スピッツの曲

スピッツ「ヘビーメロウ」の魅力を語る。歌詞の意味も独自解釈

the image of the song called heavy mellow
こんな記事

「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。

今回ご紹介する「ヘビーメロウ」は、2017年4月からの1年間、「めざましテレビ」のオープに使われていたスピッツの楽曲で、朝の始まりに相応しい明るくウキウキ要素を感じる楽曲になっています。

とは言え、意味深な歌詞とちょっぴりのネガ要素も含んでいるところはスピッツらしいです。今回の記事では、この曲へ抱く印象を語りつつ、歌詞を読み解きながらその世界観へと迫ります。

「ヘビーメロウ」とは

「ヘビーメロウ」は、2017年の「めざましテレビ」のテーマソング。この曲を寄せるにあたっての草野さんのコメントを要約すると、「朝の始まりを意識してリズムの良い曲を作った」とのこと。また、「歌詞は捻っている」ということも語っています。

言ってみれば、表層から感じる音楽は明るいけれど、その中身を覗いてみると、晴れ時々曇り空だったりする。スピッツのファンからすると、いつものスピッツ節を楽しめる曲だと言えますね。そんな「ヘビーメロウ」の個人的な評価は、星4.5です。

曲名コメントお気に入り度
1ヘビーメロウスピッツポップ

 

image of cities with clouds

 

「ヘビーメロウ」の印象

私はこの曲が発売された当時、ハードな仕事に追われながらも、この「新曲」を聴いて日々を凌いでいました。この曲を聴くと、当時いた場所、当時の心境が、はっきりと思い出せます。そんな「ヘビーメロウ」の魅力を、以下の3点から語ります

1. 演奏について

まずは、曲をスタートさせるカッコいいドラムプレイに注目したいです。曲全体の跳ねるような雰囲気を一番初めに作り出しているのが、このドラムです。僅か数秒のうちに何度ドラムと叩いているのか。勢いよく自宅を出る主人公が目に浮かぶようです。

その勢いそのままに、ウキウキと歩く姿を連想させるのが、直後に続くチャキチャキした音を奏でるエレキギター。イントロのリフは心地よい音色とリズムで気分を盛り上げてくれますし、絶えずメロの後ろで踊る演奏も、爽やかな朝を感じさせます。

また、曲中間のギターソロもお気に入りです。このソロではギターの音色が変わり、ロックギターらしい歪んだ音が楽しめます。それまでのギターが爽やかな朝なら、このギターはタフな一日を終えて疲れた体で、眺める夕日です。所謂、泣きのギターですね。

さらに、ベースプレイにも注目したいです。イントロのドラムプレイの直後に、まるで吐き出されるかのように鳴らされるベースは、なんだかエンジンの始動音のようです。また、音の動きが多い演奏が、曲全体のグルーヴを作り出していますね。

スピッツというロックバンドが持つ魅力を、十二分に楽しめる演奏になっていると思います。大人しめのバンド、スピッツというイメージを持っていた人も多いであろう「めざまし」の視聴者層に対して、スピッツのロックサウンドをアピールできたでしょうね!
an image of rockband this song makes us think of

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2. ボーカルについて

この曲で使用する音域は、スピッツにしては低めです。草野さんのボーカルは、高音域は圧倒的な輝きを放つ一方、中音域には優しい響きが宿ります。どうしても高音域ばかりに目が行きがちですが、こういったボーカルも草野さんの魅力です。

さて、私が「ヘビーメロウ」のボーカルから感じる一番の要素は、優しさ。ただし、愛でる優しさと言うより、労わる優しさです。曲全体から感じる雰囲気は、ウキウキとしたものが中心ですが、その演奏に乗るのは優しさに溢れたボーカルなのです。

学校での悩み、家庭での悩み、そして会社での悩み。現代社会を生きる私たちは、様々な悩みに囲まれています。そんな私たちに対し、少し掠れた優しいハスキーボイスのボーカルが、労りの言葉をかけてくれているように感じます。

疲れた体に染み入る優しいボーカル。悩み事は尽きないけれど、まあ今日も頑張っていくか。ちょっとだけ重たい体を引きずりながら、晴れ時々曇れの空の下を歩こう。このボーカルを聴いて、そんな気分になる方も多いのではないでしょうか?

