「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「さらさら」は、スピッツの14thアルバム「小さな生き物」の収録曲。本アルバムで2曲目の、シリアスな雰囲気を纏った曲です。
この記事では、そんな「さらさら」の魅力を語りつつ、歌詞の意味も考察。恋人との関係を修復しようとする青年の物語を考えました!
「さらさら」とは
「さらさら」は、スピッツが2013年に発売した14thアルバム「小さな生き物」の収録曲。前曲の「オパビニア」は恋の喜びの色と感傷的な色を併せ持った独特な一曲でしたが、この「さらさら」はシリアス色が強く、寒色の世界が広がる一曲ですね。
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | さらさら | シリアスロック |
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1. 演奏への印象
「さらさら」の演奏は、シリアスな雰囲気がその中心にあります。「小さな生き物」は、生きるということに様々な角度から眺めたアルバムだと感じていますが、この「さらさら」は、生きることが持つ苦難の顔に触れる一曲だと言えるでしょう。
演奏面では、イントロの悲し気なアルペジオが印象深いです。このギタープレイは、「さらさら」が持つ真剣、いや、深刻とすら感じる雰囲気を象徴しています。また、曲PVも、その色感や映像内のメンバーの表情も含め、全体的に重い雰囲気ですね。
ただ、「さらさら」は人生の悲痛さを嘆く曲ではなく、人生の辛い面を認めたうえで、その先の希望の光を信じる曲です。最後まで明確な雰囲気の転換はありませんが、サビを二回繰り返すラスサビには、苦難を越えようとする決意の眼差しを感じます。
2. 個人的な想い
「とげまる」を僅かな後追いで知った私は、そこでスピッツに惚れ込みました。そして、この「さらさら」は、私がそのリリースを待ちわびた最初のシングル曲。そんな訳で「さらさら」は、私のスピッツ年表の上での、一つのマイルストーンです。
その意味で、やはりこの「さらさら」には特別な思い入れがあります。曲の発売日時点で、私は既に多くの過去曲を聴いていたはずですが、それでも「さらさら」の雰囲気には、ある種の新鮮さを感じました。スピッツ、こういう顔もあるのか、と。
ところで「さらさら」は、恋愛的な要素を扱う曲ですが、その背後には、「人生応援」というアルバムの包括的なコンセプトを感じています。つまり、苦しい日々を何とか乗り越えて、その先の未来を掴もうとする姿勢を歌った曲、ということですね。
歌詞の世界を考える
ここからは、「さらさら」の歌詞を追いながら、その歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「柔らかな心で」としました。また、その考察テーマを補足するため、以下の4つのトピックを準備してみました!
曲解釈は私の想像であり、他人に押し付ける物ではありません。ただ、出来る限り想像の根拠が提示できるように、歌詞とリンクさせながら進めていきます。私の想像を楽しんでいただけると、嬉しく思います!
1. 考察の前提
「さらさら」の世界には、悲しみの色が広がっています。そしてその原因は、曲に登場する二人の関係がこじれていることです。サビで歌われる、時間限定でいいから君に傍にいて欲しいという彼の切実な願いは、二人の関係上の問題を感じさせます。
二人のいざこざは、ボタンの掛け違いが積み重なった結果と言う印象で、その関係は敵対的というより、信頼関係が崩れている印象。ただ、二人の絆の現状を示すラスサビの「結んだ紐」の描写を見れば、二人はまだ、かろうじて恋人同士だと分かります。
Cメロの歌詞は、二人は問題を解決し、再び光を手に入れたとも読めます。ただ、直後のラスサビの歌詞に、内容上の大きな変化はないのです。このことから、Cメロに溢れた光は、彼のそうであって欲しいという思い込みにも似た希望だとします。
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2. 冷えた部屋
なんて、愚かなことを。彼は、過去の振舞いを反省していました。彼と君は、温かな愛を交わし合う理想の二人だったはずですが、今の二人の寒々しさと言ったらありません。そして、二人の愛を凍り付かせたのは、他ならぬ彼自身なのでした。
君は、自分のことを何でも理解してくれる。そう信じ込んでいた彼は、いつしか君への配慮を欠いた振舞いをするようになっていたのでした。表面上にトゲがあっても、君ならば彼の心の底にある君への愛を感じ取って、全てを笑って許してくれると。
始めは、そうだったかもしれません。ただ、それが積み重なり、彼はこの寒々しい部屋に足を踏み入れてしまったのでした。彼は今、本心を晒すことが必要だと分かっています。ただ彼には、冷えた空気の中に放つ、適切な言葉が思いつかないのでした。
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3. 水のこころ
彼は、温かかった二人の絆を取り戻すため、一所懸命に考えてきました。暗中模索ではありながら、君の心をほぐすような言葉も口に出すようになりました。ただ、何度やっても君の笑顔は戻らず、その度に、彼は口の中でもごもごと謝るのでした。
何を言っても響かない君に対し、彼は失望と同時に微かな苛立ちをも感じ始めていました。時折、彼の心には言い訳がましい自分が顔を出すのです。素直に心を晒すのは、自分の個性ではない。何故君は、それを分かろうとしてくれないのか、と。
ただ彼は、そんな自分勝手な態度こそが、二人の絆を冷やしたのだと分かっていますし、二人の絆が無条件に続くものではないとも理解しました。遅ればせながら、彼はその絆を当然と考えず、そのありがたみを正視できるようになったのです。
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4. さらさら
悲しみの色を粉砕する言葉ではなく、ただ素直な心。それは自分のスタイルではないかもしれませんが、今必要なのは「さらさら」と流れる、柔らかい水のこころでした。その心はきっと、この部屋に朝日を呼び、二人の絆を温めてくれるはずです。
その日が来るまで、君には傍にいて欲しい。それが、彼の願いでした。散々君を悲しませておいて、虫のいい話だと分かっています。だから、いつもとは言いません。彼がこの世界で柔らかい心を作ろうとしている間だけは、傍にいて欲しいのです。
何度もハズレをひき、やっと辿り着いた答え。そうきっと、これが正解。君を悲しませた過去は消えずとも、二人を結ぶ絆が抜け落ちそうでも、まだ間に合うはず。彼は今日も、堅い心を柔らかな水に溶かします。二人の日々がまだ続くことを祈りながら。
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さいごに
歌詞にある「冷たい指」は、少しドキッとする示唆を感じる描写です。ただ今回は、この「小さな生き物」というアルバムに感じる温かなメッセージを優先し、悲しすぎる解釈はしないことにしました。二人が、以前の二人に戻れるといいですね。