「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回ご紹介する「猫になりたい」は、スピッツのポップなラブバラードとして、絶大な人気を誇る曲。つじあやのさんをはじめ、多くのアーティストによってカバーされている曲でもあります。
穏やかな雰囲気から、かわいい系のスピッツソングと思わせておきながら、実は捻くれた要素も含み、まさに猫の様に様々な顔を持つ曲。そんな「猫になりたい」の魅力を語ります!
「猫になりたい」とは
「猫になりたい」は、スピッツの人気曲「青い車」のカップリングとして世に出て、その後アルバム「花鳥風月」に収録されました。ちなみに、カップリングというのは、メインの曲に合わせて収録されたペアの曲のことです。
曲調は、ポップで可愛らしいラブバラードという感じでしょうか。優しいエレキギターの音色と、草野さんの可愛らしい高音が特に印象的な名曲の個人的評価は、星5つ。スピッツの魅力がたくさん詰まった、初期の名曲ですね!
曲名 | コメント | お気に入り度 | |
1 | 猫になりたい | とげまる |
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「猫になりたい」の印象
まどろんだ猫のようなまったりした雰囲気が漂う「猫になりたい」。ただし、それだけではありません。「綺麗な花には棘がある」ならぬ、「かわいい猫には爪がある」といった印象の本曲の魅力を、以下の3点から語ってみます。
1. 演奏について
「猫になりたい」の演奏から感じる雰囲気を具体化するなら、温かく快適な部屋と、くつろいでいる猫。まったりした雰囲気とも言えるでしょうね。曲全体から感じる色合いは、クリーム色。まろやかな温かみを感じる曲だと感じます。
そんな世界観を生み出しているものの一つとして、エレキギターの存在があります。幻想的な広がりを感じるギターソロが素晴らしいのはもちろん、さらに曲の背後でなり続けるアルペジオも、曲が持つ優しい雰囲気を作り出しています。
さらに、ベースプレイがもたらす安心感も素晴らしいですね。特に、ギターソロと優しくじゃれ合うような演奏がお気に入りです。陽だまりでうつらうつらするような、このベースラインに体を預けて眠ることが出来るような穏やかさがお気に入りです。
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2. ボーカルについて
この曲はスピッツ初期の楽曲ですから、草野さんのボーカルも若々しいです。まさに、スウィートボイスというところでしょうか。このころのスピッツはかなりアイドル色もあったようですから、この声にメロメロだった方も多かったでしょう。
CD版のボーカルから想起されるイメージは、自分の可愛さを知っている若い猫。その猫は、気まぐれに悪戯をするので、周りは振り回されてしまうのですが、その圧倒的な可愛さにメロメロになってしまい、まあいいかと許してしまうのです。
一方、最近のライブのボーカル版だと、陽だまりの中で丸くなり、うつらうつらしている猫のイメージが浮かびます。飼い主の呼びかけの声にちょっと適当に尻尾で応えながら、穏やかな表情でマイペースに眠り続ける猫。そんな感じですね。
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3. 歌詞について
この曲の歌詞を見て浮かんできた最初の印象は、美しいワーディング、言葉選びが選択されているという印象でした。幻想的な雰囲気がある一方、ファンタジーの世界という訳でもない。そのあたりのバランスが、素晴らしいですね。
真っ正直に歌詞を読み解くならば、恋人に甘えたい男性心理を歌った曲だと言えるでしょう。ただし、その愛情表現は必ずしも純情一辺倒ではなく、ちょっと捻くれていそうです。サビの最後を締める歌詞は、まさにその象徴と言えるでしょう。
2番のサビ直前では、偽物の安らぎと決別する様子が歌われています。彼にとっての偽物の安らぎが何を指すかは分かりませんが、本物の安らぎが何なのかは断言できます。それが何なのか、わざわざ文字にするのは野暮な物ですよね。
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歌詞の世界を妄想する
ここからは、「猫になりたい」の歌詞を実際に追いながら、この曲で展開されるストーリーを、より具体的な形で妄想していきます。今回もなかなかハードな妄想になっていますが、特に以下の4つのトピックを考えてみました。
1. 登場人物とその関係は?
登場するのは、主人公と君の二人ですね。いつも通り、主人公が男性、君が女性として考えてみましょう。二人の関係については、付き合いたての恋人関係であると考えています。二人の関係を考察する際に、注目したいのは冒頭の歌詞です。
そこでは明かりを消した状態で話をする二人の姿が描かれています。このことから、二人はそれなりに親密な関係にあると考えました。このシーンでは、二人が一線を越えるかは別にして、一つ屋根の下で休んでいるという解釈も成り立つはずです。
二人がいるのは君のアパート。暗い部屋に少しだけ距離を取って布団を並べ、横になる二人。曇りガラス越しに部屋に差し込むのは、近くの霊園の明かり。君とポツポツと話をしているうちに夜は更け、霊園の「星」の光も一つ、また一つと消えていきます。
この状況を、ピロートークのシーンと捉えることもできるでしょうが、私の考えでは二人はあくまでプラトニックな関係です。その根拠は、サビへの考察にありますが、詳しくは後段で扱うことにします。
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2. 「砂埃の街」の様子は?
この曲に登場する「街」、すなわち主人公が生活を送る街は、季節を嫌っていると描写されています。季節は、自然の象徴であるとともに変化の象徴だと感じますので、街はそのいずれをも受け入れない場所であると考えました。
街は、自然物ではなく人工物で溢れていますし、街そのものと、そこで活動する人間は、どちらも変化を好みません。街は、利便性を保つための仕組みを作り、季節を屈服させようとしますし、人は自分の身を守るために変化を遠ざけようとします。
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3. 彼にとっての「癒し」とは?
彼は、こんな街で、空回りをしながら必死に生きています。また、砂埃にまみれてしまうとの表現からは、彼が街での生活に快適さを感じていないことが感じられます。しかし、彼は大丈夫です。それは、彼にはとっておきの逃げ場所があるからです。
言うまでもなく、それは君の存在です。彼にとって君の名を心に呼び起こすことは、無機質な街の中でも感じられる自分だけのオアシス。心が折れてしまいそうでも、そこに逃げ込みさえすれば、彼は自分を癒す温かい幻に包まれるのでしょう。
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4. 猫になりたいのは、何故?
簡潔に言えば、猫になれば彼の望みが実現するからです。その望みとは、彼女の腕に包まれて、愛されること。甘い声で名を呼ばれ、撫でられ、その柔らかい腕の中で眠ること。猫になれば、これらの全てが叶うからこそ、彼は猫になりたいのです。
また、逆説的に考えると、主人公は、君からこれらを受けたことがないことを示しているでしょう。彼女から受ける愛情表現という点では、主人公は猫に及ばないのです。この事から私は、主人公と君がプラトニックな関係だと仮定したのです。
猫は、主人公が願ってやまないことを易々と実現するばかりか、彼女自身からの積極的な愛情をもその身に受けるのが、猫なのです。そうであるからこそ、彼にとっての猫は、これ以上ないほどに羨ましい存在なのです。
一晩を過ごすことになった君の家で、彼女と猫の交流を目の当たりにした彼は、その愛情の深さを実感するとともに、彼女の腕に呼び込まれる猫の姿を見たことでしょう。そのとき、彼は猫になりたいと思ったに違いありません。
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さいごに
「猫になりたい」は、スピッツ至高のラブバラードであり、歌詞も様々な解釈が出来るスピッツの独特な世界観を楽しむことが出来る名曲です。私としては、優しめの解釈をしたいと感じますが、ちょっとダークな妄想もできるでしょうね。