スピッツの曲

スピッツの「青い車」の魅力を語る。歌詞も独自目線で解釈

青い車のイメージ
こんな記事

「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。

今回ご紹介する「青い車」は、スピッツの5thアルバム「空の飛び方」収録曲です。スピッツの成功に大きな意味を持ったと言われているこの曲は、その評価に違わぬ傑作だと言って差し支えないでしょう。

この記事では、そんな「青い車」の魅力を語りつつ、その歌詞の意味を考えます。ダークな解釈が主流ですが、あえて他の可能性を考えます。「青い車」の主人公は、どう変わっていくのでしょうか?

「青い車」とは

「青い車」は、1994年にスピッツがリリースした5thアルバム「空の飛び方」の収録曲。前曲の「ベビーフェイス」はポップな曲でしたが、「青い車」は、ポップさを持ちながらも深みも感じる一曲で、スピッツの最高傑作の一つと言えるでしょう。

曲名コメント一般知名度お気に入り度
1青い車最高傑作の一つ
青い車のイメージ

 

「青い車」の印象

「青い車」は、押しも押されもせぬスピッツの最高傑作の一つです。美しく爽やかな演奏、高音域を物ともしない伸びやかなボーカル、美しい歌詞。どれを取っても、文句のつけようがありません。以下で、もう少し詳しく「青い車」の魅力を語ってみます!

1. 演奏について

「青い車」の演奏には、明るさと深みを感じていますが、そのバランスは明るすぎず、かと言って暗すぎずという絶妙な物。そんな「青い車」に対して私がイメージする青色は、水色のような明るく爽やかな色ではなく、深みと影を持った藍色です。

明るさについて言えば、やや早めの曲テンポがその中核でしょうか。曲のテンポは、疾走感を感じると言うにはミディアム寄りすぎるものですが、もしこの曲に強い疾走感を感じるならば、爽やかさは増しても深みが失われてしまったでしょう。

演奏の聴き所としては、ザ・スピッツなイントロのアルペジオと、伸びやかで壮大なギターソロ。さらに、メロディーの背後で動き回るベースにも、心躍る物があります。勿論、体を揺らしたくなるリズムを支えるドラムも忘れてはいけませんね!

「青い車」は、草野さんがレコーディングに遅刻したことでメンバー主導のアレンジになり、曲テンポが当初の想定より早まったという逸話が有名です。草野さんの当初の想定に興味がないわけではありませんが、結果から言って、これがベストアレンジだったろうと感じています!
この曲に似合う藍色のイメージ

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2. ボーカルについて

「青い車」のボーカルには、草野マサムネさんという類まれなる才能を持った歌手の神髄が散りばめられています。女性には分かりにくいことでしょうが、普通の成人男性がこの「青い車」の音域を軽々歌いこなすのは、まず無理だと言えるでしょう。

メロの音域は、男性にはやや低めといった程度で問題なく処理できる音域です。ただ逆に、女性は一部出しにくいところがあるでしょうか。スピッツと言えば高い声をイメージしがちですが、草野さんは低音が出ないという訳ではないのです。

サビでは、草野さんの真骨頂、伸びやかで透明感のあるボーカルを存分に楽しむことが出来ます。草野さんは、出そうと思えばもっと高い声も出るはずですが、この「青い車」で扱っている音域くらいが、一番の得意音域なのではないでしょうか。

「青い車」は、男性にとってはサビが歌えず、女性にとってはメロが歌えずの難曲。その曲を軽々と歌いこなすのが草野マサムネさんな訳です。もちろん相手はプロですし、自作曲を歌いこなせるのは当たり前と言えば当たり前なのですが、やはり一般人目線で感心してしまいます。
伸びやかなボーカルのイメージ

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3. 歌詞について

「青い車」の歌詞解釈では、危険な香りを漂わせる解釈が主流になっていると言って良いでしょう。歌詞を見ても、確かにそう解釈出来る歌詞だとは思います。出だしの歌詞の解釈次第で、この曲は主人公が世を去っていく歌とも取ることができます。

そもそも「青い車」が発売されたのはデビュー3年後。その圧倒的完成度から忘れがちですが、時期でいえば「青い車」はスピッツ初期の楽曲です。そして初期の曲には、「命」を歌った歌も多いです。このことも、曲解釈には影響し得るでしょう。

ところで、作詞の真意はさておき、この「青い車」の歌詞に文学的な美しさを感じているファンも多いのではないでしょうか。スピッツが作り出す独特の世界観の一片に触れたいと願うならば、この「青い車」は、うってつけの一曲だと言えるでしょうね!

草野さんは、バンドマンとして「音楽」を作っているという考え方をしているようですから、構成要素の詞だけを取り出して賞賛されるのは好みではない気がします。ただ、音楽全体としても素晴らしいのですが、詞単独でも美しいのも事実なので、ファンとしては悩ましいですね!
美しい歌詞のイメージ

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歌詞の世界を考える

ここからは、「青い車」の歌詞を追いながら、その歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察のテーマは、「落書きを胸に抱き」としてみました。そんな考察を補足するためのトピックとして、以下の4つを準備してみました!

曲解釈はただの妄想であり、他人に押し付ける物ではありません。この曲を楽しむための私なりの妄想というだけですから、ご容赦ください!単純に、こういう話も当てはまるかもな、というだけの妄想です!

