「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「シャララ」は、スピッツの31stシングル、「魔法のコトバ」のカップリング曲であり、パンク魂と疾走感に溢れた一曲ですね。
この記事では、そんな「シャララ」の魅力を語り、歌詞の意味も考察。本心を貫くリスクから、迷いを抱える青年の物語を考えました!
「シャララ」とは
「シャララ」は「魔法のコトバ」のカップリング曲で、2012年に発売された「おるたな」にも収録された楽曲です。「魔法のコトバ」に溢れる純情、優しい雰囲気とは対極的な、パンク魂、尖った心を感じるこれまたスピッツらしい一曲ですね!
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | シャララ | 疾走パンク |
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1. 演奏への印象
「シャララ」の演奏には、強い勢いを感じています。ペアである「魔法のコトバ」が、どちらかと言えばゆったり目で、じんわりとした温もりを振りまくような楽曲でしたから、この「シャララ」では、意図的に雰囲気を変えに来たという感じですね。
その演奏には、「ロック強さ」と頼りない「ヒョロヒョロ感」のような、相反する二つの雰囲気も感じています。イントロや間奏で響くロックギターには強さが、フルートとホルンは明るくお気楽でありながら、どこか破れかぶれな感じもありますね。
もちろん、この印象は歌詞に強く影響されたものです。ただ、演奏と歌詞が一体となり曲を作る以上、そこに相関性があるのは自然だとも思います。歌詞上の強気な面をロックギターが、寂しがり屋な面をフルート等の楽器が象徴していると感じています。

2. 個人的な想い
「魔法のコトバ」は、スピッツらしい優しさや温もりに溢れた一曲でしたが、この「シャララ」もまたスピッツの大切な一面、パンク的精神性を体現する一曲だと感じています。優しいばかりではなく、こんな風に吠えてみせるのもスピッツですよね。
そして、歌詞で描かれる主人公像が完全無欠のヒーロー的ではないところもスピッツらしいですね。強さと弱さを併せ持つのが人間という生き物でしょうから、そんな描かれ方をする主人公には親近感も湧きますし、感情移入がしやすいと感じています。
ところで、そんな「シャララ」は私好みの一曲なので、カラオケでよく歌います。歌ってみると良く分かりますが、「シャララ」のサビの高音連発具合はスピッツの曲でもなかなかのもの。男性のボイトレ、ミックスボイスの練習にもいい曲だと思います!

歌詞の世界を考える
ここからは、「シャララ」の歌詞を追いながら、歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「二兎は追えずに」としました。また、そのテーマを補足するために、以下の4つのトピックを準備してみました!
解釈は私の感想に過ぎず、全くもって他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、私の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスをまとめています!

1. 考察の前提
「シャララ」に登場する主人公は、優等生的な自分を演出して生きているようです。ただ同時に、サビではそれは本当の自分ではないという彼の叫びが描かれます。このことから、彼は周りから見た自分と本当の自分の間にギャップを抱えた青年と言えます。
ただ私は、彼が否定する柔らかい彼も、本当の彼の一部だと感じています。破壊衝動を抱えつつも温もりや優しさを求める彼の姿勢から、彼が孤独と無縁ではないことは明らか。彼の持ち物の中に胃薬が含まれるのも、やや打たれ弱い彼を思わせますね。
とは言え、曲中で強調されるのは彼のパンクな一面であることも間違いありません。そしてそれは、彼の優等生的な顔が強く出すぎた日常に対する反動でしょう。以降では、反骨心と純情を併せ持った普通の青年による、「魂の叫び」に注目していきます。

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2. 理想の影
いつ、いかなるときも礼儀正しい態度を崩さない爽やかな好青年。腹に抱えるものはなく、常に明朗快活に笑う素敵な青年。どんな逆境でも努力は必ず報われると固く信じ、力強く大地を蹴ってどんな障害をも乗り越えていこうとする不屈の青年。
物に執着はなく最小限の荷物しか持たず、身軽で行動力に溢れた青年。数少ない荷物である携帯に連絡が入れば、直ぐに何処へでも駆けつけ、誰かが涙を流せば、懐から涙を拭うハンカチをそっと差し出す。そんな絵にかいたような好青年が彼なのでした。
もし自分の評判を聞いて回ったなら、皆が口を揃えてこう答えるでしょう。彼は、そう確信していました。彼はこれまでどんなときだって、清く正しく美しくに沿った行動をしてきましたし、そうやって好青年としての評判を確立してきたのですから。

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3. 嘘の限界
ハッキリ言って、そんな自分は嘘っぱち。彼は優等生の演技を続ける中、常にそう叫びたい衝動を抱えていました。彼は別に、誰かに清く正しく美しくあれと強要されているわけではありません。彼が優等生を演じるのは、彼の臆病な心のせいでした。
彼は優等生の演技を防壁として、イザコザを避けてきたのです。優等生でいれば、八方美人と陰口を叩かれることはあっても、深刻な敵を作ることはありません。心に壁を作れば孤独は避けられませんが、世界と対立するよりはずっとマシでした。
傷つくことへの恐怖と、優等生を演じる負荷。その二つを天秤にかけた彼は、これまでは優等生を演じることを選んできました。ただ近頃、彼は強い迷いを感じていました。長らく瀬戸際にあった彼の心は、君への想いを切欠に動き始めたのでした。

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4. シャララ
君を想うと、自分の優等生としてのイメージの全てを打ち壊したくなります。そのイメージがある限り、彼は君に近づくことも許されないのですから。現に、まだ優等生の仮面を捨てきれない彼は、君の恋愛事情を探ることさえ出来ていないのでした。
明るい光ばかりの世界の中で、妖しげな桃色が見たい。優等生の常識で全てを希釈して整えたりせず、ドロドロの本音を認めたい。そんな本当の彼を受け入れ、優しく撫でて欲しい。その相手が君なら理想的ですが、無理ならこの際誰でも構いません。
ただ、そんな本音を抱える彼も、結局行動は出来ずにいました。演技を止めれば世界との対立は避けられず、彼はまだその踏ん切りがつかないのでした。だから彼は、今日も明るく爽やかなまま。世界も美しく輝き、ただ「シャララ」と流れるのでした。

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さいごに
私は、ラスサビ後に冒頭と同じ歌詞が繰り返されるのが曲のミソだと感じています。サビにあるような、本当の自分と自分の振舞いのギャップへの葛藤を抱え、変わりたいという願望を叫ぶ彼ですが、また今日もいつもの一日を繰り返していくのですね。