「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「大好物」は、2021年11月に公開された映画「きのう何食べた?」の主題歌で、スピッツの第45作目のシングルです。余談ですが、このブログでの初めてのリアルタイムレビューでもあります。
この記事では、そんな「大好物」の魅力を語り、歌詞も考察します。主人公が「大好物」と語るものは、一体どんなものでしょうか?
「大好物」とは
「大好物」は、2021年に発表されたスピッツの45thシングルです。柔らかく温かな雰囲気を持った楽曲で、これぞスピッツという優しさに溢れた楽曲。曲名は、主題歌となった映画に密接にかかわるテーマ、「温かな食卓」から来ているのでしょう。
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | 大好物 | 伝家の宝刀 |
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1. 演奏への印象
「大好物」の演奏は、スピッツの魅力的の一つ、優しさに溢れた顔が存分に楽しめるものになっています。曲の中のメリハリ、演奏の厚み、草野さんの優しいボーカルとコーラス。多くの方がイメージするであろうスピッツ像が、この曲に詰まっています。
演奏では、特にドラムがお気に入り。盛り上げ所での軽快な連打に、ウキウキしてきます。また、短いギターソロの出だしが、初期の「ドルフィン・ラヴ」と重なって聴こえます。曲が持つ優しさが、ノスタルジックな気分にさせるのかもしれません。
また、演奏のアレンジには、初期スピッツ的な雰囲気を感じています。曲の背後で盛り上げる鮮やかな電子音は、それこそ「ドルフィン・ラヴ」が収録の「Crispy!」の頃のような雰囲気を感じています。曲を明るくする、素敵なアレンジですね!
2. 個人的な想い
「大好物」を聴いての最初の印象は、驚きでした。映画のティザーでサビだけを繰り返し聴いていたのですが、メロの印象が想像とかなり違ったからです。 スーファミを思い出すような電子音にはノスタルジーを感じ、胸の奥が熱くなる想いがあります。
そんな「大好物」は、スピッツの直近のシングルが持っていた優しいメッセージを含んだ曲だと感じています。「猫ちぐら」、「紫の夜を越えて」と同様、「大好物」にも、困難を越えるための安らぎや勇気の欠片が、曲中に散りばめられていますね。
また、「大好物」の発売時点で、たまたまスピッツの名作「三日月ロック」を良く聴いていたのですが、「三日月ロック」収録曲に感じる温かな体温もとい曲温を、この「大好物」にも感じています。「大好物」は、優しく心に染み入る「温曲」です!
歌詞の世界を考える
ここからは、「大好物」の歌詞を追いながら、歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「何気ない愛ある日常」としました。また、そのテーマを補足するために、以下の4つのトピックを準備してみました!
曲解釈は私の想像であり、他人に押し付ける物ではありません。ただ、出来る限り想像の根拠が提示できるように、歌詞とリンクさせながら進めていきます。私の想像を楽しんでいただけると、嬉しく思います!
1. 考察の前提
「大好物」は、映画「きのう何食べた?」のために書き下ろされた楽曲です。ただし、映画の主題歌とは、その歌詞で映画の内容を逐語的に描くものではないため、映画が扱っている包括的なテーマを知れば、曲解釈には十分だと言えるでしょう。
そんな「きのう何食べた?」は、元々は漫画作品であり、「温かな食卓」を描きながら、同棲する男性間の恋愛を主題としているようです。このことから私は、「大好物」の中心テーマは、「日常」、「多様性」、そして「愛」だと感じました。
なお、私はあくまでスピッツファンとして、音楽を中心に歌詞を解釈していきます。曲の解釈の中に、「きのう何食べた?」の登場人物や詳細な設定を入れることはありません。以降では、以上の前提を持って、物語調で曲解釈を考えていきます。
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2. 冷たい部屋
鬼のように張り詰めた強がりの日々。彼が送ってきたのは、そんな冷たい日々でした。どうしてそんなことを続けていたのか、自分でも上手く説明できません。彼は何故か、ダルマのような厳つい顔を貫くことが、自分の最善だと思い込んでいたのです。
もちろん、そんな日々は、彼がかつて思い描いた日々ではありません。彼の外面は無表情でも、心は暗く沈んでいました。こんなはずじゃなかった。そんな想いで世界を眺め、視界の先の幸せそうな人々を羨み、呪ったりすることもありました。
彼は、そんなギリギリの強がりを長い間続けてきました。しかし、そんな冬の日々も、もう終わり。明るく優しい光が、彼の部屋のドアを叩いてくれたからです。彼の強がりの仮面を溶かし、彼の心を温めてくれた光。それこそが、大切な君でした。
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3. 白か黒か?
かつての彼は、無表情の仮面を被ることに気を取られ、その瞬間に存在することがおざなりになっていました。心を張り詰めて、息を止めて世界を睨みつけるのは、良い方法ではありません。そんな彼に君が教えてくれたのは、リラックス、深呼吸でした。
そんなリラックスした心で世界を見渡すと、今まで気づかなかったことも見えてきます。グラタンのクリーミーな部分と香ばしく焦げ付いた部分。白か黒か。思えば、その二者択一しかなかった彼の世界にも、その間の微妙な塩梅が見えてきました。
そんな日々を続けるうち、彼も変化していきます。油断すると、昔の卑屈な心に戻ってしまいそうになりますが、君が彼の手を握っていてくれるなら心配なさそうです。彼は今、冷えていた心に温かな芽が育つのを感じているのです。そう、昔のように。
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4. 大好物
心に芽吹いた種を、大切に君と育てた彼。彼は今、かつての柔らかい心を取り戻しました。その心の中にはまだ、かつて描いた夢の姿もありました。届かなかったと思い込んでいましたが、君がくれた心は、もう一度その夢の中で踊るよう彼の背を押します。
予定通りでなくとも、期待に届かなくともいいのです。ただ優しい気持ちで、無様なステップでも今の仲間と楽しく踊る。それだけで、十分です。想定外の連続の中に、幸せな未来がある。そんな調子で、かつての夢も色違いの夢として続いていくはずです。
今の彼には、君の全てが「大好物」。柄にもないことですが、君が大好きな何かがあれば、彼もすぐにそれを好きになる気すらします。君がくれる「大好物」を噛みしめる彼は、今日も幸せ。彼は、大好きな君の手を取り、楽しく踊り続けるつもりです!
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さいごに
温かなラブソングという印象の「大好物」。その曲の雰囲気を料理に例えていうのなら、煌びやかな宮廷料理ではなく素朴な家庭料理。特別なものではないはずなのに、かけがえのない唯一無二のもの。前向きで温かな気持ちになる良曲ですね!