スピッツの曲

スピッツの「テクテク」の感想。「切なき成長」を軸に、歌詞の意味も考察

「テクテク」のイメージ
こんな記事

「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。

今回の「テクテクは、2005年に発売されたスピッツの30thシングル。人気曲の一つである、「春の歌」とのペアで発売されています。

この記事では、そんな「テクテク」の魅力を語り、歌詞も考察します。今回は、切なさを胸に成長していく青年の物語を考えました!

「テクテク」とは

「テクテク」は、2005年にシングルカットされ、その後、2012年に発売された「おるたな」にも収録されました。シングルのペアだった「春の歌」に比べれば知名度は低いですが、曲の魅力は「春の歌」にも劣らない、温かく泣ける名曲ですね。

曲名曲調一般知名度お気に入り度
1テクテク温かく切ない涙
テクテク歩いていくイメージ

1. 演奏への印象

「テクテク」の演奏には、穏やかな温もり泣きの成分を感じています。個人的に、「春の歌」には壮大さを感じますが、この「テクテク」には純朴さを感じます。生楽器が目立つ演奏が電気的な香りを薄め、この素朴な感じを生んでいると感じています。

演奏面で耳を惹くのは、アコーディオンジャンベという手太鼓の音色。いずれも温かな響きで曲を彩っています。また、間奏のギターソロは切なさと優しさを感じさせるもの。ポロンポロンという優しいアコギの音色は、温かく美しい涙を誘いますね。

そして何より、「テクテク」の魅力を伸びやかなボーカル抜きに語ることは出来ません。飾らない純朴なハスキーボイスが自然味溢れる演奏とこの上なくマッチし、聴き手を温かく包んでくれます。また、アカペラ的な曲の入りも本当に素晴らしいですね。

曲で印象的なアコーディオンのイメージ

2. 個人的な想い

「テクテク」にはアニメPVがあり、私はこのPVが大好きです。PVには、果実から生まれた謎の生物と少女が登場し、二人(?)の楽し気な交流と、訪れた別れ、切ない再会が描かれています。そして私は、このPVの物語のキーは「涙」だと感じています。

PV内では、時折目をアップにしたシーンがあるのです。別れを言い出せず、言葉の代わりに被っていた帽子を渡したときの少女の涙。そして、暫らくして別れを理解した謎の生物の涙。涙を流して少女は旅立ち、彼も涙を契機に少女を探す旅に出ていきます。

そして、最終的に少女を見つけた彼は、いつも自分がいた少女の隣に、知らない少年の姿を見ます。その光景は彼を傷つけたでしょうが、彼は涙は流しませんでした。そして、覚えた切なさを少女の幸せを喜ぶ心で抑え込んだ彼は、その姿を変えて・・・。

PVの結末のイメージ

 

歌詞の世界を考える

ここからは、「テクテク」の歌詞を追いながら、歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「君の全てに、ありがとう」としました。また、そのテーマを補足するために、以下の4つのトピックを準備してみました!

解釈は私の感想に過ぎず、全くもって他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、私の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスまとめています

信じた先に希望を見出すイメージ

1. 考察の前提

先述したように、「テクテク」のPVは興味深いですが、今回は歌詞ベースで解釈していきます。つまり、PVにあった少女と謎の生き物の物語という具体的な形は取らずに、あくまで切なさと優しさを感じる物語というイメージのみを参考にします。

曲の主人公は君との交流、君からの言葉で自分を変えてきたようですから、二人は良好な関係にあるでしょう。ただ、ラスサビでは君は特別と認めたいという彼の願望が感じられるため、裏返しに、曲時点での二人はあくまで友人関係だと感じています。

さらに、二人の日々は終わりを迎えつつあるようです。それを示しているのが、歌詞冒頭の何かが壊れる描写、ラスサビの「将来の再会」への想い、そして名残惜しそうに振り向きながらも歩き出す主人公です。二人はこれから、別々の道を往くのですね。

