「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「快速」は、スピッツの16thアルバム「見っけ」の収録曲。どこかミステリアスな高揚感を感じる、個人的イチオシの一曲です。
この記事では、そんな「快速」の魅力を語りつつ、歌詞も考察。今回は、本気になって全力を尽くし始めた快速列車の物語を考えました!
「快速」とは
「快速」は、スピッツが2019年に発売した16thアルバム「見っけ」の収録曲です。前曲の「ブービー」は悲しげでも穏やかでもある不思議な一曲でしたが、「快速」は星空の下を快調に走り抜ける列車が想起される、高揚感を感じる一曲ですね。
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | 快速 | 幻想的な高揚感 |
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1. 演奏への印象
「快速」は、星空の魔法と高揚感を感じる一曲です。内容のリンクは一切ありませんが、その外形的なイメージは、スピッツ版「銀河鉄道の夜」だと感じています。煌びやかな光で照らされた街を抜けて、星空の下を駆ける列車が浮かんで来ますね。
魔法的な雰囲気を一番強く感じるのは、そのイントロです。オーロラが広がるようなフワっとしたキーボード音と、闇の果てを輝く瞳で見つめるような美しいギターの音色。出だしから、この「快速」に独特の世界が広がっていることは明らかですね。
そして、独特の世界に溢れる躍動感もまた、「快速」の最重要要素の一つ。個人的に、AメロとBメロを繋ぐ「ジャン・ジャン・ジャーン」というギターの煽りが大好きです。また、中間の多重コーラスも美しく、夜風を切る高揚感を感じています。

2. 個人的な想い
「快速」には、魔法の時間を感じています。そんな「快速」は、ある意味では初期スピッツの作風に連なるものを感じています。歌詞は特段幻想的ではないのですが、演奏の雰囲気に引っ張られ、列車が夜空に舞い上がるような魔法を感じるのですね。
また、「快速」というタイトルの曲ですが、テンポはさほど速くありません。強い躍動感も感じますが、それは疾走感とは少し違う気がします。どちらかと言うと、美しい星空の下を走る胸の高鳴り、高揚感を感じるといった方が私の感覚に近いですね。
ところで「快速」は、サビらしいサビがないというべきか、全編サビと言うべきか。いずれにしても、始めから終わりまで最高のメロディーですね。あっという間に駆け抜けていく演奏時間の短さも、どこか幻想的な雰囲気を強めていると感じます!

歌詞の世界を考える
ここからは、「快速」の歌詞を追いながら、その歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「全力を出せば、自ずと輝く」としました。また、その考察テーマを補足するため、以下の4つのトピックを準備してみました!
解釈は私の感想の言語化であり、他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、独自の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスをまとめています!

1. 考察の前提
私は「快速」の主人公は、森の先の世界を目指す列車そのものだと感じています。また、私にとっての「快速」は、高嶺の花の君に憧れる恋の歌ではなく、劣等感で身を縮めて来た主人公による、「自己開放」と「挑戦の歌」という感覚があります。
また、主人公たる列車、即ち「彼」は旧式の列車だと感じます。ライバル的に存在として流線形の列車が登場するところに、スペック評価の対比をする意図を感じるからです。彼はスポットライトから外れた存在であり、エリートではないのです。
彼が抜け出す街は、エリートではない彼が身を縮めて生きる場所。そして、そんな彼が目指す森の先には、そんな彼も羽を伸ばせる世界が広がっているとします。以降では、街と森の先はそれぞれ、「身の程の世界」と「魔法の世界」の象徴と考えます。

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2. 森を越えて
この煌びやかな街を抜け出して、君から聞いたあの森の先へ。彼は、夕闇に包まれた世界の中を走り出しました。少し錆の残る体が、軋んだ音を立てますが、それは無理もないことでしょう。彼はしばらく、身を縮めて眠りについていたのですから。
彼は、はやる気持ちを感じながらもゆっくり速度を上げていきます。そんな彼の脳裏には、この街を席巻するアイツらの姿が浮かびました。滑るように走るアイツらと比べれば、彼の走りは無様。だからこそ彼は、走るのを止めてしまっていたのでした。
彼の視界の隅では、街の光が鮮明に輝いています。もしアイツのように走ったら、この光も線となって流れるのでしょうか。そう思うとやはり、自分の至らなさを感じるのは否定できません。ただ彼はもう、だからと言って俯くつもりはないのでした。

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3. 高まる速度
日も落ち始め、世界のムードも高まっていきます。レールの継ぎ目を渡る音も心地よいリズムを刻み、久しぶりの高揚感に伴奏を付けてくれるかのよう。何だか、不思議な力が体にギュッと集まり、彼を阻んでいた限界の扉すら開けるような気がしました。
出来の良すぎるアイツらに勝手に打ちのめされ、身を縮めていた日々。そして、錆びついてしまった体と、失ってしまった推進力。しかし、この高揚感を燃やして走れば、失った全てを取り返し、史上最高の自分になることが出来る気がするのでした。
実際、彼の速度は既につり革を驚かすのには十分な速度に達していました。そして、彼のピークはまだまだこれから。アイツらに負けない速度も、これから出るかもしれません。彼は、そんな根拠のない前向きさを、更なる推進力に変えるのでした。

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4. 快速
勝手に怖気づいて身を退いた日々は、既に過去。逃げる自分を正当化する不安定な言い訳、自分は自分という建前で作られた甘えた独自性の盾も、もはや不要です。彼は今、錆びついていた本当の独自性、「快速」としての気概を取り戻したのでした。
彼の心には今、ムクムクと負けん気が広がっていました。流線形、何するものぞ。そう本当は、彼はアイツらと競いたかったのです。そして、それを身分不相応の願いだと考える自分は、もういません。彼の気分はまさに、向かう所敵なしでした。
闇夜を駆ける今の彼は、アイツの速度を上回るのは当然、草原で躍動するインパラと同等のエナジーを放つ存在であり、そんな彼は魔法の森の先で多くの同志に出会えるはずです。ああ、遠くに森が見えてきました。魔法の世界も、もうすぐです!

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さいごに
個人的に、主人公は蒸気機関車だと感じる部分もありました。ただそうすると、「快速」というタイトルと少しぶつかる気もして、旧式の列車という解釈に落ち着きました。いずれにせよ、彼は圧倒的ライバルに挑み、ただ全力を尽くすのです!