スピッツの曲

スピッツの「ムーンライト」の感想。「戻らぬ日々」を軸に、歌詞の意味も考察

「ムーンライト」に感じる幻想的なイメージ
こんな記事

「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。

今回の「ムーンライトは、スピッツの21stシングル「ホタル」のカップリング曲。疾走感と気品に溢れていて、紛れもない名曲ですね。

この記事では、そんな「ムーンライト」の魅力を語り、歌詞の意味も考察。大切な君を失った青年が、物思いにふける物語を考えました!

「ムーンライト」とは

「リコリス」は、2000年発売の21stシングル「ホタル」のカップリング曲。「ホタル」は、儚くも美しい曲でしたが、この「ムーンライト」も美しく気品ある一曲。スピッツの隠れた名曲として、私の大のお気に入りとなっている一曲です。

曲名曲調一般知名度お気に入り度
1ムーンライト気品あるロック
ムーンライトのイメージ

1. 演奏への印象

「ムーンライト」の演奏には、ミステリアスな雰囲気を感じています。また、月と結びつく楽曲でもありますから、月が持つ神々しさや神秘性が重なる曲でもあります。さらに、メロとサビの間に強いメリハリがあり、静と動の二面性も感じていますね。

具体的演奏面で言うと、ミステリアスな雰囲気を作るのはイントロとアウトロで印象的な、エレキギターの演奏。また、メロとサビの間のメリハリを生み出すのは、サビ直前のロックギターの煽りと、駆け出すようなドラムパターンの変化ですね。

また、曲が持つ神秘的な雰囲気は、そのボーカルの影響も大きいです。ややエフェクトが強めで音がぼやけ、遠くから響く幻想的なボーカルに聴こえます。また、全体的にハモリパートも多めであり、曲が持つ奥深さと幻想性を強めていると感じますね。

曲で印象的なドラムのイメージ

2. 個人的な想い

私にとって、この「ムーンライト」は特別な一曲。知名度は低くとも、曲の魅力だけで言えば、歴代のA面曲にも全く見劣りしません。ただ、月を連想させる楽曲ですし、あえて表に出ずに裏に佇むからこそ、神秘的な魅力が高まるとも言えそうです。

「ムーンライト」は静と動の二面性を感じますし、月が持つ神秘的な雰囲気も手伝って、様々な妄想が膨らむ曲だと感じています。疾走感あるサビを中心に捉えれば明るい曲に、ミステリアスなメロを中心にすれば意味深な曲に思えてきます。

ところで、「ホタル」のB面曲は、「ムーンライト」と「春夏ロケット」の二曲あり、後者はストレートな疾走ロック。高揚感を感じる点では同じですが、全く同系統の曲ではペアは成立しません。そう、「ムーンライト」の高揚感は、一癖あるのです

曲に感じる美しくファンタジックなイメージ

 

歌詞の世界を考える

ここからは、「ムーンライト」の歌詞を追いながら、歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「戻らぬ日々を糧に変え」としました。また、そのテーマを補足するために、以下の4つのトピックを準備してみました!

解釈は私の感想に過ぎず、全くもって他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、私の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスまとめています

月を見つめて考える彼のイメージ

1. 考察の前提

私にとっての「ムーンライト」は、彼の下を去った君に対する、主人公の未練と後悔を歌った歌。そして私は、1番サビは君と過ごした美しい過去を、2番サビは君を失った彼が、独りで想い出の場所に立ち、君を想う様子を描いていると解釈しました。

君が彼の下を去ったのは、関係を進展させようとしない彼を不誠実と見たから。彼は、考えがあって好機を待っていただけと主張していますが、その気持ちは君には伝わっていませんでした。そして彼は、君を失うという苦しみ、「罰」を受けたのです。

なお、1番と2番のメロは時系列的に同じ時期を指していて、1番の「新章を始める」描写と2番の「外を覗く様子」はいずれも、君を失って塞ぎ込んでいた時期を乗り越え、君への未練を感じつつも新たな日々を始める様子を描いているとしました。

ところで私は、2番サビの鼻を触る描写は、「へへへ」といった軽妙なノリ、または涙の示唆のいずれかと考えた上で、涙と結び付けた解釈をしました。彼が遠い目をしているのも、喜びではなく悲しみと結びつくと感じます。以降では、君を失い一人で生きる青年の物語を考えます!
「ムーンライト」に感じる月のイメージ

