「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「スピカ」は、スピッツが1998年に発売した19thシングル。スピカはラテン語の言葉で、おとめ座の星を指し、「麦の穂」という意味もあるようです。「豊かさ」と結びつく、優しい言葉ですね。
以降では、そんな「スピカ」の魅力を語りつつ、歌詞の意味も考察。辛いこともある日々を、愛の力で越える青年の物語を考えました!
「スピカ」とは
「スピカ」は、1998年に「楓」とのペアでリリースされた19thシングル。オリジナルアルバム「フェイクファー」に収録されうる時期に完成したものの収録は見送られ、代わりに1999年に発売されたスペシャルアルバム「花鳥風月」に収録されました。
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | スピカ | 穏やかで優しい |
---|
1. 演奏への印象
「スピカ」は、温かい雰囲気を中心として、綺麗に纏まった曲だと感じています。これは、「フェイクファー」の時期のスピッツ曲の多くに共通する特徴だと感じますが、「スピカ」ではハモリが多用されるため、中でも優し気な雰囲気を感じますね。
ただ、そんな「スピカ」には尖った部分もあります。イントロやCメロのギターも不協和音に近いものですし、サビでのシンバルの多用も珍しい気がします。適度にアクセントをつけるという感じではなく、とにかく叩きまくるという感じに聴こえますね。
また、心地よい重低音を響かせて動き回るベースも、気になる演奏の一つです。「スピカ」が持つ温かな雰囲気の土台を作るのは、このベースプレイかもしれませんね。そんな「スピカ」は、聴いていると優しい気持ちになる一曲だと感じています。
2. 個人的な想い
アルバム「花鳥風月」での前曲「愛のしるし」に続いて、この曲も私がスピッツファンになる前から知っていた曲の一つ。サビを聴いたとき、「あ、この曲知ってる」となりました。ただ、私がどうしてこの曲を知っていたのかは、定かな記憶がありません。
椎名林檎さんがカバーしていることは後から知りましたし、親がスピッツを聴いていたわけでもありません。偶然テレビで聴いて、覚えていたのかもしれません。「スピカ」のサビは、草野さんの本領発揮ともいえるキャッチーさがウリですものね。
そんな「スピカ」は、私的には特別な感覚が結びついた曲。歌詞解釈以前に、音楽全体から感じる、言語化しきれない不思議な感覚が先行する感じです。歌詞は愛の歌のソレだと分かりますが、私としては人生応援歌という顔の方を強く感じていますね。
歌詞の世界を考える
ここからは、「スピカ」の歌詞を追いながら、歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「自分次第で世界は変わる」としました。また、そのテーマを補足するために、以下の4つのトピックを準備してみました!
解釈は私の感想に過ぎず、全くもって他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、私の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスをまとめています!
1. 考察の前提
主人公は世界の隅で生きる日陰者。そんな彼ですから、人生で困難に直面することもあり、彼が直面する試練が「坂」という形で表されているとします。また、冒頭の坂道に「も」という助詞が続くことは、彼の日々に坂が複数ある示唆と考えました。
歌詞には彼が心寄せる君が登場しますが、二人の関係は互いに憎からず想う、初々しいカップルとします。その関係はまだ微糖風味で丁寧に目をかけなくては壊れてしまうでしょうが、彼にとってはその恋が全てであり、その恋を「夢」と呼ぶのです。
ところで、1番サビ直前の描写は、彼のとも君のとも取れる微妙なもの。ただ、サビでは彼が臆病を捨てて君に向き合おうとする歌詞があるため、サビ直前の行動派の描写は君の性格描写であり、彼はそんな君とは対照的な、奥手な性格として考えます。
(一覧に戻る)
2. あと少し
彼の人生には、色々な困難が列をなして訪れます。ただ近頃の彼は、そうしてやってくる試練たちを、一つずつ乗り越えてきました。ここ暫らくの間上り続けて来たこの坂道も、少しずつ傾斜が緩やかになってきました。どうやら、頂上が近いようです。
日陰に生まれついた人は、弱さを払うことは出来ないという人もいます。ただこの頃は、そんな悲観的な考えが彼を悩ませることは少なくなっていました。日陰者の彼がこの坂を上り切った暁には、そんな考えは大ぼらだったと言い切れるでしょう。
頂上の気配に浮かれた彼は、大好きな春に思いを馳せていました。温かな日差し、爽やかな風、土の匂いと小鳥たちの囀り。そして何より、春が来ればあの星も夜空で輝くのです。優しく控えめに輝くスピカ。豊穣の女神として優しく微笑むあの星が。
(一覧に戻る)
3. 優しい世界
この世界が一つの物語を紡いでいるとしても、自分には物語の中心で輝く役は回ってこないでしょう。彼に何かしらの役が与えられるとしても、それはせいぜい主人公を引き立てる脇役。賢い主人公とは対照的な、愚かな役まわりがいいところでしょう。
かつての彼には、そんな日陰者の自分は幸せとは縁遠いとする投げやりな心がありました。しかし今振り返ってみれば、本当の問題は世界を斜めに見る彼の姿勢にあったと分かります。心を開いたことで、日陰者の彼も温もりに手が届いたのですから。
世界は結局、自分の心を映す鏡。かつての投げやりな彼が世界で見たのは曇天ばかりでしたが、徐々に前向きになった彼は君を見つけることが出来たのです。そして、君が隣にいてくれるならば、彼は日陰者のままでも笑顔を繋いでいけるでしょう。
(一覧に戻る)
4. スピカ
愛は、胸で輝いて高揚感に変わるかと思えば、妙に真面目な形を取って切ない涙も呼ぶ奇妙なもの。愛があるからと言って、いつも幸せとはいきません。ただ、それでも愛を信じ続けるなら、その純なる想いは何度でも新たな幸せを生み出すでしょう。
二人の間に生まれた愛は、まだ芽吹いたばかりの脆いもの。しかし、その愛を大切に慈しむならば、やがて大きく花開くに違いありません。一見、目移りするものが多い世界に思えても、結局、二人の未来を育てることが彼にとっての全てでした。
いつも直球勝負な君にはドギマギさせられっぱなし。ただ、あの嘘が消えかけた今ならば、少しだけ大胆に君の眼差しを受け止められそうです。彼はそんな半歩を繰り返し、愛を育てるつもりです。いつか二人の間に、豊かな愛が実るその日まで。
(一覧に戻る)
さいごに
「スピカ」の歌詞では、2番サビ直前が一番好きです。人を呪わば穴二つではないですが、自分の心持次第で世界の見え方は異なるのです。だからこそ、たとえ空元気気味でも前向きに生きたいと思います。そうすればきっと、実りが訪れるはずですから!