、いつも心の内を素直に見せてくれるような気がしました。
彼にとって、会話とは失点を防ぐべく慎重に、慎重に行うべきものでした。しかし、君が彼に投げかける言葉に、そんな計算された雰囲気は一切ありません。思ったことを、ただ素直に口に出す。そんな君の在り方は、彼には温かく感じられました。
染みついた偽装の癖は、そう簡単には落ちてくれません。自分の心の内を素直に晒すことは、彼には簡単なことではありません。しかし、自己防衛の膜越しの会話に価値はありません。君が投じる素直な言葉は、心を開いて受け止めるべきなのです。
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4. ときめきpart1
君と出会って、小さな隠れ家から彼は世界の中に引き戻されました。ちっぽけな自分が世界を渡るのは少し怖いです。君という光がいつ、自分の傍からいなくなるかも分からず不安です。ただ彼は、危険地帯に出てきた自分に悔いはありませんでした。
柄でもありませんが、今の彼は無邪気に笑う君に合わせてみたりもします。君と会った日の帰り道、得も言われぬ想いのまま、土手っぺりを転がったりもします。そんな時彼は、月明かりの下で、君との日々が続くことを願う有名なあの歌を歌うのでした。
もう、隠しようがありません。彼は生まれて初めてときめきを感じていました。おっかなびっくり開いていた白紙の未来帳も、今は期待と共に開くことができます。約束されたことなど何もない。それでも彼は、part1のときめきに沿って生きたいのでした。
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さいごに
スピッツにおける「泥」は、素朴さ・純朴さ、そして自然体を象徴するものだと思います。「ヤマブキ」の歌詞でも、そう思いました。そのため、私にとっての君は、ただ明るく無邪気なだけではなく、ホッとする温かい優しさをもった存在なのです。