ミックスボイスは一般的な音域では、「詰まらない声」です。
貴方が、喚声点付近の数音で「声の詰まり」を感じるのならば、発声上のバランスが崩れていると言えるでしょう。
今回の記事では、ミックスボイスの詰まりの原因となる要素を提示し、改善方法を考えていきます。
結論
ミックスボイスは、詰まってはいけない声です。以下の大前提を確認しましょう。
【ミックスボイスとは】
・裏声がベースとなり、その裏声を地声のような音色を持たせた声
裏声のメリットを十分に活かした声がミックスボイスのはずなのに、声が詰まってしまう場合は、発声のバランスが崩れているケースが多いでしょう。
「別記事:ミックスボイスの性質を整理」も、ぜひご覧ください!
声が詰まる原因を整理
基本的に、声が詰まってしまうのは喉絞めになるからです。従って、喉絞めを誘発する悪癖を見抜き、その改善策を考えていくのが基本的な方針となります。
原因その1:地声張り上げ
総評
一番深刻なケースは、地声の張り上げをしている場合です。裏声にリリース出来ている声ならば、ミックスボイスという定規の上にあるため、多少問題があっても軌道修正が可能です。
しかし、地声を張り上げている場合、ミックスボイスの習得を目指すという意味では、根本的に発声の仕方が間違っていると言わざるを得ません。このブログで何度も登場している、コーネリウス・リード氏の至言を振り返っておきましょう。
コーネリウス・リード著 「ベルカント唱法~その理論と実践~」p111より引用
「胸声の機能を無理なく出せる音域以上に高く押し上げるどんな試みも許されない」
「別記事:弱い裏声からミックスを作る」も、ぜひご覧ください!
改善策
とにかく、喚声点より上での裏声へのリリースを徹底することに尽きます。裏声のリリースを出来ないのは、技術的な要素よりも心理的なハードルが大きいこともあります。
裏声を鍛えても無駄と考えるなら、決してミックスボイスにたどり着くことは出来ません。地声を張り上げてしまう方は、次の様な意識改革を行うことをおススメします。
・裏声ベースの声を使う「声帯フォーム」の構築が最重要
・裏声を適切に育てれば、豊かな音色の声に成長させられる
・地声を持ち上げ、楽に当てられる位置を探す技術ではない
・突然できるようになる技術ではない
「別記事:裏声を鍛えることの重要性」も、ぜひご覧ください!
原因その2:息の量が多すぎる
総評
息の量を増やすことによって高音に到達しようというのは、地声張り上げの発声法であり、ミックスボイスの発声方法ではありません。
息の量を増やすと、それに釣られる形で、地声張り上げ時に使っていた喉周りの筋肉の活動を誘発し、結果として喉絞めによって声が詰まってしまいます。
改善策
高音になるにつれ、多少息の量が増えるのは仕方がありませんが、常に息の量は少なくしようという意識を持つことが重要です。
常に「軽やかさ」をイメージするのをおススメします。軽やかに声帯を使ったとしても、共鳴腔の使い方を工夫すれば、音色はある程度コントロール可能です。
息の先に声を乗せるイメージで歌うと、必要な息の量と声が100%結び付く感覚を得やすく、必要以上の息を使いにくくなります。
原因その3:苦手な母音がある
総評
ミックス中級者を苦しめる大きな壁が、母音処理です。ミックスボイスは、繊細な声帯コントロールを前提とするため、母音によって出しやすさが変わるのは仕方がありません。特に、広い母音である「あ」は苦手な方が多いのではないでしょうか。
改善策
私が参考にしていたテクニック「Speech Level Singing」では、母音処理として純粋な母音を使わず、母音を狭めるというテクニックがあります。
意識すべきは、母音が広がりすぎないいうことです。広がった母音は、ハリラリ(喉仏上昇)や息の吹き上げ、喉絞めを誘発する声詰まりの友です。特に、「あ」の母音を発生するときは注意が必要です。
例えば、「あ」の母音。出し方は人それぞれでしょうが、私の場合は「お」のイメージを持ちながら「あ」を出す感じです。
また、唇を少し丸めながら口の前で「あ」を浮かせるイメージもおススメです。
さいごに
詰まらない声を目指すためには、喉絞めを防ぐことが何より重要です。今日の記事で重要となるポイントを、以下にまとめておきました。
・ミックスは本来詰まらない、伸びやかな声
・声が詰まるのは「喉絞め」が根本的原因
・地声張り上げ、息の量、母音などに注意しよう
ミックスボイスは、歌を「つまらないもの」などと決して思わせない「詰まらない声」です。一緒に、練習を頑張っていきましょう!