落書きのイメージ

 

1. 考察の前提

「青い車」の解釈の方向性を決める第一の要素が、冒頭の歌詞でしょう。彼は何故、彼女の首すじに手を回すのか。そして、「はじける」とは何かということです。ここの読み方次第で、「青い車」は、危険な香りを放つ曲になるわけです。

ただ、危険な解釈は様々な方が指摘しているので、今回は脇へ置くとします。代わりの独自解釈として、この曲を彼の成長を描いた物語として考えていくことにします。曲内で再三歌われる変化への意思は、彼の成長への決意という訳です。

彼は、君と出会い、新しい価値観を抱く自分へと変わっていきます。そして、新旧の相反する価値観のそれぞれに属する物が、歌詞で示唆されていると感じています。それは以下の表の通りですが、例えば、海と掟、夢と現実、完璧と傷物などです。

 価値観属する物彼の態度
1新しい価値観原始、海、夢、傷物、落書、情愛、愚か、情緒受け入れる
2古い価値観進歩、掟、現実、完璧、清書、支配、高尚、冷静捨てていく
詳しくは後段で述べますが、この曲の基本解釈は、冷たい世界の掟に従って生きて来た彼が、その掟通りに君を攻撃したところ、思いもよらぬ温かさに触れ、変わっていく物語としました。つまり、首に手を伸ばすのは攻撃行動の描写で、結果として弾けたのは、彼の冷たい世界です。
変化するイメージ

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2. めざめの朝

冒頭の描写、主人公の手が冷たいのは、彼の心が冷えているから。そして、彼の心を冷やしたのは、人間を高等生物たらしめる合理の掟。彼は、その掟を熱心に信奉している訳ではありませんが、かと言って他の生き方が出来るとも思えません。

合理の掟は今や、人間の道具であった過去を忘れ、逆に人間を支配しています。掟の支配は、人間が前進を責務とする限り、永久に続くでしょう。その被支配は、高等生物たる人間だから持つことが出来る高尚で歓迎すべき苦難とされてもいます。

そんな彼は、ある朝に君と鉢合わせます。掟の教えでは、自分を脅かすものを許してはおきません。彼は、掟通りに鎌首をもたげた蛇のごとく臨戦態勢に入り、目の前に現れた敵の急所に飛び掛かります。しかし、衝撃を受けたのは、彼でした!

彼の冷えた心が触れたのは、温かい君の心でした。掟の世界には冷たいものしかないはずですが、今の彼が感じているのは、紛れもない温もりです。君との出会いを通じて、彼は掟の外で生きることも出来ると知ったのです。それは、彼の世界がはじけ飛んだような出来事でした。
温かい君の心

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3. 大切なもの

合理の掟は、絶対唯一の物ではなく、その気になれば放棄することも出来る。君の温もりによって新しい世界を知った彼は、掟の外で君と一緒に過ごすようになります。彼は、身に纏っていたかつての掟を、完全に脱ぎ捨てることにしたのです。

彼は、高尚な知恵を離れ、より原始的な何かに身を委ね、いつの間にか忘れていた大切な物を次々と取り戻していきます。彼が取り戻したものの一つが、愛の輝き。それは、かつての掟の上にいれば、嘲笑を向けたに違いないものです。

かつての掟を離れた彼は、人間は特に高尚でも低俗でもなく、世界の全てと全く同じように懸命に一日を越えていくだけの存在だと気づきます。彼は、合理の掟が教えて来た崇高な使命を帯びた人間像は、傲慢で愚かな物だと気づいたのです。

自由な心で世界を眺めれば、立ち並ぶ樹々も、水の流れも、暖炉の温かな火も、それぞれの美しさを持っています。世界を構成する全ては、生命と物質の違いすらなく、それぞれの精一杯を繰り返しているのですから。彼は、完璧な物にしか価値のなかった世界を離れていくのです。
原始的なイメージ

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4. 青い車

自由な心を得た彼は、かつての掟が否定する物、傷ついて汚れた物ほど美しいと知りました。彼はありのままを受け入れて完璧主義を脱し、恐怖から解き放たれていきます。そんな彼は、君と二人で青い車を走らせ、全ての母たる海を目指します。

彼が海を目指すのは、幼き日の馬鹿げた夢に再び命を与えるため。夏の潮風を想った彼は、幼き日の純情が息を吹き返す気がしています。掟に心を上書きされ、いつの間にか幼き日々に置き去りにしていた純情を、母なる海なら彼に返してくれるはずです。

合理の掟による支配は、永遠に続く人の宿命ではありませんでした。彼は、合理の掟が命ずるままに終わることない前進を目指す、高等生物としての生から抜け出し、幼き日に見た終わることない夢を支えとして生きる愚かな生き物に変わっていくのです。

私にとっての「青い車」は、前進と引き換えに心を冷やしてしまう掟から離れた主人公が、新しい自分へと変わっていく歌。君との思いがけぬ交流によってきっかけを得た彼は、合理の掟の代わりに全てを泰然と受け止める自然に習うことで、新しい自分へと変わっていくのです!
全てを知る海のイメージ

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さいごに

個人的に、スピッツの曲の中には何かしらの対比軸を感じることが多いです。その対比軸と構成物の描写では、普通は蔑まれがちな物を優しく描くことが多いですね。その描写に共感できることが多いのが、私がスピッツが大好きな理由の一つです!

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