「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回ご紹介する「ロビンソン」は、スピッツの6thアルバム「ハチミツ」収録曲で、もはや説明不能なほどの有名曲。80年代生まれの音楽好きで、この曲を知らない人を見つけるのは難しいでしょう。
この記事では、そんな「ロビンソン」の魅力を語りつつ、歌詞の意味を考えます。二人が作り上げる国とは、どんな国でしょうか?
「ロビンソン」とは
「ロビンソン」は、スピッツが1995年にリリースした6thアルバム「ハチミツ」の収録曲。前曲の「あじさい通り」で箸休めをした後にやってくるのが、「ロビンソン」。この曲は、スピッツ史はもちろん、邦楽史にも刻まれた超大作と言えるでしょう。
曲名 | コメント | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | ロビンソン | スピッツの代名詞 |
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「ロビンソン」の印象
「ロビンソン」は、スピッツの代名詞。発売当初、草野さんは地味な「ロビンソン」は売れないと考えていたようですが、予想外のスマッシュヒット。以下では、そんな「スピッツと言えば」という地位まで上り詰めた「ロビンソン」の魅力を語ります!
1. 演奏について
「ロビンソン」の演奏は、草野さん曰く地味。ただ、私自身は「ロビンソン」が地味だと感じたことはありませんでした。また、一般的に考えて、地味な曲が売れるとは思えませんから、世間の人も「ロビンソン」が地味とは考えていないのでしょう。
とは言え、私は「ロビンソン」が派手と感じたこともありません。「ロビンソン」への印象を形容するならば、「凛とした美しさを持つ曲」という感じです。「美しい」だけでは、曲が持つ気高さを表現しきれないと感じています。
草野さんにとっての「地味」という言葉は、ロックバンドっぽいかどうかという基準で測るものなのかもしれません。その点「ロビンソン」は、ロックバンドっぽい曲ではありません。ただし、スピッツらしい曲であるのは間違いありませんね!
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2. ボーカルについて
「ロビンソン」のボーカルの特徴は、なんといってもハイトーン。一般男性で、この曲をまともに歌える人は極めて少ないでしょう。プロの歌手を考えても、原曲のイメージを保って歌うことが出来る歌手は、殆ど思い浮かびません。
勿論、高い声が出せることが歌手技巧の頂点にあるわけではなく、高音発声はあくまで技量の一部のはずです。ただそれでもやはり、この曲を涼しい顔で歌い切る草野さんの実力が脱帽物であることは、万人が認めるところでしょう。
なお、「ロビンソン」はスピッツの代名詞的存在ですから、ライブでも定番曲です。もちろん、ライブでもCDと変わらず、力感のないボーカルが再現されています。また、近年の声質の変化に伴って、ライブ歌唱の方が深みが増していますね!
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3. 歌詞について
「ロビンソン」は、あまりにも身近にありすぎたため強く意識することはありませんでしたが、その歌詞もスピッツらしく美しいものです。私が無意識的に「ロビンソン」に、気高い美しさを重ねていたのも、歌詞の影響が強いのに違いありません。
考えてみれば不思議なことに、今まで一度も「ロビンソン」の歌詞の意味を意識したことはありませんでした。「ロビンソン」は、いつでも「ロビンソン」で、唯一無二。「ロビンソン」は、感じるべきもので、考えるべきものではなかったのです。
これはある意味、「ロビンソン」の歌詞が、一つの究極点に到達している証左かもしれません。ことさら歌詞を強調するまでもなく歌詞は音楽と一つ。そんな印象を持ってるため、人生初のロビンソンの歌詞解釈の試みには、ワクワクする自分がいます。
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歌詞の世界を考える
ここからは、「ロビンソン」の歌詞を見つつ、その歌詞の意味する世界を考えます。今回の考察のテーマは、「癒しの風に包まれて」とします。なお、そんなテーマを補足するためのトピックとして、以下の5つを準備してみました!
曲解釈は私の想像であり、他人に押し付ける物ではありません。ただ、出来る限り想像の根拠が提示できるように、歌詞とリンクさせながら進めていきます。私の想像を楽しんでいただけると、嬉しく思います!
