「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「三日月ロックその3」は、スピッツの28thシングル「スターゲイザー」のカップリングで、その名の通りロックな一曲ですね。
この記事では、そんな「三日月ロックその3」の魅力を語り、歌詞の意味も考察。合理の掟を離れ自由を求める青年の物語を考えました!
「三日月ロックその3」とは
「三日月ロックその3」は、2004年発売の28thシングル「スターゲイザー」のカップリング曲です。「スターゲイザー」は、どこか気品も感じる星空ロックといった感じですが、「三日月ロックその3」は、ゴリゴリのロック魂を感じる曲ですね。
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | 三日月ロック | 正統派ロック |
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1. 演奏への印象
「三日月ロックその3」の演奏は、その名の通りロック魂を感じるもの。ミドルテンポで繰り出される重厚な演奏は、スピッツがロックバンドだと実感させるもの。名作アルバム「三日月ロック」の標題を冠するだけあって、ロックロックしていますね。
そんな曲を象徴すると感じるのは、イントロや間奏部分で繰り返される重厚なエレキギター。まさに、ロックギターとはかくあるべきと言った感じで、正統派ロックの香りを感じます。ライブで演奏されれば、迫力満点でカッコいいでしょうね。
また、「三日月ロックその3」は、サビの高音ボーカルも聴き所の一つですね。このキーを歌うのは、男性にはなかなか大変です。また、CD版では綺麗に纏まっている印象ですが、ビリビリと圧力を感じる強いライブボーカルで聴いてみたいですね!
2. 個人的な想い
先述した通り、スピッツには「三日月ロック」という超名盤アルバムがありますが、この「三日月ロックその3」は、そのアルバムに収録されている訳ではないというのが、まず面白いです。もちろん、「その3」というタイトルにも興味を惹かれます。
どうやら、草野さんがアルバムタイトルを冠する曲を複数作り、「その1」も「その2」もあるが、音源化されたのが「その3」だけというのが真相のよう。タイトルを変更せず、そのまま「その3」でいくところがスピッツらしくて好きですね(笑)
また、全体的にキーが高いことから、ボイトレ曲としても使える一曲。メロからサビまで、男性の喚声点以上の音が超連発で、ミックスボイスの練習になりますね。なお、サビで連発されるhiAロングトーンの母音は、歌いにくい「あ」ばかりで大変です!
歌詞の世界を考える
ここからは、「三日月ロックその3」の歌詞を追いながら、歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「合理の掟に背を向けて」としました。また、そのテーマを補足するために、以下の4つのトピックを準備してみました!
解釈は私の感想に過ぎず、全くもって他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、私の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスをまとめています!
1. 考察の前提
歌詞冒頭では、彼の人生は不格好で、考えなしの彼はサル同然だとされています。そして、直後には何処かから脱出したいと願う彼の心情も描かれています。これを素直に読めば、彼は不格好な人生とサルの自分を捨てたいと願っている、となるでしょう。
しかし、私の解釈は異なります。何故なら、私にとってスピッツ曲に出てくるサルは、愚かさの権化のように描かれつつも、その実、賞賛の対象だと感じるから。サルは、賢いつもりの人間のアンチテーゼ的存在で、シンプルゆえにロックな存在なのです。
そんな私にとって、彼が脱出したいのはサルを否定する「正しい日々」なのです。また、サビで示唆される涙の過去から、彼が強くはないことが分かります。ただそれでも、彼は涙に濡れた日々を離れて、自分らしく生きる決意を固めていくのです。
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2. サルの誇り
掟への習熟を人間の要件とするこの世界で、掟の理解が甘い彼はサルも同然。掟は、そんな彼を厳しく叱責し、かつての彼はその叱責に心を痛めたものでした。だからこそ、かつての彼は掟の教えを学び、賢い人間に成長しようと努力したのでした。
その過程では、諦め半分でもう掟を受け入れるかと思ったこともありました。ただ、季節を越えて春になると、彼の心はいつも元通り。春の解放感に誘われ、無性にサルに戻りたくなるのです。結局彼は、掟の中では生きられないと痛感したのでした。
掟と距離を取って、ただ感情のままに振舞い始めた彼。予定調和の中で優雅な日々を送るのが望ましい在り方だとすれば、彼のドタバタした日々は不格好な日々。ただ今の彼は、そんな掟に反した日々の在り方に思い悩むことは少なくなっていました。
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3. 君への想い
この世界では、掟が示す正解を拾い上げることが成長とされていますし、その成長の定義に疑問を持つ人もいないよう。当然、そんな世界で掟に共感できない彼は何処にいても孤独だったものですが、今は違います。君への想いが、心に灯ったのですから。
離れ離れの君は今、どこで何をしているでしょうか。君を想うと、胸が高鳴るのを感じます。掟の教えでは、時の流れは全てを押し流すとされています。それが真実なら、彼の手に残る君の温もりも、胸のドキドキも薄れて消えていくのでしょうか。
いや、そんなはずがありません。君との再会を望む心は、日に日に強まっているのですから。君と一緒にやりたいことは山ほどあり、これからも増えていくはず。ただ、その具体的な形は変化するとはいえ、君を想う熱量が衰えることはないのでした。
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4. 三日月ロックその3
掟を忘れ、サルの誇りを持つ。時々、その憧れが叶いそうで盛り上がることはあっても、すぐに掟の寒風が吹きつけて、彼に現実の厳しさを突きつけます。彼の日々は、未だ夜明けを知らずに夜のまま。ただし、いつの間にか三日月が姿を表していました。
かつては泣いてばかりだった彼も、もう涙を流してはいません。彼は、掟の賢さを学ぶのではなく、むしろ感情に捕らわれて愚かに君を想い続けることにしたのです。掟が彼の在り方を秩序を乱す悪と呼んでも、あえてそんな自分に誇りを持ってみるのです。
掟には理解できないでしょうが、サルの非合理こそが彼の憧れ。例えば、君と二人で分別も忘れ、無邪気に跳ねたい。そして、低すぎる掟の天井を突き破り、自由の空気を。彼は、そんな憧れを温めつつ、夜空に浮かぶ三日月に願いを懸けるのでした。
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さいごに
スピッツ曲に時折登場するサルは、表面的には愚かな存在として描かれながら、その裏にはいつも、そんなサルこそが生き物の本質を突いているとの匂わせを感じます。気取ったものを削り落としたシンプルな生き様は、ロックではありませんか?