スピッツの曲

スピッツの「春の歌」の魅力を語る。「ただひたすら」を軸に、歌詞も考察

春の歌のイメージ
こんな記事

「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。

今回ご紹介する「春の歌」は、スピッツの通算11作目のアルバム「スーベニア」に収録されている楽曲で、シングルカットもされています。藤原さくらさんがカバーしたことでも、話題になりました。

この記事では、そんな「春の歌」の魅力を語りつつ、歌詞の意味も考察します。「ただひたすら」に注目して、歌詞の物語を考えました!

「春の歌」とは

「春の歌」は、スピッツが2005年に発売した11thアルバム「スーベニア」の先頭を飾る曲。Youtubeでの再生回数が3千万回を超えている、知名度も抜群の一曲。スピッツらしさが詰まった楽曲は、もちろん私の大のお気に入り曲の一つです!

曲名コメント一般知名度お気に入り度
1春の歌スピッツロック
春の歌のイメージ

 

「春の歌」の印象

「春の歌」は、演奏、ボーカル、歌詞のいずれをとってもスピッツらしさが詰まった傑作曲の一つで、複数のテレビCMでも使用されるなど、知名度も抜群の一曲。以降では、そんな大人気曲「春の歌」の魅力を、以下の3点から語っていきます!!

1. 演奏について

「春の歌」の演奏には、重厚さと爽やかさを強く感じています。ロックバンドスピッツの魅力が詰まった、深みある前向きなエネルギーを放つ演奏には、自然が持つ人知を超えた奥深い力と、春の空気に充満する希望の香りを感じずにはいられません。

まさに、この重厚さと爽やかさを両立するところに、「春の歌」の最大の魅力があります。どちらかだけでは傑作たりえないということではありませんが、「春」という季節を描く曲であると言い切った以上、この曲にはその両方が必要不可欠です。

具体的な演奏面では、低音を轟かせるベースから自然の重厚さを、カッティング音を鳴らすアコギからは若葉の息吹を。また、アルペジオは切なさと優しさを、ドラムは生命の鼓動を感じています。「春の歌」には、深みある希望の世界が広がっています。

「春の歌」のPVは、ライブの後に続けて撮影されたものであり、その撮影場所は、私もスピッツのライブを2度楽しんだ「名古屋センチュリーホール」とのこと。もちろん、PVの収録音声は別撮りでしょうが、会場でもCD音源と同じ、いや、それ以上の演奏が披露されたことでしょう!
春の歌の温かな雰囲気のイメージ

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2. ボーカルについて

「春の歌」のボーカルは、草野さんの深みのあるボーカルを堪能できるものです。デビュー当初の鋭く明るい声も好きですが、円熟味を増したこのボーカルも素晴らしい。春と言う季節が持つ深みを感じさせる、魅力的なボーカルだと言えるでしょう。

また、「春の歌」ではかなり広い音域を使用しますから、草野さんの深みのある中低音と、草野さんの代名詞でもある輝きを持った高音域を楽しむことが出来ます。中でも、サビ直前の高音ロングトーンは力強く輝く、ボーカルハイライトの一つです。

また、他の曲に比べると音量は控えめな気がしますが、サビのコーラスワークも無視できないポイントの一つですね。サビを美しく彩るとともに、立体感と深みを与えるものになっています。このコーラスなしに、サビの魅力を語ることは出来ません!

また、Cメロ部分のボーカルも大好きです。春に至るまでの紆余曲折を思わせるように控えめになった演奏の中で、エコーが少し強まった印象のボーカルが優しく切なく響き渡り、涙を誘います。その後に続く、主人公の決意を思わせる力強く輝く高音ロングトーンも、感涙ものですね!
ボーカルのイメージを表すマイク

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3. 歌詞について

草野さんは、「スーベニア」では分かりやすい作詞を心がけたと語っておられたようですが、この「春の歌」の歌詞も状況描写が鮮やか。歌詞からは、苦労しながら歩みを進める主人公や、大切な人を想って空を見上げる主人公がありありと浮かびます。

抽象的な世界ではなく、現実・具体の世界を描きたいと言うコンセプトは、Cメロの歌詞にも表れているでしょうか。力強い決意を感じるCメロの歌詞は、作詞者たる草野さん自身の現実に寄り添おうとする姿勢を宣言しているようにも感じられるのです。

ところで、「春」という季節は一見華やかな季節ですが、そこに至る過程の中には、寒さの中で力尽きた多くの生命や、極寒に耐える経験などもあるはず。「春の歌」の歌詞は、そんな多面的な春の要素、切なさと優しさを含んだものだと言えるでしょう。

「春の歌」の歌詞には、凍えた冬の季節を越え、ついに春を迎えたフキノトウのような純情と忍耐、そして気高い決意を感じます。サビに入る直前の命令形の歌詞、サビでの力強い呼びかけ。その胸に悲しみを抱きながらも、キッと前を見据えて進もうとする主人公が浮かんできます。

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歌詞の世界を考える

ここからは、「春の歌」の歌詞を追いながら、その歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「ただひたすらに」としました。なお、そんなテーマを補足するためのトピックとして、以下の4つを準備してみました!

曲解釈は私の想像であり、他人に押し付ける物ではありません。ただ、出来る限り想像の根拠が提示できるように、歌詞とリンクさせながら進めていきます。私の想像を楽しんでいただけると、嬉しく思います!

