「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「初恋クレイジー」は、スピッツの7thアルバム「インディゴ地平線」の収録曲。スピッツらしい優しい輝きに溢れたポップなラブソングで、キャッチーなメロディーが耳に心地よいですね。
この記事では、そんな「初恋クレイジー」の魅力を語り、歌詞の意味も考察します。クレイジーであることは、いけないことでしょうか?
「初恋クレイジー」とは
「初恋クレイジー」は、スピッツが1996年にリリースした7thアルバム「インディゴ地平線」の収録曲。前曲の「花泥棒」は、勢いに任せたパンクでしたが、この「初恋クレイジー」では、スピッツ王道路線の一つ、ポップなラブソングへ回帰しています。
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | 初恋クレイジー | ポップなラブソング |
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1. 演奏への印象
「初恋クレイジー」の演奏では、爽やかなピアノが印象的です。「夜を駆ける」や「ヒビスクス」など、ピアノが目立つ曲は他にもありますが、その音色は暗め。「初恋クレイジー」のようなポップな曲で、ピアノが中心に出てくるのは珍しいですね。
明るいピアノが基軸になっていることもあり、爽やかな印象がありますし、歯切れのよさも感じています。また、サビでのコーラスは美しく、優しい印象を放っています。曲全体としては、恋が与える喜びを存分に感じる雰囲気だと言えるでしょう。
ただ、そんなポジティブな雰囲気の中でやや異質に感じるのが、間奏のハーモニカ。その後のCメロの歌詞もあり、微かな寂しさを感じます。ただその後は、明るいサビが戻ってきますから、最終的には恋の力は全てを越えていくのだと感じています。
2. 個人的な想い
「初恋クレイジー」は、キラキラした雰囲気を持ったポップな楽曲。世間一般のスピッツのイメージに、ピッタリと合致するタイプの曲ではないでしょうか。サビでは高音が連発されるので、スピッツらしい高音で輝くボーカルを楽しむこともできます。
また、「初恋クレイジー」は、ライブ演奏も素晴らしいです。公式DVD化されている2011年の「とげまるツアー」での演奏は、私の心に刺さりました。草野さんの、少しハスキーな声で歌われる「初恋クレイジー」も、深みが増していて非常に魅力的です。
CD版の「初恋クレイジー」のイメージが、芽を出したばかりの瑞々しい新緑だとするならば、ライブ版のそれは、葉を青々と茂らせた大木のような感じ。前者の持ち味は、「新鮮さ」、後者の持ち味は、「安心感」と言ったところでしょう。
歌詞の世界を考える
ここからは、「初恋クレイジー」の歌詞を考えつつ、その意味する世界を考えていきます。今回の考察のテーマは、「恋の力で愚かになって」としました。その考察テーマを補足するためのトピックとして、今回は以下の4つを準備してみました!
曲解釈は私の想像であり、他人に押し付ける物ではありません。ただ、出来る限り想像の根拠が提示できるように、歌詞とリンクさせながら進めていきます。私の想像を楽しんでいただけると、嬉しく思います!
1. 考察の前提
「初恋クレイジー」との曲タイトルを鑑み、この曲は主人公の初恋を歌っていると考えてよいでしょう。ただし、ここでの初恋とは、初体験の恋という意味ではなく、クレイジーになるほど夢中になった初めての恋、という意味で捉えています。
その根拠は、2番の出だしの部分。軽いキスで満足していた彼の姿は、深い繋がりを持たない、心の表面をなぞり合う恋で満足していた彼の過去を示唆しています。ただ、今の彼は、君の心の表面をなぞるだけではとても足りないと感じています。
君と出会うまでの彼は、その生活に充実感を感じてはいませんでしたが、君の出会いが契機となり、世界の輝きに気づき始めます。君は彼の恋人であり、彼の世界を変えた存在。そんな君への想いを歌った曲が、「初恋クレイジー」だとして考えます。
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2. 夢など見ても
君と出会うまでの彼は、人並みに恋愛をし、恋人を作り、日々を卒なくわたってきました。そして彼は、自分が現状に満足していると熱心にアピールしてきました。彼は、何となくスッキリしない気分も気のせいだと、自分に言い聞かせてきたのです。
ただ彼は、心の奥底では自分が幸せではないと分かっています。彼は、自分が満たされているとの強がりは、寂しい狼の遠吠えのようなものだと感じているのです。ただ彼は、その強がりこそが、世界での唯一の在り方だとも感じていました。
冷たい世界の中では、自分が夢を見たところで、愚かでクレイジーな考えに過ぎないではありませんか。馬鹿なことを夢見ても仕方ない。彼は、そんな思いで、日々を卒なくわたってきたのです。ただし、そんな彼の心は麻痺し、壊れはじめています。
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3. 溶けたアイス
心を眠らせる日々を送ってきた彼ですが、君と出会ったことでその世界を大きく変えていきます。君との出会いによって、彼には見飽きた退屈な街並みさえ色鮮やかに見えてきますし、自身の未来により前向きな考えを持てるようにもなったのです。
自分自身を納得させようとしていた日々は、彼にとってとても長い日々でした。しかし、君と出会って、君が側にいてくれるようになってからは、あっという間に時間が過ぎていきます。まるで、季節がその速度を変えたかのように感じるほどです。
そんな日々の中では、彼がかつて毎日のように呟いていた言葉も、忘れ去られていきます。その言葉とは、夢を見ようとする自分を諫める言葉。しかし、君が側にいてくれる今、そんな言葉はお日様の下のアイスのように、溶けて消えてしまいました。
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4. 初恋クレイジー
彼にとって、君へ感じる恋心は初めての体験。型通りの大人の恋愛、心の表面だけを形式的に撫で合う恋愛ではなく、自分の全てをさらけ出したくなるような恋愛なのです。それは、彼が住んでいた世界から見れば、幼くクレイジーな恋かもしれません。
その恋が続く先は、予定調和の世界ではなく、予測不能でおかしな世界。安定を放棄しようとする彼の姿はクレイジーですが、それは表の世界から見た解釈に過ぎません。彼は、その解釈を越えた先に広がる、馬鹿げた未来に強く惹かれているのです。
そんな彼は、完璧の仮面を脱ぎ捨て、泣き虫で弱虫な本当の自分を取り戻します。二人だけのおかしな世界では、完璧な自分でなくてもいいのですから。ありのままの二人は、お互いの心を混ぜ合わすことでプロペラを回し、青空を飛んでいきます!
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さいごに
人間と恋と言う感情は、本来的には不可分でしょう。ただ、現代を生きる私たちは、成長に伴ってその二つを分けることを要求されているとも感じます。大人になっても、分別と一緒に、型にはまらないクレイジーさも持ち続けていたいですね!