スピッツの曲

スピッツの「ありがとさん」の感想。「日々の象徴」を軸に、歌詞の意味も考察

「ありがとさん」に感じる愛と感謝のイメージ
こんな記事

「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。

今回の「ありがとさん」は、スピッツの16thアルバム「見っけ」の収録曲。草野さんから歌詞解釈が明かされている珍しい一曲ですね。

この記事では、そんな「ありがとさん」の魅力を語りつつ、歌詞も考察します。悲しい別れを迎えた二人の日々を象徴するものは、一体?

「ありがとさん」とは

「ありがとさん」は、スピッツが2019年に発売した16thアルバム「見っけ」の収録曲です。前曲の「優しいあの子」は温かい光を感じるラブソングでしたが、この「ありがとさん」はどこかノスタルジックな色彩を含んだラブソングですね。

曲名曲調一般知名度お気に入り度
1ありがとさん涙と温もり
「ありがとさん」に感じる世界のイメージ

1. 演奏への印象

「ありがとさん」の演奏には、セピア色の世界を感じています。ゆったりとしたテンポの曲ですが、心安らぐ感じと言うよりはしみじみと想い出に浸るような雰囲気ですね。その歌詞の影響から、切なさと温もりが入り混じったオーラを感じています。

個人的に演奏で特に気になるのが、同じ音を同じテンポで繰り返すピアノ。作曲者である草野さんご自身が、この曲は「亡くなった方の目線」を意識していると匂わせていることもあって、このピアノの音色に木魚の音を重ねてしまう自分がいます。

また、「ありがとさん」は、サビとメロの区分がやや曖昧な楽曲ですね。個人的には、サビとメロが分かれた起伏のある曲の方が聞きなれていますが、どこか洋楽的とも言える気もしました。洋楽にはサビの概念がないと言われることもありますからね。

「ありがとさん」に感じるセピア色のイメージ

2. 個人的な想い

「ありがとさん」は、草野さんの種明かしを考えると、悲し気なトーンを含んだ曲と言えるでしょう。ただ私はこの曲に、悲し気な感情よりも感謝の念の方を強く感じています。タイトルからも、照れ隠し気味の感謝がその中心にあるのは明白ですね。

歌詞中では明確に別れが示されていますし、草野さんの種明かしを加味して考えれば、その別れは永遠の別れを指していると考えることが出来るでしょう。ただその理解のうえでも、私が「ありがとさん」に感じるのは、悲しみを上回る温もりです。

そして、茶化した感じのタイトルと歌詞の純情が、その温もりの中心にあります。生命の終焉というテーマが放つ色は、その描かれ方次第。そして、「ありがとさん」で描かれる感謝には迷いの色がなく、それが曲が持つ純心を強調していると感じます。

曲に感じるセピア色の雰囲気

 

歌詞の世界を考える

ここからは、「ありがとさん」の歌詞を追いながら、その歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「二人の日々を飾るのは」としました。また、その考察テーマを補足するため、以下の4つのトピックを準備してみました!

解釈は私の感想の言語化であり、他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、独自の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスまとめています

二人の日々の象徴である愛のイメージ

1. 考察の前提

「ありがとさん」は、幽霊目線で歌われた曲だと示唆されています。個人的には、その設定に違和感を感じないため、その設定を採用して解釈します。つまり歌詞では、先に旅立った主人公の現世に残してきた最愛の人への想いが歌われているとします。

この前提を怪しくする歌詞があるとすれば、それは2番のサビ。主人公が既に幽霊になっているなら、幽霊になることを未来形で語るのは違和感があるからです。ただこの疑義は、この部分は生前の彼の冗談めいた願いだった、とすれば解決できます。

ところで彼は、想定外の事態でで急に天に召されてしまったよう。本当ならば長い間一緒に過ごすはずだったのに、二人の時間は短いものでした。そして彼は、悲しみの涙をこぼしつも、その悲しみで二人の日々を集約したくないと感じているとします。

彼にとって、二人の日々は悲しみの涙ではなく温かな感情で象徴されるべきもの。だからこそ彼は、感謝の言葉を君へ投げるのです。また、二人の人物像は、やや気まぐれな君と、君に夢中の純粋な彼とします。以降では、二人の日々を振り返る幽霊となった青年の物語を考えます!
彼が君に向ける愛情と感謝のイメージ

