スピッツの曲

スピッツの「Y」の魅力を語る。歌詞の物語の中心にあるのは希望?

スピッツのYの暗い面を表したイメージ
こんな記事

「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。

今回の「Yは、スピッツの6thアルバム「ハチミツ」の収録曲です。静かな雰囲気から始まるラブバラードですが、サビでは光の世界が開けるような感覚があり、優しい希望の歌という感覚もあります。

この記事では、そんな「Y」の魅力を語り、歌詞の意味も考察します。この曲における「鳥」とは、いったい何を象徴するのでしょうか?

「Y」とは

「Y」は、スピッツが1995年にリリースした6thアルバム「ハチミツ」の収録曲で、前曲の「ロビンソン」が創り出した気高い美しさを引き継いだバラード曲です。同じ一文字タイトルである後年「P」とも似た部分がある、品のある楽曲だと感じてます。

曲名曲調一般知名度お気に入り度
1Y上品で優しいバラード
Yの美しく暗いメロのイメージ

 

1. 演奏への印象

「Y」の演奏は、とにかく美しいという印象が第一に来ます。曲に感じている雰囲気を言語化するならば、聖なる祈り温かい日差しが照らす麦畑、という感じです。なお、太陽の光は、昼の日差しではなく、赤く変わる前の黄色い夕日のイメージです。

また、メロとサビで雰囲気が随分と異なるのも印象的。ボーカルとアルペジオのシンプルな構成からなるメロ部分は、暗い印象です。ただし、サビになるとその暗闇に光が差し込んできたかのように、多くの楽器が加わり演奏が明るくなります。

個人的には、サビの背後で心地よい音色を響かせてくれる、純朴なアコギが一番のお気に入りですね。この「Y」という楽曲全体に感じる清廉な雰囲気は、生の楽器だけが発することが出来る純粋な音の存在が、大きく関わっている様な気がします。

アコギのイメージ

2. 個人的な想い

この「Y」という曲は、決して有名曲ではないため、スピッツファンでなければ知らない曲の一つでしょう。ただ、アルバムの雰囲気調整を優先した曲と捉えるのも、もったいない。所謂、スピッツの隠れた名曲というジャンルに入り得る曲でしょう。

曲タイトルの「Y」が何を意味しているのかは、諸説あるようです。「YM71D」ではないですが、仮タイトルがそのまま採用された可能性もあると思います。ただ私としては、サビの出だしで共通して使われる歌詞、「やがて」を重ねて聴いています。

この「Y」は、恋人の永遠の別れを重ねた解釈が一般的で、私もそこに共感する部分があります。ただ一方で、この曲の明暗を比べた際に、私は優しい明るさを強く感じています。その意味でも「Y」は、時の前進を感じる言葉の頭文字がしっくりきます。

哀しさと希望とのイメージ

 

歌詞の世界を考える

ここからは、「Y」の歌詞を考えつつ、その意味する世界を考えていきます。今回の考察のテーマは、「静かな闇夜が明けるまで」としました。その考察テーマを補足するためのトピックとして、今回は以下の4つを準備してみました!

曲解釈は私の想像であり、他人に押し付ける物ではありません。ただ、出来る限り想像の根拠が提示できるように、歌詞とリンクさせながら進めていきます。私の想像を楽しんでいただけると、嬉しく思います!

夜明けのイメージ

1. 考察の前提

定説では、サビでの描写を主人公の行動としているはずです。勿論、そう読めないことはありません。ただ一方で、サビの描写は、鳥の行動、ひいては彼から君へのエールであるとも取ったらどうなるでしょう。「Y」の別の姿が、見えてくる気がします。

今回は、サビの描写が君へのエールであるという前提に立ち、曲全体を考えます。つまり、この「Y」という曲は、信頼し合う二人がそれぞれの夢を追うため、いずれの再会を約して、旅立っていった君へエールを送る主人公の歌、ということです。

また、この曲での「鳥」は、空を勇敢に舞う存在、夢を追って人生を懸命に駆ける姿を示すものと考えました。主人公は主人公で、自分自身の日々を懸命に生きていますが、彼から見た君は、弱さを抱えつつ大空を目指す、勇敢な小さな鳥なのです。

