「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「YM71D」は、スピッツの16thアルバム「見っけ」の収録曲。タイトルは、サビの歌詞通り「やめないで」と読むのでしょう。
この記事では、そんな「YM71D」の魅力を語りつつ、歌詞も考察。君と出会って、掟の教えから離れていく青年の物語を考えました!
「YM71D」とは
「YM71D」は、スピッツが2019年に発売した16thアルバム「見っけ」の収録曲です。前曲の「快速」は星空の魔法と高揚感を感じる銀河鉄道な一曲でしたが、「YM71D」は軽やかでオシャレな雰囲気を纏った、アルバムの空気を変える一曲です。
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | YM71D | オシャレ |
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1. 演奏への印象
「YM71D」の雰囲気は、とにかく軽やかでおしゃれ。過去曲では「夏が終わる」の雰囲気と通じるものがあるでしょうか。アルバムの中でも唯一無二の雰囲気を放って全体の雰囲気を整えていて、まさにAOR的楽曲の面目躍如と言った働きをしています。
演奏の中で特に目立つのは、軽やかなエレキギターの音色ですね。特に、明るく歯切れの良いカッティングが曲が持つ明るさとオシャレさを生み出していると言えるでしょう。また、ポワーンとしたキーボード音も、要所で良い味を出していますね。
また、ボーカルも軽やかな感じですね。スピッツの持ち味の一つである力感のない高音域と、サビ終わりの漂うような裏声コーラスも、曲の雰囲気にマッチしています。そんな「YM71D」は、スピッツにはやや珍しい雰囲気の一曲だと感じています。
2. 個人的な想い
実は「YM71D」は、アルバムを買った当初は微妙に感じた曲でした。私が聴きたいスピッツのイメージと、この曲の雰囲気がだいぶ異なるように感じたからです。ただ時を経た今は、一番のお気に入りとは言わずとも、結構好んで聴くようになりました。
また、今となっては「YM71D」に微妙な印象を持ったのには、曲の歌唱難易度の高さも関係していたと思います。この曲は、サビで喚声点付近をウロチョロして歌いにくいのですね。アルバムが発売された当時、歌う度に失敗してイラついたものです。
ただ最近は、ある程度は歌えるようになってきたので、曲イメージも回復したのでしょう。つまるところ、私は「YM71D」に私怨を抱いていました(笑)。全てがクリアされた今となっては、アルバムの雰囲気を整えるオシャレな良曲だと思います!
歌詞の世界を考える
ここからは、「YM71D」の歌詞を追いながら、その歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「本心のバネで」としました。また、その考察テーマを補足するため、以下の4つのトピックを準備してみました!
解釈は私の感想の言語化であり、他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、独自の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスをまとめています!
1. 考察の前提
私にとっての「YM71D」は、大切な存在と一緒に自分らしく生きようとする青年の物語。つまり、私の解釈の中心にあるのは、「恋愛」ではなく「挑戦」ですね。スピッツから独自の道を往く勇気を貰っている私には、お決まりのテーマと言えます(笑)
また、歌詞中の街の描写は、社会そのものの描写でしょう。その社会は、刺激に溢れた場所だと描かれていますが、その刺激の源となる競争を促すのが社会の掟としました。言い換えるならば、勝ち組認定の喜びを餌に人々を煽る、弱肉強食の掟です。
ところで、そんな社会の中で生きる主人公の本心を示すのが、王様に関する歌詞だと感じています。そこでは、勝ち組とされてふんぞり返っている誰かは、彼には裸の王様も同然とされています。つまり彼は、掟が崇める喜びに共感出来ないのでしょうね。
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2. 掟と本心
社会は、刺激に溢れた場所。そして、全てを統治する掟がその中心にありました。掟の基本論理は、弱肉強食。社会を構成する人は皆、富や名誉という栄光を目指す戦いの舞台に立ち、権謀術数を駆使して勝ち組を目指すことが正しいとされるのでした。
ただ彼は、掟が示すその正義に、イマイチ共感出来ないでいました。ただし、やや弱気なところがある彼には、掟の論理をはねのけることも出来ないのでした。自分らしくありたいが、勇気がない。彼は長い間、そんな葛藤の中で生きてきました。
そして彼は、弱気を振り払えないのは自分が独りだからだと思っていました。そう、誰かが自分の傍にいてくれれば、彼も変わっていけるはずです。ただし、彼が傍にいて欲しいのは、世界観が同じ誰かだけ。彼を真に理解してくれる誰かだけでした。
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3. 脱出の時
ただそんな彼に突然、転機が訪れました。彼は、君と出会ったのです。初めのうちは、掟に従順な仮面をつけていた君ですが、それでも何故か彼の心を惹きつけました。そして、関係を深めるにつれ、彼は君が求めていた誰かだと確信したのでした。
そう君もまた、社会の掟に対して一言を持っていたのです。きっと、彼女が付けていた掟の仮面も君の本心を覆い隠すことは出来ず、それが彼の心を惹きつけたのです。そんな君の本心を知ってからというもの、彼は君への想いを一層強めていきました。
反逆者の二人はきっと、出会ってはいけない二人。初めこそ、掟の目につかぬように頭を低くしていた彼ですが、徐々に積年の願いを抑えきれなくなってきました。一人では無理でも、二人なら。彼はついに、掟からの逃走を決意したのでした。
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4. YM71D
彼は、正しい喧騒に満ちた街を駆け、跳躍台へと辿り着きました。もちろん、君と一緒に。掟の外の世界を眺める彼の胸には、味わったことのない感動が広がっていました。掟が崇める競争の果てにある喜びよりも、ずっと彼の心を満たす喜びが。
行動するのが遅かった気もしますが、それでも待ち望んだ脱出の時は、もうすぐそこです。二人の逃走劇は、まだ序章も序章。今の喜びもきっと幻のようなもので、もっと強く輝くはず。初めての跳躍に怯む気持ちもありますが、二人ならば大丈夫。
だから、まだ見ぬ喜びへの憧れを言葉にして胸に抱き、思い切って飛び出すのです。そうすれば、思わぬ幸運も彼らを助けてくれるはず。だから、「YM71D」。心を繋いだ二人が手を繋いで飛び出せば、きっと輝かしい未来が待っているはずです!
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さいごに
歌詞中の「平穏と街」に関する描写は、掟の基本姿勢と考えました。つまり、平穏を否定する掟は競争を好む、と。競争は掟の所有物たる街の成長の養分となるため、掟は街に競争を呼びたいのです。それが、支配と被支配を生み出すとしても。