「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「祈りはきっと」は、スピッツの46thシングル「美しい鰭」の2曲あるカップリング曲の一つで、曲調はややシリアス。他の2曲は明るい曲なので、バランサー的な役割を担っている印象があります。
以降では、そんな「祈りはきっと」の魅力を語りつつ、歌詞も考察。スピッツらしい応援歌にも思える歌詞を、自分なりに捉えてみます。
「祈りはきっと」とは
「祈りはきっと」は、スピッツの46thシングルである「美しい鰭」のカップリング曲です。アコースティックギターでしょうか、ギターの響きが印象的な一曲。なお、この曲は17thアルバム「ひみつスタジオ」には収録されないようですね。
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | 祈りはきっと | 静かなる決意 |
---|
1. 演奏への印象
演奏を聴いて一番耳に残ったのは、シャカシャカなり続けるアコースティックギターでした。もともとアコギサウンドは大好物なので、このギターも好きです。サビのアルペジオはエレキなのかもと思いましたが、いずれにせよギターが魅惑的な一曲です。
ボーカルについて言うと、Aメロ最後の「したぁ」のボーカルが印象的。サラッと歌うことが多い草野さんにしては珍しく、色々なものが込められた深いボーカルに聴こえました。高音ボーカルの印象が強い草野さんですが、やっぱり低音も素敵ですね。
演奏が静か目のため、草野さんのハスキーボーカルが目立つ一曲とも感じました。中低音が中心のA・Bメロは深みある響きを、中高音が連続するサビでは深みと明るさが同居した、無理なく伸びるボーカルを楽しめます。サビのコーラスも綺麗ですね。
2. 個人的な想い
「美しい鰭」には新たな雰囲気を感じた私でしたが、この「祈りはきっと」はかなりスピッツ的というか、「あぁホッとするな」という感覚を覚える自分がいます。草野さんの曲は何でも喜んで聴きますが、こういう曲も作り続けてくれると嬉しいです。
演奏からは「小さな生き物」の収録曲「ランプ」や「スワン」を思い出す自分がいました。共通部分としては、「優しさ成分」などでしょうかね。また、シリアス成分の濃さに違いはあるものの、曲の系統は「さらさら」にも似ているかもしれません。
さらに、序盤の歌詞を繰り返して閉める感じには「オパビニア」を連想しました。このように、「祈りはきっと」を「小さな生き物」の収録曲と結びつける自分がいるようです。これが、私がこの曲にある種の懐かしさを感じている原因なのでしょう。
歌詞の世界を考える
ここからは、「祈りはきっと」の歌詞を追いながら、その歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「君に会うまで、一歩ずつ」としました。また、そのテーマを補足するため、以下の3つのトピックを準備しました!
解釈は私の直感に過ぎず、全くもって他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、私の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスをまとめています!
1. 考察の前提
曲中の主人公と君は、何らかの事情で離れ離れになった男女とします。二人の離別にはサビに登場する「(過去の)時」が関係しているでしょうが、二人の関係が壊れたという明示はありません。そのため、二人はまだ信頼関係にあるとしましょう。
また、Aメロで主人公の日々は「駄目」という言葉で形容されていて、その日々が「強さ」や「成功」と馴染まないことが窺えます。ただ、そんな彼の傍にいた君は、常にのほほんとしていたよう。彼にとっての君は、癒しであり支えだったのでしょう。
ただ、二人は何らかの事情で離れ離れになりました。彼にとって、その離別はもう二度と会えないような、決定的なものに思えた時期もありました。しかし今の彼は希望の光、とある祈りを胸に抱えています。運命を打ち破り君と再び会うと言う祈りを。
(一覧に戻る)
2. 生まれた決意
二人が離れ離れになってから、長い時間が経っていました。彼にはその離別は決定的に思え、もう二度と再会は叶わないと思っていました。これ以上傷つかないように賢明に生きるのならば、全てを忘れた方が良かったと思ったことさえあったのです。
しかし今、彼は変わりつつありました。二人の日々が消えていく定めだったとしても、その定めを甘んじて受け入れるつもりはなくなったのです。運命を越えられるという確信を持つには至りません。いや、そんな確信を持つことはきっと無理でしょう。
そもそも彼は元々、強い人間だったとは言えないのですから。実際のところ、少しでも過去を振り返れば、目を覆いたくなるような失敗が次々と思い出されます。ただそれでも、彼にはそんな過去も大切に思えました。想い出の中には君がいるのですから。
(一覧に戻る)
3. 祈りはきっと
やり遂げられる確信はありません。彼にはきっととか思うとか、そんな言葉が精一杯。でも、きっとそれでいいのです。だってほら、その言葉のおかげで、まだ道が残っていたことに気づけたのです。運命を忘れ、自らの意志で世界を見渡したおかげで。
思い込みの運命に隷属した日々。もっとやりようがあったかもしれませんが、悔やんでも時は戻りません。でも多分、君との想い出を消してしまう前に気づけただけ幸運だったのです。見つけたこの道を歩き続けさえすれば、きっと君まで届くのですから。
運命は、真実なのかもしれません。しかし、彼はこれから運命に抗うことになります。彼を支えるものの一つが、胸に刻んだ祈り。今は嗤われるほど儚くとも、その祈りはか弱き彼を支える道標。彼が、再び君の笑顔に包まれる日を目指すための光でした。
(一覧に戻る)
さいごに
Aメロ冒頭の「忘却は望みではない」という歌詞は、逆説的に彼の中に葛藤があったことを示しているはず。そこで、Cメロにある「定め」こそが彼に忘却を促すものだとしたうえで、その運命を越えようとする、弱くもひたむきな青年像を考えました。