1. 考察の前提
「ロビンソン」の解釈については、多くの方が既に取り組んでいるようですが、今回の解釈では、私が幼き日から感じ続けている美しさと気高さを大切に解釈を進めていきます。ですから、実は怖い話が隠されていた、という解釈は行いません。
さらに、草野さんのコメントも、原則無視します(笑)。せっかくですから、自分の感覚を最優先し、心の赴くままの解釈を考えるのです。それに、草野さんのコメントを参考にしすぎると、既存の解釈と被りがちになってしまいますからね!
ところで、曲の登場人物は、強い絆で結ばれた恋人同士として考えていきます。サビに登場する「二人しか関知できない国」の存在が、その根拠の中心です。片想いの歌と考えるのも面白そうですが、今回は昔からの感覚を優先していきます。
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2. 世界と二人
世界を生きる主人公を照らすのは、かろうじて三日月と呼べる程度の不完全でくすんだ月。ただしその月は、世界の隅で生きる二人の道連れで二人のお気に入り。他の人は歯牙にもかけない月ですが、二人だけはその不完全な月なりの美しさを知っています。
そんな二人と世界の関係は、野良猫と世界の関係に似ています。人間の傲慢な目線で野良猫を眺めたならば、彼らは人間世界から見捨てられた存在のよう。彼らは、安全な家も温かい食事もなく、ただ道端でひっそりと生きるのですから。
二人は、そんな野良猫と似ているのです。つまり、彼らも世界の中心ではなく、光の届きにくい世界の末端で生きているのです。ただし、野良猫が自分たちを不幸とは考えていないように、二人も自分たちがとびっきりに不幸だとは考えてはいません。
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3. 二人の日々
世界は季節の変わり目を迎えていますが、彼は理由も分からず切なさを感じているようです。そして彼は、その切なさを埋め合わせるために、河原を走る君を追いかけていきます。人肌恋しくなるような寒さが、世界を包み始めたのかもしれません。
そんな彼の心の中では、二人の想い出の日々が揺れています。その想い出とは、君と交わした会話の記憶や、些細すぎる小話を含んだ記憶。二人は、些末な出来事にも喜びを見出していますが、それは他人から見れば大げさにも映るでしょう。
ただ彼は、そんな思い出を振り返って、幸せな気分に浸っています。自然と表情も緩みがちになりますが、突然彼を振り返った君の怪訝そうな顔を見て、慌ててしかめっ面を作ります。まるで、落ちていく夕日が眩しいとでも言うかのように。
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4. よくある魔法
世界の中心に住む人の中には、「哀れな二人」に対し、悪意なく高みからの指導をしようとする者もいますし、悪意を込めて二人を蔑む者もいます。これらは、どちらも二人の心をすり減らすものです。結局、二人と世界の価値観は、合致しないのです。
例えば、二人の人が同じタイミングで同じ言葉を口にすること。それは、普通の人からすれば良くあることで、特別な価値などありません。しかし二人にとって、異なる存在である二つの心が完全に重なるのは、魔法のような出来事です。
そして、その種の魔法は、二人の心を強く結びつけます。そして二人は、日々の中でそんな魔法を何度も繰り返し、互いへの信頼をますます深めていきます。二人は、気に掛けるべきことは二人でいることだけ、との想いすら抱き始めました。
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5. ロビンソン
魔法の力で形どられていくのは、世界の干渉が届かない、二人しか関知できない世界。その世界の成立は、二人の意識が本当に大切な物以外に向かなくなること、つまり、二人が憧れた自由な野良猫へと生まれ変わっていくことを意味しています。
生まれ変わった彼にとって一番大切なのは、握った君の手を決して離さずに歩んでいくこと。繋いだ手に感じる温もりは、何よりも大きな力を持って二人の背を押します。世界が何を言おうと、もう二人の心をすり減らすことは出来ません。
気分の高揚した二人は、意味もない鼻歌を口ずさんでしまいます。そして、そんな二人を、全ての悩みを薙ぎ払う宇宙の風が包みます。世界が押し付ける「あるべき姿」を吹き飛ばす癒しの風に乗った二人の心は今、凛とした星空を舞い始めました。
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さいごに
「ロビンソン」PVの内容は、正反対の解釈が出来そうな曖昧な物なのが難しいところです。今回の解釈の方向性では、倒れたままの三輪さんも、宇宙の風に癒されて起き上がり、メンバーに交じって楽しく遊び始めることになるでしょう!