彼が歩く道のイメージ

 

1. 考察の前提

「春の歌」という曲に感じる中心的な要素は、やはり「希望」になるでしょう。長く厳しい冬を越えて、命の香りが広がる季節こそが春。「春の歌」は、その季節が持つ雰囲気を見事に再現した曲なのですから、「希望」を感じないはずがありません。

より具体的に歌詞を見ていくと、そこでは険しい道を一人で歩く主人公の姿が描かれています。彼は文字通り野を越え山を越え、旅を続けているのです。そして、「春の歌」で描かれる旅の風景はそのまま、彼の人生、生命の旅を表しているでしょう。

彼は、辛い旅に心が折れそうになりながらも、前へと進み続けます。彼がなんとか心を支えることが出来るのは、彼の心の中に大切な存在、君がいるからです。以降では、仮初の安寧に逃げ込まず、辛くとも挑戦の道を歩む主人公の物語を考えます!

彼は、逞しい偉丈夫ではなく、ちっぽけで非力な存在。事実、歌詞での彼は、「猿」と形容されています。ただ、スピッツの歌詞での「猿」は、賞賛の言葉。お高く留まった人間ではなく、ただ全力でぶつかる原始的な動物であれ。スピッツでの「猿」は、肯定的な生き物なのです!
彼の旅のイメージ

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2. 荒れゆく心

彼は今日も、この道を歩いています。彼の足取りは重く、彼が歩む道も茶色く染まった道。長く続いた雨でぬかるんだ地面は、先へ進もうとする彼の足を取り、その足に重りを付けていきます。片や、行く手にも藪が生い茂り、彼の視界を遮っています。

彼はここまで、旅路に横たわる全てに正面からぶつかり、何とか乗り越えてきました。悪路で汚れた靴と、傷だらけになった体。打ち付ける強い雨と、凍えるような寒さ。今や満身創痍となった彼ですが、これまでの全ての経験に意味があったはずです。

辛い経験にも必ず意味があると、彼は信じていたのです。だからこそ、どんなことがあっても、怒りや悲しみをぐっと飲み込んで、微笑みを浮かべてくることが出来ました。しかし、彼の仮面も今やヒビ入り。彼の心には、限界に近づいていました。

風雨に晒されて荒れ始めた彼の心は、彼に囁きます。もう、こんな旅を止めてしまえと。こんな価値のない旅で苦労をしょい込むのは、馬鹿げていると。旅など止めて、それなりの日々を送ればいいではないかと。澄んでいたはずの彼の心も、今や疲労の色を隠せなくなっていました。
険しい道を進んだ彼の靴のイメージ

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3. 朝日の世界

行けども行けども、闇が続くばかり。必死に歩いてきた彼ですが、もはやここが限界点。しかし、心が折れそうになったまさにそのとき、闇の向こうに微かな光が見えたのです。ああ彼は、ついにこの苦難の旅の終着点に達したのでしょうか。

長く続いた闇の道から、光の中に飛び出した彼。眩しさに目を瞑った後で、薄く開いた彼の瞳に飛び込んできたのは、息を呑むほど美しく、気高い景色でした。その美しい景色は、大きな感動に姿を変え、彼の荒れた心と体に染み入っていきます。

美しい朝日に包まれた彼は、自分の現在地を思い知りました。これまで旅を続けた彼は、既に世界の多くを見たと思い上がっていました。しかし、目の前の景色の全てが、彼には新鮮に映ります。彼にはまだまだ、知らないことが沢山あったのです。

朝日の世界に、言葉を忘れるほど圧倒された彼。全身を巡る感動は、身を削った苦難の記憶を溶かしていきました。険しく暗い道を抜けた彼を待っていたのは、新たな出会いに身を震わす感動。そして、彼がこの感動を味わうことが出来たのは、心の光、君への想いのおかげでした。
彼が目にした美しい景色のイメージ

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4. 春の歌

彼の全身を駆け巡った感動は、彼の全てを優しく潤しました。この感動は、寒く厳しい冬を越えた大地に溶け出した雪解け水のように清らかなもの。心を潤した今の彼には、耳に入ってくる小鳥たちの囀りも、喜びの調べのように聴こえてきました。

世界に響くその美しい旋律は、彼にとって生きる意味を教えてくれる歌、生命の息吹を感じる「春の歌」。この感動を味わうために、人は苦難の道を進むべきなのでしょう。ああ、輝きを弱めていた君への想いも、今や完全な輝きを取り戻しています。

彼の旅は、まだまだ序章。これからもきっと、苦難の悪路が待っているはず。しかし、その先にはまた、今日この日と同じ感動が待っているはずです。彼は今日も、愚かでちっぽけな存在のまま歩きます。「春の歌」が昇る空に、君への想いを浮かべながら。

私にとっての「春の歌」は、君への想いを抱いた彼が、辛く険しい道を進み、その先で見た世界に、挑戦の日々の意味を悟った成長の物語。心の中の幻想に逃げ込むのではなく、辛くとも現実を切り拓く。未熟で愚かな猿として、彼は今日も泣き、笑い、そして成長していくのです。
彼が眺める空とこれからの旅路のイメージ

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さいごに

私にとっての「春の歌」は、人生応援歌。スピッツの楽曲は、生きる勇気をくれる曲で溢れていますが、その中でも特別な一角を占める一曲です。「けもの道」が陽のパワーで圧倒するなら、「春の歌」は、心を潤す雪解け水と言った感じですね!

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