スピッツの曲

スピッツの「はぐれ狼」の感想。「反発心」を軸に、歌詞の意味も考察

はぐれ狼に感じる強さのイメージ
こんな記事

「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。

今回の「はぐれ狼」は、スピッツの16thアルバム「見っけ」の収録曲。スピッツらしいロック成分を感じる、爽やかで強い一曲ですね。

この記事では、そんな「はぐれ狼」の魅力を語りつつ、歌詞も考察。君の言葉で、掟に反発する心を認めていく青年の物語を考えました!

「はぐれ狼」とは

「はぐれ狼」は、スピッツが2019年に発売した16thアルバム「見っけ」の収録曲です。前曲の「YM71D」はオシャレな雰囲気を纏った一曲でしたが、この「はぐれ狼」はロックバンドスピッツとしての原点回帰、牙を感じるロックナンバーです!

曲名曲調一般知名度お気に入り度
1はぐれ狼爽やかで強い
はぐれ狼が君を想うイメージ

1. 演奏への印象

「はぐれ狼」の演奏には、スピッツらしい力強さを感じています。前曲の「YM71D」がこじゃれた曲でしたので、「はぐれ狼」の持つパワーがより際立って聴こえてきます。狼をタイトルに冠した曲と言うこともあり、爽やかさの中の牙も感じますね。

演奏は全体として、連動感、一体感のあるロックバンド仕様だと感じています。ギター、ベース、ドラムが連動した歯切れの良い、力強い演奏だといえるでしょう。演奏面で特にお気に入りを挙げるならば、トゲを感じる間奏のロックギターですね。

また、草野さんの伸び上がる高音ボーカルも、素晴らしいですね。サビの高音パートでは、そのボーカルが、コーラスにも彩られつつ、美しく力強い輝きを放っていますね。低音から高音まで完全に連結された見事なボーカルには、脱帽の一言ですね!

ボーカルに注目するイメージ

2. 個人的な想い

「はぐれ狼」は、スピッツロックを体現する一曲だと感じています。常に同じスタイルばかりではつまらないのでしょうが、やはりこの手のロックスタイルは私の好みとするところです。イントロからして、「待ってました」と言いたくなる感じですね。

爽やかなロックナンバーと言えば、「幻のドラゴン」などもそう形容できるでしょうが、「はぐれ狼」の持つ雰囲気は異なりますね。やはり、攻めた雰囲気を前面に感じる点が大きいでしょう。それが、歌詞上では今にも崩れそうなものであっても。

「はぐれ狼」というタイトルそのものが、スピッツの精神性を象徴するものだとも感じています。世界の中心にいないとしても、弱くとも己の牙を持つ存在。そんな雰囲気を感じる曲からは、自分らしく生きる勇気を貰っている自分がいますね。

はぐれ狼のイメージ

 

歌詞の世界を考える

ここからは、「はぐれ狼」の歌詞を追いながら、その歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「誇りを持って立ち向かえ」としました。また、その考察テーマを補足するため、以下の4つのトピックを準備してみました!

解釈は私の感想の言語化であり、他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、独自の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスまとめています

「はぐれ狼」のイメージ

1. 考察の前提

タイトルの「はぐれ狼」は、弱い生き物であるという描写が歌詞冒頭にあります。彼は、成功者たちが食べ散らかした残渣をあさって生きてきたのです。狼には誇り高いイメージもありますが、そんなものは無いとする彼は臆病な性格なのでしょう

ところで、曲には常識上の「正解」と「誤り」という対比を感じています。そして臆病な彼は、心ならずも常識上の正解の仮面を被って生きていました。ただし彼は、君の存在を知ったことで本心と向き合い始め、それまでの生き方を変えていくのです。

また、曲中の悪魔とは君のことでしょう。常識上の正解から見れば、君は人々を邪道へ誘う悪魔なのです。そして、敢えてその常識側の視点を用いることで、常識の立場を理解した上で、それでも君を信じるという彼の反抗心が示されていると感じます。

彼が逃げ出した街は、常識に満ちた街。虚実の駆引きに溢れ、彼には何も信じられない街でした。彼は、本心では正解と相容れないと感じつつも、臆病に自分を偽っていましたが、君の存在を知ってその日々を終えるのです。以降では、君を契機に変わっていく青年の物語を考えます!
はぐれ狼のイメージ

