「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「心の底から」は、スピッツが1993年に発売した6thシングル「裸のままで」のカップリングで、お気楽な雰囲気で愛を歌った曲。
以降では、そんな「心の底から」の魅力を語りつつ、歌詞の意味も考察。君との復縁という奇跡を目指して進む青年の物語を考えました!
「心の底から」とは
「心の底から」は、デビューから2年後の1993年に「裸のままで」のカップリングとしてリリースされた楽曲。スピッツが人気バンドとして広く認知される前の楽曲ですね。その後、1999年発売のスペシャルアルバム「花鳥風月」にも収録されました。
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | 心の底から | 軽やか・伸びやか |
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1. 演奏への印象
「心の底から」の演奏は、明るく軽やか。スピッツが売れ筋を狙っていた頃の楽曲ということで、「裸のままで」ともどもポップに振り切っています。イントロや間奏で聴こえる口笛など、一般受けしそうな明るい雰囲気を作ろうという意図を感じますね。
また、「裸のままで」と同様、サックスが煽りを入れるアレンジもいい味を出していますね。また、草野さんのボーカルも伸びやかでいい感じ。少年的な輝きを持ったボーカルは、一般的なスピッツのイメージに忠実だと言えるかもしれません。
ところで、デビュー初期の草野さんに張った高音が持ち味になると助言した方がいたと聞いたことがありますが、曲のサビではまさに伸びやかな高音を感じます。中音域から無理なく高音に繋がる感じは、一人の歌好きとしてぜひ真似したい技術ですね。
2. 個人的な想い
「心の底から」は、曲のアレンジもそうですが、歌詞にも売れ筋を狙う意図が感じられます。初期のスピッツの楽曲には独特の世界が広がると同時に、やや攻撃的な歌詞も見られることがありますが、この「心の底から」は明るく平和な感じですね。
サビの歌詞がストレートであるため、曲の中心にあるメッセージは分かりやすいですが、細かい部分は草野さん節で婉曲的です。ただ、演奏も含め全体的にポジティブな感じは伝わりますし、歌詞はひとまず、まずは雰囲気を楽しむ曲という感覚もあります。
ところで、この曲のCDジャケットは、思わず二度見してしまう衝撃的デザインですね。スピッツ高校の楽しかった修学旅行のスナップ写真を切り貼りした的な感じでビックリしました。ただ、卒業アルバムの写真ページ的な感じで結構好きです(笑)
歌詞の世界を考える
ここからは、「心の底から」の歌詞を追いながら、歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「何があっても」としました。また、そのテーマを補足するために、以下の4つのトピックを準備してみました!
解釈は私の感想に過ぎず、全くもって他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、私の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスをまとめています!
1. 考察の前提
曲には、主人公と君の二人が登場します。彼が君を愛しているのはサビの内容から明らかです。ただ同時に、平凡ながら幸せだった二人の日々は今は失われていて、彼はそれを取り戻すという奇跡を起こすために日々奮闘しているということも分かります。
演奏の明るい雰囲気をブラフと考えることも出来ますが、私はそれを素直に受け取り、物語は明るい結末を迎える可能性があるとします。勿論、君は亡くなっていませんし、二人は今は離れ離れですが、再び一緒になる可能性もあるということです。
今回の解釈では、曲開始以前に彼が君に振られてしまったとします。ただ君を諦めきれない彼は、清濁問わぬありとあらゆる力を総動員して、奇跡を起こそうとするのです。以降では、君を取り戻すために全身全霊の努力を続ける青年の物語を考えます!
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2. いざゆけ
ちょっとくらいの失敗がなんだ。彼は昨日の失望を思い返しながらも、ずんずんと歩き続けていました。まだまだへこたれるわけにはいきません。こんな時だからこそ、意識的に前向きになるべき。彼は、大げさな身振り手振りで歩みを進めていました。
君に振られたあの日以来、彼は君との復縁を果たすため、全力を尽くしてきました。何があろうと必ず、君と一緒の平凡だけれど幸せな日々を取り戻すのです。今のところ目に見える成果は上がってはいませんが、彼に諦めるつもりは毛頭ないのでした。
失敗続きの日々でも、落ち込む必要などないのです。失望感や疲れは、いずれ帰ってくる君との日々に近づいている証だと思うべきでしょう。こうやって失敗を積み重ねた先に、必ず望む日々が待っている。今は目に見えずとも、そうに違いありません。
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3. まだまだ
君との日々の奪回を目指して歩き始めてから、それなりの時間が経っていました。ただ相変わらず希望は見えぬまま。さらに、近頃は前に進むことも難しくなってきました。もしかしたら、ここまで勢いよく進んできた疲れが出てきたのかもしれません。
のたうちまわる彼の周りを、いつの間にか高い柵が取り囲んでいました。ただそれでも、小さく平凡でも美しく咲く君との日々を取り戻すため、あの柵を飛び越えていかなくてはなりません。体が動かぬならば、せめて心だけでも柵の彼方へ飛ばすのです。
全身の疲労が見せる幻影なのか、彼の脳裏には全ての終わりもチラつき始めています。思わず涙も零れ落ちますが、きっと大丈夫です。涙は彼の力になるはずですし、諦めずに千の夜を越えて星々の力を集めれば、空想は現実に変わってくれるはずです。
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4. 心の底から
誰が何と言おうと、彼は君との日々を取り戻すという奇跡を諦めることはありません。人が見れば、彼は現実を受け入れずに空想の中で生きているように見えるのでしょう。それも、ただの空想ではなく、それこそ天まで届くような大ぼらの中で。
ただしその大ぼらは、結局は何物にも勝る力を持っているのです。だからこそ、奇跡へと続く道がどれほど悪路でも、時に疲れて弱気になっても、彼は何度でも歩き出すことが出来るでしょう。心からの君への愛がある限り、彼は決して負けないのです。
考えてみれば、君も彼を待っているはず。何せ運命の二人なのですから、今はつれないフリをしていても、やがて心の扉を開けて再び彼を受け入れてくれるでしょう。その日まで、彼はこれからもこの道を歩き続けます。心の底からの愛を胸に抱いて!
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さいごに
2番には赤い海の描写がありますが、芥川龍之介氏の「蜘蛛の糸」を連想する自分もいました。思えば、デビューアルバムの収録曲「ビー玉」にも同様の描写がありましたね。今回は深刻な意味では捉えませんでしたが、貴方はどう感じましたか?