「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「メモリーズ・カスタム」は、スピッツの9thアルバム「ハヤブサ」の収録楽曲で、ロックな変化球という印象。カッコいい大サビはスピッツ曲で唯一、メンバー以外の方が作曲を手掛けたものです。
この記事では、そんな「メモリーズ・カスタム」の魅力を語り、歌詞の意味も考えます。大サビで彼が知った真実とは、一体どんなもの?
「メモリーズ・カスタム」とは
「メモリーズ・カスタム」は、2000年にスピッツが発売した9thアルバム「ハヤブサ」の収録曲。前曲の「ホタル」は、凛とした雰囲気のバラード曲でしたが、今回の「メモリーズ・カスタム」は、スピッツのロックなトンガリ魂を感じる楽曲です。
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | メモリーズ・カスタム | 変わり種ロック |
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1. 演奏への印象
「メモリーズ・カスタム」の演奏には、ロックバンドとしての力強さとともに、スピッツが持つトゲを感じています。スピッツには「遊び心」を感じる楽曲も多いですが、今回のケースでは「遊び心」と言うより「トンガリ魂」と言った方が良さそうです。
イントロの出だしのギターから、ロック魂を感じますし、ノイズエフェクトが入ったメロのボーカルにも、「トンガリ魂」を感じています。エフェクトをこれほどあからさまに使うのは、スピッツでは「どんどどん」くらいのもので、大変珍しいですね。
この曲には、パンク的雰囲気のメロ、軽快なスピッツ節のサビ、スケールの大きいロックな大サビと、一曲に3つの魅力が詰まっています。また、曲のハイライトである大サビでは、ノビのある高音ボーカルと激しいドラムが最高にカッコいいですね!
2. 個人的な想い
「メモリーズ・カスタム」は、スピッツのロック魂を強くアピールする曲だと感じています。極端なボーカルエフェクトも、滑らかでスムースなバンドのイメージを打ち破り、ザラついた感覚、尖ったロック色を強く打ち出すための演出でしょう。
また、PVに登場する三角錐も、ロック魂の象徴と感じます。スピッツが「尖り」と「ロック」を結び付けているのは「トンガリ’95」からも明らかですし、PV内で三角錐が顔に重なったり、手に乗せて歌ったりするのも、ロック魂のアピールなのでしょう。
ところで私は、そもそも大サビ追加の決断をしたことに感心しています。私のような素人が口にするのもおこがましいですが、超一流の作曲家としてのプライドより、曲が良くなる提案を優先した草野さんの度量は、尊敬に値すると感じています。
歌詞の世界を考える
ここからは、「メモリーズ・カスタム」の歌詞を追いながら、歌詞の意味を考えていくことにします。そんな今回の考察のテーマは、「忘れてしまえ」としました。また、そのテーマを補足するため、以下の5つのトピックを準備してみました!
曲解釈は私の想像であり、他人に押し付ける物ではありません。ただ、出来る限り想像の根拠が提示できるように、歌詞とリンクさせながら進めていきます。私の想像を楽しんでいただけると、嬉しく思います!
1. 考察の前提
歌詞全体には、未成熟な若者像を感じています。君への想いを歌ったサビは、あくまで彼の願望ですから、現実の彼には悩みもあるはずです。ただ迫力ある大サビでは、悩みを突き抜けた強さを感じますから、彼は悩みに捉われた存在ではないでしょう。
また個人的に、「メモリーズ・カスタム」の解釈のキーは、Cメロの歌詞だと感じています。後から追加した歌詞だから、曲の全体像に影響しないという見方も出来るかもしれませんが、私にとっては逆。わざわざ追加するからには、強い意味があるのです。
以降の解釈は、「メモリーズ・カスタム」の物語を、彼の性格像の描写、彼の望みの描写、Cメロの内容の描写、最終的な結論という4ステップで行います。なお、重要な位置を占めるCメロの解釈は、一部、歌詞描写にない想像で補うものとします。
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2. マッチの炎
今の彼の一番のお気に入りは、最近見つけた君。彼は、君を眺めた時間を拾い集め、その一つ一つを大切に胸の中にしまい込んでいます。それらの多くは、普通の人が見たならば取るに足らない些細なことでしょうが、彼には問題ではありません。
普通の人は、マッチの小さな炎を馬鹿にするかもしれませんが、その炎もしっかりと温かいものです。そして彼には、君との日々の欠片も似たようなもの。彼は、その些細な想い出が、自分の心を温める大切な炎となることを知っているのです。
ただし、その実態以上に、彼がそう思い込もうとしている部分もあります。遠くから君を眺めた想い出だけで満足するのは、極端に純粋すぎる感情です。本心では、その思い出を振り返ると切なさもあり、彼はもっと君に近づきたいのですが・・・。
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3. 彼が望む物
君を想う心は、日に日に強まるばかり。君を想うとなかなか冷静なままではいられず、心に波が立つのを感じます。かと言って、その想いを君にぶつけることも出来ません。奥手な彼は、想い出の温かさに心から満足したフリを続けるしかないのです。
ただ、君が自分の世界に入ってきたならどうなるだろう。彼にも、そんな想像をすることはあります。もしそんなことが起こったら、彼は君が放つ輝きに圧倒されるでしょうし、その光に平伏してしまうでしょう。何と、素晴らしいことでしょうか!
今の彼の願いは、真実と嘘が半分ずつの湿った想い出を、爽やかな真実の想い出にすること。つまり、想い出から真の満足を引き出すことが出来るようになることです。そのために彼は、遠くから君を見ているだけの日々から脱しなくてはいけません。
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4. 嵐のあとに
君は、いなくなってしまったわけではありませんでした。それによって、彼にとっての最悪の事態は過ぎ去りました。しかしその嵐が止んだと同時に、彼はある事実を知ってしまいました。彼が追い求めた恋は、叶う見込みがなさそうなのです。
久しぶりにいつもの場所に戻ってきた君ですが、その指に見覚えのない何かが輝いているのです。あの指に光るものがある意味は、流石の彼にも分かります。遠くから見つめるだけですが、君の表情もいつもよりも明るいものに見える気もします。
君が戻ってきたことに安心し、心の中をかき乱した嵐が明けたと思ったら、今度はこれです。君の右手の薬指に輝く何かと、いつもより嬉しそうな君。彼が大切にしてきた君への純なる祈りは、もうここで終わらせてしまうべきなのでしょうか。
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5. メモリーズ・カスタム
彼は、あの真実を放棄しました。あんなものが追い求めた恋の正体であるはずがありません。彼の恋はここで終わるべきではありませんし、この恋は二人に実りあるものなのです。大切な君のためにも、彼はこの恋を諦めてはいけないのです。
とは言え、急に大胆なアプローチをすることは出来そうにありません。ただ彼は、遥か彼方から君を見つめるのではなく、少し近くで君に見つかりそうなハラハラを味わったり、もし気が向いたなら、もっと近づいたりしてみるつもりです。
彼の恋路は、決して平坦な道のりにはならないでしょう。しかし、運命の恋というものは、得てしてそんなものであり、今は彼が君のために一肌脱ぐときです。彼は緊張を飲み込んで蝶となり、君の甘い香りを目指し、フラフラと飛んでいくのです!
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さいごに
曲中の蝶にはどんな意味があるのか。ふと頭に浮かんだのが、緊張状態を表す英語表現「have a butterfly in one’s stomach」。落ち着かない感覚を、お腹に蝶がいると表現するものです。蝶は、恋の緊張を表しているのかもしれませんね!