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2. 逃げ出して

常識が振りまく正しさ。大人になるということは、競争に打ち勝つ術を身に着けるということで、虚実の駆け引きは正当な振舞い。彼は長い間、そんな正義に照らされた街で、息を潜めて生きてきました。そう彼は、常識に馴染めない存在だったのです。

彼の本心は、いつだって常識の掟が言う不正解に惹かれていたのでした。そんな彼の本性は、掟に言わせれば邪なものでしょう。そんな掟の正義を理解していた彼は、自分の本性を隠して生きてきました。掟と闘っても、勝ち目はないのですから。

だから彼は頭を低くし、掟の論理で正解を取り続ける勝者たちの影の中で、彼らが食い散らかした喜びの欠片を食べ、何とか日々を保ちながら生きてきました。ただ、そんな抑圧の日々の鬱積は、いつしか耐えきれない程の負荷へと変わっていました。

抑圧に耐えきれなくなった彼は、街からの夜逃げを選択しました。掟的に言えば、利害がぶつかったときは戦いを選ぶのが正しい大人の姿なのでしょう。ただ彼は、そんな誇りは持ち合わせてはいませんでした。正義の掟の中に、邪な彼が共感できるものなど何一つないのですから。
彼が夜逃げするイメージ

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3. 荒野へと

寝静まった街から逃げ出した彼の姿は、繁栄の欠片も感じられない荒野にありました。見渡す限り荒れ地が続くこの場所は、まさに掟の不正解を体現したような場所。それだけで彼にお似合いでしょうが、彼がここに来たのには別の理由もありました

風吹き抜ける荒野に立つ彼の脳裏には、街で見つけた邪なメッセージが浮かんでいたのです。美しさを求める街では誰も見向きもしない、色もはげ落ちた看板にひっそりと刻まれていたメッセージ。それは、街の正解に疑問を呈する誰かの言葉でした。

会ったこともない誰かの言葉。ただ彼には、それは女神の言葉のように思われました。掟的に言えば、その誰かは悪魔にも等しいでしょう。ただし長い間、自分と同じ邪な匂いを求め続けてきた彼には、それは待ち望んだ女神の言葉そのものでした。

その女神の言葉は、掟の正解に疑問を呈するとともに、共感者たちの結束を呼び掛けていました。そして、同志たちが集う場所としてこの荒野が記されていたのです。約束の期日は書かれていませんでしたが、きっと何か事情があるのでしょう。ただ彼は、「君」を信じたのでした。

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4. はぐれ狼

君の言葉は、彼の邪な考えに確信を与えてくれました。圧倒的な力で街を支配する正義は、その見てくれは荘厳。しかし実際、その正義の論理には穴があり、唯一無二の正解ではないはず。そして彼は今、君の言葉でその穴の存在を信じていました。

灰色の支配を抜け出した彼は、自身にはないと思っていた独自の誇りに気づいていました。そう、自分を偽る日々は終わったのです。かつて持っていた、自分自身という誇り。今はその輝きを失っていますが、丁寧に研磨すれば元通りになるはずです。

強大な掟に挑む戦いは厳しくとも、君がいてくれれば。荒野の果てから君が現れたとき、全てが変わるはずです。彼は季節が流れても、「はぐれ狼」の誇りを磨きつつ、女神の光臨を待つのです。ああ、今日もまた、地平の果てに光が差してきました。

私にとっての「はぐれ狼」は、絶対的正義を標榜する支配的な掟に馴染み切れないながらも本心を隠して生きて来た青年が、君の言葉を通じて自分の考えを信じる勇気を持って、掟からはみ出していく物語。掟では悪魔とされる君は、彼にとっては美しい女神のような存在なのです!
彼が迎えた夜明けのイメージ

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さいごに

今回は、主人公と君は会ったことがないという設定で物語を考えてみました。ただいずれにしても、君を信じることは彼自身を信じることと同義なのです。君が地平線の果てから現れかどうかは分かりませんが、私個人としてはそうなると信じています!

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