「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「ヒバリのこころ」は、スピッツのデビューアルバムのラストを飾る曲で、春の息吹を感じさせる爽やかなロックチューンです。
この記事では、そんな「ヒバリのこころ」の楽曲としての魅力を語ったうえで、この曲に込められたメッセージを考えていきます!
「ヒバリのこころ」とは
「ヒバリのこころ」は、スピッツのデビューアルバムを締めくくるナンバー。風変わりな曲も多かったアルバムを、ロックバンドとしての矜持を持って締めくくる、スピッツロックを体現したナンバーで、個人的なお気に入り度は星4.5としました。
また、デビューアルバムと同日発日のシングルとしても、リリースされています。この意味で、スピッツのデビューシングル、ですね。「ニノウデの世界」も好きな曲ですが、ロックバンドらしさを打ち出したこの曲も、素晴らしいですね!
曲名 | コメント | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | ヒバリのこころ | スピッツロック |
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「ヒバリのこころ」の印象
「ヒバリのこころ」は、スピッツのデビューシングルとして、特別な地位を占める楽曲です。そんな楽曲は、もちろん私にとっても大事な一曲になっています。「ヒバリのこころ」の楽曲としての魅力を、以下の3点から語ってみます!
1. 演奏について
この曲の演奏は、ロックバンドスピッツとしてのバンド演奏が、存分に楽しめるものになっています。力強いドラム、印象的で耳に残るギターリフ、そしてビートを刻むベース。ニコニコと楽しそうに演奏するメンバーの姿が、頭に浮かんできます。
演奏全体から感じるフレッシュさやワクワク感は、歌詞が持つ「春の息吹」にも通ずるものがあると思います。印象的なギターリフを中心に、新しい冒険に身を投じようとする「少年のこころ」の高揚感、躍動感が伝わってくるようです。
この曲の長めの後奏もお気に入りです。フェードアウトしていく演奏を聴くのは、大空へ飛び立ち、その青の中に身を溶かしていくヒバリの姿を眺めるような気分。小さな身体に風を受けまだ見ぬ地を目指す、ヒバリの心の高鳴りを想像してしまいます!
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2. ボーカルについて
ボーカルの持つ少年感が、この曲の持つ初々しさやフレッシュさを、より強調していると感じています。この曲のボーカルから思い浮かべる情景は、若くて元気なヒバリが、希望の鐘の高鳴りを胸に抱いて大空へと飛び出していく様子です。
そんなボーカルの一番の聴きどころは、1番サビの直後です。そこでは、「oh」のロングトーンが繰り返されます。草野さんの伸びやかな高音は、ヒバリとしての主人公が抱く、新しい旅への決意の歌声のよう。目指す空の果てまで、届きそうです!
また、先述の30周年記念ライブのボーカルも素晴らしいです。30年の時を経ても、ヒバリが持っていたフレッシュさは、失われていません。ただ同時に、勢いと若さが中心だったその「こころ」に、温かな優しさが加わったようにも思えますね!
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3. 歌詞について
この曲の歌詞には、スピッツ・エッセンスが詰まっています。鮮明なイメージが湧き上がる情景描写、表層の裏にある意図をぼんやりと感じる、草野さんらしい比喩を交えた言葉選び。どちらも、この曲に含まれるスピッツの歌詞の特長だと言えるでしょう。
中でも、この「ヒバリのこころ」からは、歌詞の世界の中に自分が立っているような強い没入感を感じています。風のかおり、鳥のさえずり、目の前に広がる白く眩しい光。どれもが、いきいきとした自分の感覚として感じられる歌詞だと感じます。
そんなスピッツエッセンスが濃縮された歌詞から感じるテーマは、「旅立ちのこころ」とか、そういう感じでしょうか。新しい冒険への決意と感動に、胸を震わせる主人公の気持ちが伝わってきます。壁を乗り越え、あの青空の果てを目指して!
