裏声なくして、ミックスなし。ミックスボイスと裏声は、音色こそ大きく違えど、実は似たような発声です。
少なくとも私の理想であるスピッツの草野さんの様な発声は、裏声ベースの声の開発を続ければ、ある程度再現可能です。
この記事では、裏声とミックスの特徴を整理したうえで、裏声をミックスに成長させる方法や大切な考え方などを、述べていきます。
結論
ミックスボイスは、裏声の発声感覚と声帯状態をベースとしながら、そこに地声感を与えてくれる筋肉の働きを加えることで出す声です。
この意味で裏声の「声帯フォーム」に対して、地声感を与える筋肉が参加すればミックス、しないならば普通の裏声になります。
ミックスと裏声
ミックスボイスと裏声は、その音色は大きく異なりますが、発声方法は似通っています。また、その音色の違いは、主に「声帯フォーム」の違いから生じます。
「ミックスボイスの声帯フォーム」もぜひご覧ください!
裏声の価値は、軽視されがちですが、ミックスを習得するためには裏声を知り、裏声と向き合う必要があります。以下で、二つの声の違いを簡単に述べます。
「裏声」という声
裏声を簡単に言うと、次の通りです。ミックスに取り入れたい要素は①で、このメリットを維持しながら、②を克服していくことが必要です。
【 音色から見た裏声 】
- 喚声点~ある程度の高音をラクラク出せる(プラス要素)
- 声に力が無く、特に中音域は弱弱しくなる(マイナス要素)
裏声に声に力が無いのは、「声帯フォーム」に閉鎖筋の働きが不足しているからです。これが、裏声とミックスの最大の違いです。
「ミックス」という声
ミックスボイスは裏声の自由さと地声っぽい音色をブレンドした声です。そして、その声は裏声を強化した先に現れる声で、次のような特徴を持ちます。
- 喚声点~ある程度の高音をラクラク出せる
- 中音域を含んだ全域で声にツヤと輝きがある
その音色こそ虚脱した裏声とは大きく異なりますが、ミックスボイスの屋台骨を支えているのは裏声です。ここを理解してください。
ミックスを得るために
ミックスボイスは魔法の様な声に思われますが、その開発手順は地味なものです。コツコツと裏声を育ててあげれば、だんだんと声に輝きが宿り始めます。
詳しくは、以下の別記事で詳細を解説していますが、この記事でもミックス習得の概略についてはお話しておきましょう。
「裏声をミックスへ進化させよう」もぜひご覧ください!
弱いミックスへ
弱弱しい裏声も、訓練次第でミックスボイスに繋げられます。「声帯フォーム」の基礎トレーニングで、基本的な閉鎖筋の目覚めを促しましょう。
裏声ベースの訓練は、時間こそかかりますが安全です。天才的な才能も必要ありません。ただ、練習を継続できればそれで十分です。
充実したミックスへ
弱いミックスに健全な存在感を与える方法があります。大切なのは「声帯交錯筋」の活性化です。ベルカントでも、以下の様な指摘がなされています。
【 フレデリック・フースラー著「うたうこと」P33より抜粋 】
よい流派ではすべて、それぞれ独自の方法で、この帯域の神経支配をよくすることに、絶えず大きな苦心を重ねてきた
この筋肉が目覚めているかどうかで、裏声限界論を突破できるかが決まると言えるでしょう。裏声を鍛え続けることが、自由な発声のキーです。
さいごに
ミックスボイスと裏声の声帯フォームは異なりますが、基礎となる部分は同一です。両者の違いは、地声っぽさを作る筋肉が関与しているかどうか、です。
ミックスの自由で伸びやかな発声は、裏声由来です。裏声を軽視する場合、決して自由なミックスを手に入れることは出来ないでしょう。