優しいボーカルからその日を有意義にする活力をもらいつつ、一部の人はスピッツの毒にもニヤリと笑っていたことでしょう。優しい声で歌われる、ちょっとした毒。ザ・スピッツをお楽しみください。
an warm image that the vocal of the song gives us

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3. 歌詞について

冒頭でも触れた草野さんのコメントによれば、この歌詞には、ちょっと卑屈でネガティブな要素が含まれている、とのこと。このことは、この曲の歌詞をより共感しやすいものにしていると言えるでしょう。光だけの人生などありえませんからね。

そんな歌詞は、光の道を歩く人の目線ではなく、日影気味の孤独な立場にいながらも、日々を頑張って生きている人の目線で描かれているようです。全てが順調とは言えないが、それでも頑張っていく。そんな誰かに寄り添った歌詞だと感じます。

歌詞そのものは、出だしからいきなりネガティブ要素を含んでいます。明るい曲調が曲全体の爽やかさを演出している一方、歌詞からは少し擦れた印象を感じます。この曲では、二つの相反する要素が、違和感のない形で溶け合っている感じです。

もちろん、歌詞全体をトータルとしてみれば、優しい歌詞になっています。全体としては、「心の解放と開放」がテーマだと言えるかもしれません。完璧でなくてもいいから、自由な心で不器用に進もう。そんなことが表現された曲だと感じています。

曲のPVに登場する吠えているときだけ明るく、太陽の下では黒い仮面を被る犬。この犬は、この曲の主人公の姿を表している気がします。一人のときだけ自分を出して、お日様の下では仮面で身を守るのです。
an image of hiding from the sunshine

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歌詞の世界を妄想する

ここからは、「ヘビーメロウ」で歌われる世界を、より具体的に妄想していくことにします。今回の妄想のキーは、「ヘビーメロウ」という言葉が意味する「成熟・完熟。その前提で、以下の4つの段組みをご用意しました。

今回の妄想では、この曲のストーリーを示唆していると思われる意味深なPVのことは考慮しないものとします。手がかりが少ない方が妄想を楽しめるので、単純に歌詞だけを追いつつ、曲の世界を考えてみます。
an image of being mellow or not

1. 登場人物とその姿

私は、主人公を社会の掟の顔色を覗って生きている男性としてみました。イメージは、30代前半の中堅どころ。そんな彼は、社会から期待される役割を果たしつつ、そのキャリアにささやかな花を咲かせ、未来には大輪の花を咲かせようとしています。

ささやかな成功を収めつつある者として、彼は幸せであるべきなのでしょう。しかし、彼は幸せを感じることができません。物的な豊かさは、思ったほど彼を幸福にしないのです。物的社会の恩恵で幸せになれない彼は、ある意味では、時代遅れの男

そんな彼は、自分の役割を果たすため、無茶な要求にも応えようと文字通り身を粉にして働きながら、まだ見ぬ幸せを夢見ています。しかし、なかなかその望みが叶う兆しは見えません。そんな彼は、時折こう呟いたりもします。「俺も孤独さ」、と。

この世で幸せを得られないことは、ありふれたこと。だからこそ、無理に物的社会の恩恵に浸ろうとはしません。そうしないことは、社会の掟に対する彼の唯一の反抗。その方法では、自分は幸せにはなれない。悶々とした想いで、彼は生きています。

そんな孤独を抱えた彼の前に現れたのが、「妙ちくりんな女神」。この女神は、彼が普遍的だと思っていた淀んだ感情とは無縁のようで、いきいきとした光を放っています。彼は、彼女に興味を持ち始めます。
image of her in the song

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2. 二つのリズム

この曲には、注目するべき二つのリズムが登場します。ひとつは、「ヘビーメロウなもの」、そしてもう一つは「ファンキー風味なもの」です。私は、これら2つのリズムが、対比的な文脈で使われているのではないかと妄想してみました。

「ヘビーメロウなリズム」、つまり「成熟したリズム」に乗ることは、一人前の大人としての振舞うことを意味します。ただ、成熟することは、終わりへと近づくことでもあります。そのリズムの中に大きな成長などはなく、淀んだ停滞感すら漂うでしょう。