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歌詞の世界を考える
ここからは、「ヒバリのこころ」の歌詞を追いながら、その歌詞が意味することを考えていきます。今回の考察のテーマは、「旅立ちのこころ」としてみました。そんなテーマを構築するため、以下の4つのトピックを準備してみました!
1. モチーフの意味
まずは、ヒバリという鳥の特徴を整理しましょう。ヒバリは、スズメより少し大きい程度の小鳥で、春になると美しい声でさえずるため、「春を告げる鳥」という異名を持ちます。俳句の世界では、ヒバリは、春を表す季語となっています。
ところで、ヒバリの英語名は「skylark」と言うそうで、「lark」には、「愉快」と言う意味があるようです。ヒバリが楽しそうに空を舞う姿から、このような命名になったのでしょうね。ヒバリは、小さな体で大空を満喫する鳥なのです。
また、ヒバリには、少し変わった点があります。ヒバリは、地面に営巣し、ひっそりと地上で暮らしているのです。ヒバリは、変わり種の鳥だと言えるかもしれません。ただし、ひとたび春が訪れれば、彼らは空高く舞い上がり、美しい声を響かせるのです。
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2. 二人の出会い
登場する僕と君の二人は、恋人関係だと考えて良いでしょう。サビで歌われる君への愛情表現から言って、二人の特別な関係を示唆しています。ただ、曲全体に感じる初々しさから言って、主人公と君は、出会ってから間もない気もしています。
1番のメロでは、君との出会いが描写されています。歌詞から想像される情景は、春の気配を感じる雪解けの景色。春の日差しが、降り積もった雪を照らす。少しずつ雪解け水が流れ始めて、小さな水の流れを作っている。そんな風景が浮かんで来ました。
この描写には、季節を描く以上の意味があるはずです。私は、この描写は、君と出会ったときの彼の気持ちを表していると考えました。そのとき彼は、長く厳しい冬を越え、春の息吹を感じたときのような、爽やかな喜びを感じたのではないでしょうか。
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3. 水槽のこころ
2番のメロの内容は、君と出会う前の彼が過ごしてきた「冬の日々」だと考えています。その日々は、自分らしく振舞えない日々だとされていますが、君と出会った後の彼が、こんなネガティブな心持ちで日々を過ごしているとは思えないからです。
どんな大きな波もいずれ収まる。だから、安全圏で待つ。彼のそんなスタンスは、彼の安全を保障してくれていたはずです。ただし、穴倉で息を潜めるような生活だったでしょうから、彼が自分らしく生きることは出来なかったようです。
そんな安全圏で、彼は水槽の魚を見つめています。彼は、シンパシーを覚えたのかもしれません。水槽の中の魚は、その安全が保障されています。しかし、彼らが広い世界を知ることはありません。この姿は、穴倉に籠る彼自身にも言えることです。
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4. ヒバリのこころ
そんな冬の時代を経て、彼は君と出会い、「ヒバリのこころ」を手にしました。「ヒバリのこころ」とは、新しい世界に勇敢に飛び出し、その世界を十二分に満喫するこころです。心の防風壁を取り払い、強い風をその身に受けるこころです。
「ヒバリのこころ」を手にした彼は、危険におびえる心を捨て、むしろ不安定を楽しむような姿勢を持ち始めた気がします。風に流される運命だとしても、それまではこの大空を自由に舞おう。彼は、そう考えているように感じます。
これから一緒に生きていく二人には、遠くで高らかに鳴く、ヒバリの歌声が聴こえて来ているようです。小さな体で、不安を物ともせず、大空を舞う喜びを歌った歌。そんな歌に乗ったヒバリの生き方こそが、二人が目指す強い生き方なのかもしれません。
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さいごに
ヒバリって、なかなか可愛い鳥ですね。スピッツを通して、また一つ学んでしまいました(笑)。また、ヒバリは漢字で、雲雀と書くそうです。大空高く舞い上がり、雲の中で遊ぶような様子から、そう名付けられたのかもしれませんね!