「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「あじさい通り」は、スピッツの6thアルバム「ハチミツ」の収録曲で、耳馴染みの良いどこかホッとする楽曲。ある意味では、この「ハチミツ」というアルバムでの休憩ポイントのようでもあります。
この記事では、そんな「あじさい通り」の魅力を語り、歌詞の意味も考察します。通りに降り続く雨は、果たして上がるでしょうか?
「あじさい通り」とは
「あじさい通り」は、1995年にスピッツが発売した6thアルバム「ハチミツ」の収録曲。前曲の「トンガリ’95」はスピッツのロック魂を感じる主張の強い曲でしたが、この「あじさい通り」は、少し陰の雰囲気を感じる落ち着いた雨降りソングです。
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | あじさい通り | やや陰・まったり |
---|
1. 演奏への印象
「あじさい通り」は、全体的には悲し気な雰囲気を感じますが、妙な打たれ強さも感じています。また、この曲は雨の情景が想起される曲ですが、シトシトより少し強い程度の弱めの雨がしっくり来ます。雨で視界が霞がかった情景もイメージされます。
メロのバックで規則的なリズムを刻む、どこか飄々とした音色のギターからは、変化なく降り続く雨を、メロで聞き取れる木琴のような音には幻想的な雰囲気を感じています。それは、幻の中にいるかのような感覚で、雨で曇った世界を感じさせます。
また、長い後奏はフェードアウトかと思いきや、実はしっかり終わっています。また、後奏は、草野さんのコーラスが入って少し雰囲気が軽くなります。これらから、雨の世界が終わりを迎え、微かに光が差しこむような未来の到来を感じています。
2. 個人的な想い
「あじさい通り」には、前作アルバムの収録曲「ヘチマの花」と似たイメージを持っています。両曲ともに、完成度の高いアルバムの中での箸休め的な役割の曲ですし、曲調がバラード寄りということが影響しているでしょう。
ところで、この曲はアルバム内で異質な雰囲気を放っています。ここまで完成度の高い曲が続いたので、それら曲の魅力を全身で浴びようと気が張り、聞き疲れ的な感覚があったかもしれませんが、この曲はサラッと聞き流すことが出来るでしょう。
これは、単純に「あじさい通り」が好みではないという意味に聴こえるかもしれませんが、そういうことでもありません。確かに曲単体としては、そこまでお気に入りとは言えませんが、アルバムの流れの中では、必要な1ピースだと感じているのです。
歌詞の世界を考える
ここからは、「あじさい通り」の歌詞を追いながら、その歌詞が意味する世界を考えていきます。今回の考察のテーマは、「雨雲の切れ間を探して」としました。そんな考察のテーマを補足するトピックとして、以下の3つを準備しました!
曲解釈は私の想像であり、他人に押し付ける物ではありません。ただ、出来る限り想像の根拠が提示できるように、歌詞とリンクさせながら進めていきます。私の想像を楽しんでいただけると、嬉しく思います!
1. 欺瞞の日々
1番の歌詞を見れば、曲の主人公の生活が満足いくものではなかったことは明らかです。そこでは、彼がいつも嘲笑の対象であり続けてきたことが示されていますし、そんな彼の日々は、彼をしてすっきりしない日々だったとされているのです。
そんな嘲笑の日々を過ごした彼は、いつしか人を信じることを止めったようです。2番のメロでは、信じることは愚かだと考える彼の心が明かされています。ただし彼は、そう自分に言い聞かせていたともありますから、本当は人を信じたかったのです。
人を信じることは愚かなこと。そう思い込もうとする彼の心には迷いがありましたし、本心では、それが自分に嘘をつくことであると分かっていました。しかし、届かぬ物を求めて、何になるでしょうか。彼は、欺瞞に身を投じるしかなかったのです。
(一覧に戻る)
2. 君がくれた光
そんな日々の中、彼は君と出会います。彼は、君と形式的な会話を少し交わしただけで、君の名前すら知りませんが、すぐに君に親しみを込めて「あの娘」と呼び、特別な意識を向け始めます。礼節を伴った会話など、彼の日々には久しく無かったのです。
彼は、自分が君に対して抱いている感情は、愛と形容するのは適当ではないと感じているようです。これは、彼がそれまでずっと、嘲笑を受ける日陰の日々を送ってきたからでしょう。純なる気持ちを抱くには、彼は少し捻くれすぎてしまいました。
だから彼は、愛という照れくさい物ではなく、もっと軽い何かとしてその気持ちを捉えています。ただし、その軽さの中に最上級の真面目さを込めて、です。そして、彼の捉え方はともかく、客観的に見た彼の想いは、恋心と言う希望の光そのものです。
(一覧に戻る)
3. あじさい通り
君と出会うまでの彼は、生きているようで生きていませんでした。それは、彼がただ悲嘆の涙にくれるばかりで、誰にも心を開かなかったから。しかし彼は今や、君に心を開き、彼の人生を生き始めました。涙の日々など、もう忘れるべきなのです。
彼は、心を閉ざしていた頃には分からなかった、「今」を認識しています。今の彼は、雨が降ることだけが、「あじさい通り」で起こっている全てではないと気づいています。心を開いたことで、空っぽだった彼の胸に、初めての夢すら生まれました。
その夢とは、「あじさい通り」の雨が上がり、彼の恋心が君に届くこと。普通に時が流れればありそうもないことですが、予定調和からはみ出すことも出来るはずです。そう願う彼は、不慣れな恋にアタフタしつつも自分なりの花を携え、君を想うのです。
(一覧に戻る)
さいごに
嘲笑をその身に受け続けてきた主人公。そんな彼も、君から貰った何気ない光を胸に抱き、涙に濡れた日々と決別して世界の今を生き始めます。運命に身を委ねるのではなく、自ら切り開く気概を持つ。そんな覚悟を、持ちたいものですね!