一方のファンキーは、「個性ある」というニュアンス。これは「ファンキー風味なリズム」が妙ちくりんなものであると示しています。また、この歌詞の周辺には「夜明け」や、「命を燃やす」という言葉も見られます。これも、淀んだ停滞感とは対照的です。

なお、ファンキー風味に生きると言っても、奇をてらうことを目指すわけではありません。むしろ、その逆です。何一つ飾らず、ただ心を開くだけなのです。ただし、そんな姿勢は、それまでの彼の生き方と比較すれば、ファンキーなものに違いありません。

ちなみに、「ヘビーメロウなリズム」に沿った行動を描写する歌詞は、明確な過去形が用いられています。一方、「ファンキー風味なリズム」のそれは、過去形ではなく命令形が用いられています。凍えそうな過去は、「ヘビーメロウなリズム」によるもの。では、これからの未来は?
an image of being natural

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3. 変わりゆく心

全く違うタイプの二人の交流は、主人公の心に大きな変化を与えたようです。具体的にどのような交流をしていたのかは分かりませんが、その概要を掴むためには、主人公と彼女の交流を描く2番のメロの描写を考察していくのが良いでしょう。

私は、2番の当該部分は、主人公が人生の旗印としているヘビーメロウな精神、つまり「大丈夫たる者、かくあるべし」という時代遅れな観念から自らを解き放ち、もっと自由な心で、今を楽しむことを教えられたという意味だとしました。

ただし、妙ちくりんな女神の彼女としては、そんな高尚なことを彼に教えたつもりはなく、ただ彼女のスタイルで楽しんでいただけだとも思います。しかし彼は、マイペースに楽しむ女神の姿を見て、新しい生き方を学び取ったのかもしれません。

ところで、少し時間軸が戻りますが、1番で歌われている「この日」とは、主人公が彼女の生き方を実践するために、行動を起こした日のことを言っているのではないでしょうか。堅苦しい心を解き放ち、ちょっとだけファンキーに生きてみるのです。

彼の姿勢がファンキー風味に留まっているのは、今までの生き方とあまりに違うスタイルを突き通すのが、ちょっぴり気恥ずかしいからです。ただ、ファンキー風味でも、彼にとっては大きな一歩。この生き方を続けていけば、ファンキー風味を卒業する日も近いでしょう。
an image of taking a big step

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4. 枠の外へ

ファンキーに生き始めた主人公は、夜明けの気配を感じています。命が燃え始めるのを感じています。彼はその身に、自由の風を切る爽やかな感覚を感じているのだと思います。予想内の世界で生きていた彼は、その枠の外へ飛び出したのです。

合理的な枠を飛び出すことは、彼にとっては大きな挑戦です。何故なら、その世界では、確かな将来図を思い描くことが出来ないからです。何があるかは分からない、多くのことは風任せ。昔の彼なら、恐れおののいた世界だったでしょう。

未来を予測できる世界は安心ですが、合理的な限界線もあります。出来ることはできる、出来ないことはできない。これこそが、この世界を支配する原理・原則です。こんな世界は、とても成熟していますが、ワクワクは感じられません。

彼は、その世界を飛び出すことにしました。「ヘビーメロウなリズム」ではなく、「ファンキー風味なリズム」に身を委ねた冒険を始めるのです。限界の雲を突き破り、大空を飛び回るのです。その切欠をくれたのはもちろん、「妙ちくりんな女神」です。

女神の生き方を実践してみた彼は、大きな感動を覚えます。そして、思わず彼女に尋ねたくなりました。何の保証もしてくれないが美しいこの感動を、信じてもいいのだろうか。この身を震わすような喜びに、涙を流してもいいだろうか。昔の彼なら、どちらも答えはNOでしょう。では、「妙ちくりんな女神」は、なんと答えるでしょうか?
an image of flying in the sky with pleasure

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さいごに

この曲が発売された当時、仕事の昼休みに近くのカラオケへ通いつめ、この曲を何度も歌ったのを思い出します。そんな思い入れの強い楽曲なので。主人公に自分の姿を投影しつつ、妄想してみました。私は、成功などは収めていませんがね(笑)

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