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2. 早すぎた成就

長い間を、いや一生を共にするはずだった、心通わせた二人。しかし、そんな二人の日々は、想像よりずっと早く終焉を迎えました。彼はこんな結末は望んでいませんでしたが、もはや詮無きこと。大きな定めを前にして、彼と言う存在は無力でした。

そう、何の気まぐれなのか急に天が彼に手招きして、彼を呼びよせたのでした。旅立ちの準備も出来ぬまま、あっという間に引き寄せられた彼。一緒に過ごしてきた大切で愛しい君に、何のお別れを告げることも出来ず、君をただ現世に置き去りにして。

ただ天も、自身の都合で彼を振り回したことに、多少の罪悪感を感じていたのでしょう。天は彼に、その慈悲を分け与えてくれました。生前の彼が冗談めかしつつ秘かに望んだ、自身の肉体が滅びた後も、君を想い続けるという願いを叶えることで。

彼は、天へと召されて肉体は失ったものの、まだ自我を保っていました。そう、今の彼は幽霊となったのでした。確かに生前から、彼は幽霊になってでも君に感謝を伝え続けたいと願っていて、天はそれを叶えてくれたのでした。その願いを叶えるのが、あまりに早すぎたとしても。
幽霊となった彼のイメージ

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3. 愛おしい日々

思えば、気まぐれな所があった君は、理由もなくピリピリしているときもありました。そんな君にイラついたこともありましたが、それも今や昔。二人の日常は当然、些細な喧嘩もまた、感情の交流。彼が二度と味わえない、愛おしいやり取りでした。

振り返れば、二人の日々はそれなりに短いものだった気がします。しかし、一緒にいた時間と育まれる絆が、強い相関を持たないこともあります。実際、二人の絆はこの上ないほどに強まり、彼にとっての君は何よりも重要な存在となったのですから。

そして二人は、二人一緒の幸せな未来を信じていました。その幸せな未来への歩み方に関しては、それぞれに描いた地図は異なりましたがそこに問題などはなく、むしろ二人の夢を重ねて、ああだこうだと議論する度、幸せに近づく心地がしたものでした。

君と二人で、それぞれに異なる夢を投げ合う日々は、彼にとって何よりの喜びでした。そして、君から投げ返される予想外のボールを確認する度、彼は自分の夢に新たな計画を書き加えたのでした。自分だけではとても思いつかなかった驚きを、二人で一緒に味わうことが出来るよう。
彼が計画を修正、書き加えるイメージ

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4. ありがとさん

今、二人で描いた全ての夢は水泡と帰しました。将来を夢見ていた二人からすれば、この別れはあまりにも唐突で、早すぎるもの。天命は不可避だと分かっていながら、彼は未だに君の温もりに触れることが出来ない日々を寒々しく感じるのでした。

思い残すことがないなどと言えるはずもありません。夢見ていた未来が消え去った悲しみは彼の心を覆い、幽霊になった彼の頬にも涙が零れ落ちます。ただ彼は涙を拭い、何とか笑顔を作るのでした。あの日々の結晶は、断じて涙などではないのです。

二人の夢は既に煙となって消え去りましたが、何物にも代えがたいあの日々を悲しみの涙で湿らせるべきではないのです。だから彼は今日も、あの日々の証とすべき言葉を、君に向かって投げるのでした。素敵な日々を、本当に「ありがとさん」と。

私にとっての「ありがとさん」は、大切な君と二人で幸せな未来を描くことを夢見ていた青年が、唐突に天に招かれて幽霊となり、現世に残してきた大切な君へ、溢れんばかりの感謝の念を投げる物語。歌詞のテーマは悲しいですが、曲に感じる雰囲気は温かく優しいと感じています!
彼が伝える「ありがとさん」のイメージ

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さいごに

歌詞では、「涙」と「言葉」が対照的に描かれ、それぞれ「悲しみ」と「温もり」を象徴していると感じています。二人の日々が悲しい別れを迎えても、その日々の全てが悲しみに包まれるわけではないのです。その輝きは、ずっと胸に残るのですから。

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