「Y」の演奏は、静かに始まり、明るくなって、また静かになって終わります。主人公の心には、優しい気持ちはもちろん、一抹と言うには大きすぎる切なさや悲しさもあるはずです。しかしそれでも彼は、湧き上がる寂しい気持ちを抑え、君の未来が健やかなることを願うのです。
鳥になる君のイメージ

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2. 冷たい闇夜

歌詞の冒頭では、主人公が闇夜の中にいる描写があります。その夜は静かな夜であり、かつ長い夜であるともされています。これは、彼の周囲の物理的な描写でもあるでしょうが、それ以上に、彼の内面を描写していることでしょう。

今の彼は、静かな闇夜のような、孤独感の強い日々を送っているのです。そんな彼が振り返るのは、君と過ごした日々、幸福だった日々。君が側にいてくれた頃の彼の人生は、闇夜ではありませんでした。ただ、今は、君は彼の側にはいません

彼と君の二人はよく似ていて、だからこそ反発し合い、そして最後には強い信頼で結ばれたとされています。似た者同士が意地を張り合って対立しているうちに、いつの間にか二人は信頼を深めていったようです。喧嘩するほどという物かもしれません。

建前だらけの静かな世界において、本心をぶつけ合う経験は、新鮮だったということもあるでしょう。だんだんと君に惹かれ始めた彼は、つまらない意地で固められた心を捨て、ありのままの心で君を想い始めます。彼はやがて、自分の全てが君に惹かれていたと気づいたのでした。
暗い夜、微かな灯り

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3. 懐かしい声

孤独な心を抱いて、闇夜の中で生きる彼。そんな彼は、時の流れから置き去りにされたような気分になっていす。まるで、君がいなくなってから、彼の時間が止まってしまったかのようです。彼は、心躍ることの少ない静かで長い闇夜を生きてきました。

そんな日々に、彼の心はだんだん萎んでいきます。彼は、闇の中で暮らすことに慣れ、胸に抱いていた君の姿さえ、消えかけています。しかし彼は、そんな日々に慣れたくはありません。「慣れさせられた」という言い方に、彼の抵抗心が込められています。

心の色を失いつつも、闇夜に溶けきることを是とはしない彼。君との想い出を、忘れてはいけないと思う彼。また、君と再会することを決して諦めない彼。そんな孤独な夜の中、君のことを想い続ける彼は、懐かしい声が聴こえたような気がしました。

闇の中、彼は君の声が微かに聴こえた気がして、思わず手を伸ばします。君の姿がそこにあるはずもありません。ただ、闇夜に慣れた彼の心には、二人の約束が蘇りました。「絶対にまた会おうね」。そう、この約束を果たすため。彼も、やるべきことをやらなくてはいけません。
彼の心の中のイメージ、暗い部屋

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4. Y

二人がかつて交わした再会の約束も、闇夜の冷気に晒され、ボロボロになっています。しかしそれでも、それは二人の大切な約束。君を想うだけで、無邪気な笑みすら浮かんできます。彼は、胸に広がる君への愛情を噛みしめ、君へエールを送ります。

世界は、かつて二人が描いたミラージュ、蜃気楼とは正反対の世界。かつて描いた理想も、風に煽られツギハギだらけです。しかし、怯えて俯いてはいけません。今は苦しくとも信じ続ければ、鳥が大空を舞うように、やがて君にも夢に届く日が来ます。

二人は、それぞれの夢に向かって闇夜を進みます。再会の約束を胸に抱き続ければ、凍える世界でも、二人の夢は続きます。そして、いつか夢が叶って夜が明けたなら、君も彼の下へと舞い降り、二人の理想郷の中で疲れた羽を休めることが出来るでしょう。

私にとっての「Y」は、信頼し合っていた二人がそれぞれの道を選び、一時的な離別を経験する中で、彼が君の将来が開けていくことを願う歌。今回の解釈では、結局二人は、再会を果たしていません。しかしやがて、二人の理想郷としての二人の生活が実現する日が来るでしょう。
「Y」に登場する麦畑のイメージ

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さいごに

私にとっての「Y」は、湿っぽい雰囲気よりも、希望の雰囲気が勝る歌です。そのため、今回の解釈では、「悲しく切ない物語」ではなく、「苦難の先の希望」を歌ったものとして考えてみました。さて、貴方の「Y」は、どんな物語ですか?

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