「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「鳥になって」は、スピッツのデビュー前から演奏されていた曲の一つ。なお、メジャーデビュー後の1991年には、3rdシングル「魔女旅に出る」のカップリングとしてリリースされていますね。
以降では、そんな「鳥になって」の魅力を語りつつ、歌詞の意味も考察。実際には行動せず、妄想の中で生きる青年の物語を考えました!
「鳥になって」とは
「鳥になって」は、スピッツがデビュー前、パンクバンド時代から演奏していた楽曲。デビュー後に2ndアルバム「名前をつけてやる」への収録が検討されましたが見送りとなり、1999年発売のスペシャルアルバム「花鳥風月」に収録されました。
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | 鳥になって | 軽快ロック |
---|
1. 演奏への印象
「鳥になって」の演奏は、全体的に明るい印象を受けます。鳥になって大空を舞う開放感とも繋がりますね。テンポはさほど速くありませんが、ドラムが気になっています。乾いた音色が心地よいですし、サビ前などの連打はカッコいいですね。
また、ギターの演奏も気になります。間奏のギターソロは野太くてカッコいいです。ライブ版のアレンジもカッコいですね。また、実は結構忙しいベースプレイにも注目ですね。サビの中間地点の「デデッ・デデッ」というベースが特にカッコいいです。
ところで、「花鳥風月」に収録の「鳥になって」はデビュー後の再録版とのことで、ボーカルにパンク的な雰囲気は殆どなく、スピッツ初期の少年的なキラキラ感に溢れています。ただ、イントロ等で「oh」を繰り返す部分は、強さと深みも感じますね。
2. 個人的な想い
デビュー前の曲の多くはあまり聴く機会がありませんが、この「鳥になって」は別。それは、私がスピッツを好きになったきっかけのアルバム「とげまる」ツアーで演奏されたからです。特別なライブで演奏されれば、その印象も深くなろうというものです。
ライブが行われたのは2011年、CD版のボーカルが収録されたのは1991年頃ですから、二つのテイクには約20年の年月差が。長い年月を経て草野さんの声質も変化していますからかなり違う感じに聴こえますが、どちらのバージョンもいいですね。
ところで、多くのスピッツ初期の曲に言えますが、この曲もスピッツの中では歌いやすい曲に分類されると言えるでしょう。ただ、それでも原曲の雰囲気の再現を狙うなら、やはりミックスボイスが必要。ミックスボイスの練習曲としてもおススメですね。
歌詞の世界を考える
ここからは、「鳥になって」の歌詞を追いながら、歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「妄想の中で」としました。また、そのテーマを補足するために、以下の3つのトピックを準備してみました!
解釈は私の感想に過ぎず、全くもって他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、私の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスをまとめています!
1. 考察の前提
鳥は自由に大空を駆ける存在ですから、曲中での鳥は希望の光など前向きな要素の象徴とします。また、曲中には主人公と君が登場しますが、鳥になるのは君。このことから、彼にとって君は希望の象徴であり、恋焦がれている憧れの存在としました。
ところで、2番メロで彼が誇りを語る場面からは、彼は自分が世界から高評価を受ける存在ではないと認識していると分かります。また、彼が汚れた場所に住んでいるのも、彼の冴えない現実の示唆でしょう。ただ彼は、そんな自分が嫌いではないのです。
1番メロでは、彼が君にぶら下がっている描写があります。今回はこれを、二人が親密な関係にあるということではなく、君に精神的に依存する未熟な彼の姿勢を示すと考えました。そこで、二人の関係は知り合い程度で、彼は君へ片思いしているとします。
(一覧に戻る)
2. 妄想で飛べ
こんな世界ではなく、もっと素敵な世界で生きていたい。彼はいつも、そう考えていました。ただ、自分を客観視すれば、残念ながら力不足と言わざるを得ません。とてもではありませんが、独力で今の逆境を切り拓くことは出来そうにないのでした。
しかし、心配は無用です。彼には、とっておきの希望があるのですから。彼が望みをかける希望の光とは、最近出会って一目ぼれした君。まだそれほど話したことはありませんが、明るい輝きを放つ君は、彼にはとても眩しく思える存在でした。
君を思い浮かべると、君は彼の心の中で舞い始めます。すると彼は、自分を取り囲む冴えない現実を忘れ、高揚した気分になるのでした。彼を暗色から引き上げ、鮮やかな青の中に連れ出してくれる君は、彼にとっては鳥。大空を楽し気に舞う鳥でした。
(一覧に戻る)
3. 鳥になって
自分は、世界が自分に張り付けたレッテル通りの愚か者ではない。彼は、密かに自分に誇りを持っていました。ただ、それをアピールするのは彼の流儀ではありません。彼は、君が自分に興味を持ち、君から動いて自分を知ってほしいと思っているのでした。
ただ彼は近頃、冷静な自分の声が大きくなってきたような気がしていました。矢面に立つことを恐れて隠れては都合の良い妄想に逃げ、冴えない現状から目を背ける自分。彼の中には、そんな臆病な生き方を批判する、もう一人の自分がいるのでした。
出る杭となる覚悟を決めて、現状を変える。今の彼には、それが正しそうだとは分かりましたが、まだそこまで思い切ったことは出来そうにありません。だから彼は今日はまだ、この妄想を続けるつもりです。鳥の君頼みの、楽しい夢物語の妄想を。
(一覧に戻る)
さいごに
この曲の成り立ちを考えると、曲の結末はさほど深刻なものだったり、説教臭くはならないでしょう。イメージ的には、「明日になったら本気出す」を毎日繰り返す青年の物語といった感じですね。まぁ、そんな青き日々もアリではないでしょうか。