スピッツの曲

スピッツの「シュラフ」にくるまって。主人公が目指す世界とは

スピッツのシュラフが持つイメージ
こんな記事

「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。

今回ご紹介する「シュラフ」は、スピッツのアルバム「惑星のかけら」の収録楽曲で、ぼんやりとした浮遊感を感じる曲調です。ちなみにシュラフはドイツ語で、寝袋を意味します

この記事では、そんな「シュラフ」の魅力を語りつつ、歌詞の意味する世界も考えます。シュラフにくるまった主人公は、何処へ行く

「シュラフ」とは

「オーバードライブ」は、スピッツが1992年に発売した3rdアルバム「惑星のかけら」の収録曲。前曲は、スピッツ初期の名曲「アパート」ですが、その寂しげな余韻を引き継いだバラードが、この「シュラフ」だと感じています。

曲名曲調一般知名度お気に入り度
1シュラフ幻想ダーク
この曲のイメージ

1. 演奏への印象

全体として浮遊感を感じる曲で、まるで夢の霧の中を進むかのようです。私が感じている曲の雰囲気を言語化してみるなら、「夜霧に包まれた世界」という感じですかね。しっとりした暗めの世界の中を、宇宙遊泳するかのような感覚です。

曲の暗めの雰囲気を作っているのは、重低音を響かせるベースですね。そして、特長的なフルートは、その世界を気まぐれに吹き抜ける風でしょうか。または、夜空に美しい輝きを浮かべては、儚く消えていくオーロラとも言えるかもしれません。

リフレインだらけのボーカルも、曲全体の印象をぼかす物だと感じています。他の曲と違い、歌詞やボーカルを追おうとする意識がいつしか薄れ、「シュラフ」の作り出す「寝袋」に包まれて、いつの間にか曲の世界を漂ってしまう自分がいるのです。

曲のイメージ、冷涼な夜空とオーロラ

2. 個人的な想い

この曲は、アルバムの中でも特に個性的な雰囲気を持っていますが、この曲の編曲には、前年に発売した「オーロラになれなかった人のために」に関わった方が加わっているようです。幻想的な雰囲気は、確かにオーロラっぽい雰囲気があります。

「オーロラになれなかった人のために」は、コンセプトアルバムとして、アルバム内に配置された曲同士の関連性やストーリー性を感じるアルバムでしたが、この「シュラフ」も同じ目線で捉えることが出来るかもしれない、と感じています。

「シュラフ」の前曲は、「アパート」ですが、「アパート」は、愛する君を失った主人公の心情を歌う、強い喪失感と悲哀に包まれた曲です。この「シュラフ」を、そんな「アパート」に連なる曲として考えるのも面白いと感じています。

彼の悲しみのイメージ

 

歌詞の世界を考える

ここからは、「シュラフ」の歌詞を追いながら、その歌詞が意味する世界を考えていきます。今回の考察のテーマは、「想い出への逃避」としました。そんな考察を構築するためのトピックとして、以下の2つを準備してみました!

曲解釈はただの妄想であり、他人に押し付ける物ではありません。この曲を楽しむための私なりの妄想というだけですから、ご容赦ください!単純に、こういう話も当てはまるかもな、というだけの妄想です!

シュラフのイメージ

1. 藍色の世界

草野さんの専売特許ではありませんが、スピッツの歌詞での「色」は、何らかの感情と結び付けられていることが多いです。この曲の歌詞では、主人公を囲む世界が、濃い青と表現されていますが、寒色の青は、明るい色とは言えません。

つまり、彼にとっての世界とは、寂しく悲しい物なのでしょう。また、冒頭の歌詞は、あらゆる物が滅亡した荒廃した世界を表現していると解釈することも出来るでしょう。彼は、何らかの事情によって、大きな悲しみを抱えているのです。

彼は、その世界に対して批判的な姿勢を持っているようです。彼が嘘だと断じているのは、その世界の住人からの賢い助言でしょう。立派なご高説も、所詮は戯言に過ぎません。彼は、大切な想い出だけを胸に抱きながら、今日も生きていくのです。

彼が受ける助言は「過去に捉われすぎるな」という類の物かもしれません。しかし、彼はそんな助言を、嘘と一蹴します。彼の心に宿る、美しい想い出の景色を見ることが出来るのは、彼だけです。その美しさを知らない他人からの助言など、彼には戯言も同然なのでしょう。
彼の悲しい世界のイメージ

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2. シュラフ

サビでは、彼がシュラフにくるまり、その世界から抜け出していく様子が歌われています。ただし、彼のスタンスは、能動的ではなく、受動的です。自分で行先を選ぶのではなく、あくまでシュラフに連れて行ってもらうことを願っているのです。

ところで、シュラフとは寝袋ですから、彼が行きたい場所は夢の世界かもしれません。そして勿論、見る夢を自分で選ぶことは出来ません。彼のスタンスが受動的に描かれるのは、その旅が彼には制御できないことを示唆しているのかもしれません。

彼が見たい夢とは、青い世界とは別の、もっと温かい色に包まれた世界の夢。また、シュラフはただのシュラフではなく、不思議とも形容されています。その力は、彼を全てが壊れた青の世界から、大切な何かがある世界へと運んでくれるのでしょう。

この曲を「アパート」と関連付けて考えるならば、主人公の世界が濃い青に染まっているのは、君を失ったからに違いありません。そういえば、「アパート」の世界でも、青色の世界が描かれていました。君を失ってからの彼の青い世界は、その濃度を増したのかもしれませんね。
世界を抜け出すイメージ

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さいごに

この曲のフルートからは、どことなくボヘミアン調を感じています。山崎まさよしさんの「メヌエット」のような雰囲気と言ってもいいかもしれません。その雰囲気も手伝って、この「シュラフ」からは、現世との隔絶感を感じています!

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