「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「新月」は、スピッツの13thアルバム「とげまる」の収録曲。メロディアスなピアノが夜闇に凛と輝く月を思わせる一曲ですね。
この記事では、そんな「新月」の魅力を語りつつ、歌詞の意味も考察。新月の夜に、新たな生き方を始めた青年の物語を考えました!
「新月」とは
「新月」は、スピッツが2010年に発売した13thアルバム「とげまる」の収録曲です。前曲の「つぐみ」は温かなラブソングでしたが、この「新月」は凛とした夜闇の広がりと、満ち欠けする月から滲み出るミステリアスな雰囲気を感じる一曲です。
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | 新月 | 夜闇&ミステリアス |
---|
1. 演奏への印象
「新月」の演奏には、ミステリアスな印象が強いです。演奏が纏う色も「黒」で、これまでの曲とは明らかに異質です。ただ「新月」は、そんな「とげ」だけの曲ではなく、曲と不可分の存在、月が持つ優しいイメージ由来の「まる」も感じる曲です。
演奏面では、イントロから鳴り続ける凛としたピアノの音色に、深い闇をしかと見据えるような、力強い眼差しを感じています。また、漂うような雰囲気のある間奏はどこか幻想的で、ミステリアスな新月が呼ぶ不思議な力の流れを感じています。
また、草野さんのボーカルも、曲の凛とした美しさを引き立てる要素の一つ。サビを中心として中高音域が連発されますが、まさに草野さんの真骨頂ですね。また、サビでのハモリも美しく、新月が持つ不思議な力を感じさせるものになっています。
2. 個人的な想い
「新月」は、アルバム内での雰囲気調整曲だと感じています。ここまでのアルバムの曲は、優しいラブソングか勢いあるロック曲のいずれかで、温もり・興奮などの「熱量」を感じる楽曲でした。そこで、「新月」で少しクールダウンというわけです。
「新月」は、冷たさだけを感じる曲ではありませんが、やはりイントロのピアノの印象が強く、表面的な印象ではクールな雰囲気が勝ります。ただ、曲を通して聴けば、クールな雰囲気の背後から滲みだす、魔法の月の不思議な包容力も感じますね。
また「新月」は、変革への決意を感じる曲ですから、それが転じて、私自身の挑戦にも勇気をくれる曲だと感じています。世界の波に逆らい、自分を貫く。「新月」は、そんなスピッツ頻出テーマを、ややシリアスな雰囲気で描いた一曲だと感じています。
歌詞の世界を考える
ここからは、「新月」の歌詞を追いながら、その歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「あの月も隠れる夜に」としました。また、その考察テーマを補足するために以下の通り、3つのトピックを準備してみました!
曲解釈は私の想像であり、他人に押し付ける物ではありません。ただ、出来る限り想像の根拠が提示できるように、歌詞とリンクさせながら進めていきます。私の想像を楽しんでいただけると、嬉しく思います!
1. 考察の前提
「新月」は、サビで歌われるように「自己変革」への決意を描いた曲でしょう。主人公が目指すのは、フロンティアを切り拓く冒険者。つまり、未知の世界を進む冒険者です。そんな「新月」は、有体に言えば、掟に逆らう青年の物語とも言えますね。
ところで、新月とは地球から見えなくなった月のこと。その原理はさておき、月に1回程度の周期で起こるようで、新月の時期は新しいことを始めるのに適しているとされるようです。この曲での新月も、彼の挑戦を後押しする存在だと言えるでしょう。
また、2番のサビを見ると、彼と掟の関係性が分かりやすいです。ここにある「中央」とは掟の支配を表し、そこから動くなと命令する声は世界の同調圧力を示しているでしょう。ただ彼は新月の夜、その声にも屈せず、独自の道を進み始めるのですね。
(一覧に戻る)
2. 気づいた心
彼は、気づいてしまいました。世界の掟に従うことは、自分の望みではないということに。掟に従っていれば、悪目立ちすることはありません。それは、世界で生きるために大切なことです。しかし彼はもう、掟に心を捧げるのを止めたいのでした。
掟に従って生きてきた日々は、確かに安定していました。しかし、その日々は「既知」を繰り返す日々でもあったのです。変わらない景色ではなく、地平線の先が見たい。その想いに気づいて以来、彼は心の片隅に微かなざわめきを感じてきました。
そして今、彼はその本心に背を向けることは出来なくなりつつありました。安定を失うことになるとしても、彼は地平線の先に何があるかを確かめたいのです。確証などありませんが、地平の果てには彼の心が躍る何かが待っている気もするのでした。
(一覧に戻る)
3. 新月
月も隠れた夜。彼は、掟に背を向けて歩き出しました。慣れ切った既知の世界ではなく、驚きに溢れた未知の世界へ。彼の行く先には、様々な苦難が待ち受けているに違いありません。しかし、生まれ変わった彼は、全てを越えて行けるでしょう。
掟の外へ歩き出した彼を待っていたのは、嘲笑と妨害でした。実際、掟の教えに従うのが当然、という罵声にも似た助言も、頻繁に彼の耳に飛び込んできます。しかし、そんな世界からの圧力も、彼の未知への好奇心を消し去ることは出来ませんでした。
道連れがいないのは寂しいですが、その孤独感は彼が掟から離れた証です。だから彼は、その孤独感すら糧とする決意なのです。それに、明日には。明日にはきっと、心躍る何かと出会えるはずです。彼はそんな願いを、そっと新月に投げました。
(一覧に戻る)
さいごに
冒頭の歌詞は、月が姿を消したから「正常な世界」が広がったとも読むことができ、この解釈ならば、月は掟の代理人となるでしょう。ただ私は、「新月」での月は、掟と対比して描かれていると感じているため、新月は彼の友人として解釈しました。