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2. 後退の日々

どうして、君と出会ってしまったのか。彼はずっと、そんな後悔に捕らわれて生きてきました。世界は小さいとはいえ、君という特定の一人に出会う確率は低かったのに。こんな思いをするくらいなら、いっそ出会わない方が良かったかもしれません。

彼にとって君は運命の人であり、人生を共に歩んでいくはずの人でした。それは、彼にとっては願望ではなく事実だったのです。だからこそ、君との関係構築を急ぐ必要はないと思っていました。焦らずとも、いずれ二人は結ばれる定めなのだから、と。

それに彼は、何もしていなかったわけでもありません。彼は彼なりの方法で、君との距離を詰めていたつもりだったのです。そして、最高のタイミングを見計らい、君に想いを伝えるつもりでした。それが、運命で結ばれた二人には相応しいはずでした。

真意を知らねば消極的にも見える彼は、君には関係に真剣ではないと映ったのか。君は、彼の下を去ってしまいました。以来の彼は、大切な君を失望させたという強い罪の意識を抱えて生きてきました。過去と後悔ばかりに目が向く彼は、後ろ向きに流れる時の中を生きていたのです。
過去に捕らわれた彼のイメージ

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3. 詮無きこと

時間の流れはときに残酷で、ときに優しいもの。かつては彼を厳しく責め立てていた心の声も徐々に態度を軟化させ、自分の殻に閉じ籠る暗い日々はもう十分だと、彼を諭し始めていました。彼は確かに過ちを犯したが、もう贖罪は十分だろう、と。

そんな囁き声に導かれ、彼も変わり始めていました。後悔と言う名の過去に閉じ籠っていた暗い日々を抜け出し、今を生き、未来を目指すべきだ、と。彼はようやく、後悔ばかり見つめるのを止め、恐る恐るながら、今に目をやるようになったのでした。

新たな日々を始めることは、彼にとって君との日々を完全に諦めること。頭では復縁の望みはないと分かっていても、心のどこかで淡い期待を抱いている彼もいたことも事実。しかし、もうそれも終わり。彼は現実を認め、今を生きるべきなのでしょう。

後悔を振り払い、「過去」を脱して「今」を覗う日々。まだ劇的な変化とは言えずとも、彼の物語の新章は始まっていました。久方ぶりに「今」を眺めても、彼を咎める人は誰もいませんでした。彼の罪悪感は彼だけのもので、彼は今を生きる資格を失ってなどいなかったのです。
閉じ籠っていた心に穴をあけ、外を覗うイメージ

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4. ムーンライト

彼は過去を見つめ直すため、かつて二人で訪れた海岸に足を運んでいました。あの日と同じ波の音と美しい月。違うのは、隣に君がいないことだけです。ただ、そのたった一つの違いはあまりに大きく、鼻をかすめる風を冷たく感じさせるのでした。

あの日、清らかな月光が君を照らしていました。そして、憂いを帯びたその横顔に神々しさすら感じた彼は、待ち望んだ好機を感じて君の手を取ったのです。ただ、既に君の信頼を失っていた以上、彼の急変は軽薄な印象を残しただけだったのでしょう。

同じ景色を見ることが出来ないように、君との日々が戻ることもありません。しかし、君との出会いには意味があったはず。いや、意味を持たせなくてはなりません。彼は、波の音と優しい月光に包まれながら、遠い目をして物思いに耽るのでした。

私にとっての「ムーンライト」は、自分本位の関係に甘えていた主人公が、運命の人だったはずの君を失い、後悔を胸に新たな日々を始める物語。曲は「静」を司るメロによる意味深な問いかけ、しかも儚いフェードアウトで終わるため、やや影のある物語と相性が良いと感じますね。
波と月を見つめるイメージ

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さいごに

「ムーンライト」を明るい曲として捉えるなら、凡人の業という罰を受け、臆病に身を潜めていた主人公が君と出会い、殻を抜け出していく物語と言ったところでしょうか。見方によって色々な解釈が出来るのも、スピッツ曲が持つ魅力ですね!

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