1、2番のサビ直前の描写には、昔の彼の暗い生活と、それを宿命と受け入れていた彼の姿が浮かんできます。そんな彼は君と出会って変わりますが、やがて二人の日々にも終焉が。以降では、切なさを感じつつも、君がくれた新しい自分として一人歩いていく青年の物語を考えます!
テクテク歩いていくイメージ

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2. 切なき終焉

どんなことにも終わりがあるものか。ずっと続くと思っていた君との日々。終わりなど考えもしなかった君との日々は今、その輪郭を失いつつありました。穏やかな水面が風に揺られて形を変えるように、二人の日々もまた、その姿を変え始めたのです。

そうきっと、この世のどこにも永遠など存在しないのでしょう。穏やかな水面は風が吹けば乱されて、穏やかな日々も気づかないうちに崩れていく。そして、過ぎ去った日々は二度と帰ることはない。それが、抗いようのないこの世の真理なのでしょう。

ただそれでも、君との日々の記憶の欠片を胸に抱き、その存在を記憶し続けることは出来るでしょう。彼は、これからもずっとささやかな記憶の欠片を胸に抱き、その日々を力に変えていくつもりでした。自分を変えてくれた、優しい日々の欠片を。

彼は、別れを割り切って受け入れられるほど強くはありません。しかし彼は、君との道がここで分かたれるとしても、かつての自分に戻る気はありませんでした。君との日々で、彼は変わったのです。臆病と悲しみに身を委ねて、自分の殻に籠った暗い日々に戻るべきではないのです。
風を受ける水面のイメージ

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3. 扉を開いて

君との日々を振り返れば、そこかしこに優しい想い出が散らばっています。平凡で何でもない、しかし二度と繰り返されることはない奇跡のような日々。決して帰らぬ日々を思えば切ない気持ちにもなりますが、今の彼なら前へ進んでいけるはずです。

かつての、自分の殻に閉じ籠り、それが自分の宿命だと諦めていた自分。外の世界に憧れながらも、そこへ繋がる心の扉を開け放つのは不可能だと思い込んでいた自分。しかし、君との出会い、そして君から貰った優しい言葉は彼を変えてくれたのでした。

誰の目にも明らかな変化があったわけではありませんが、彼の内面には誰も気づかないほど小さな、しかし確かな変化がありました。そしてその微かな変化は、彼の日々を変え始めました。難攻不落だったはずの扉を、拍子抜けするほどあっさり開いて。

君がかけてくれた一言一言は、そんな大げさなものではないのでしょう。ただ彼は、そんな些細な言葉の一つ一つに様々なことを感じ取っていました。親愛の情、穏やかな温もり、そして優しい励まし。それらは彼の心に沁み渡り、彼が思い込みの宿命を乗り越える力となりました。
扉を開くイメージ

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4. テクテク

君との別れは、もちろん悲しいこと。しかし、ここから旅立つことが君の幸せに繋がると言うのなら、彼は切なさをこらえ、笑顔で君を見送るべきです。それが大好きな君への彼なりの恩返しであり、きっと彼自身の成長にも繋がっていくはずなのです。

君がいなくなるのは寂しいですが、君との日々の全てが消え去るわけではありません。君とやり取りしたメールを読み返せば、温かな日々を振り返ることも出来ます。これほどの絆で結ばれた二人なら、今道を分かつとも、きっとまた会えるはずです。

隠していた恋心も、もう認めてもいい頃合いでしょう。日影の自分には似つかわしくもない日なたの君ですが、それでもやっぱり君のことが大好きなのです。特別と認めた君への想いは、彼を励ますでしょう。試練も訪れるはずの、一人で歩く彼の旅路で

私にとっての「テクテク」は、切なく優しい成長の物語。歌詞の読み取り方によっては、君は既にこの世を去ったとすることも出来るでしょうが、私としては君は成長の過程で旅立っていくだけだと感じています。二人がそれぞれ自分らしく成長し、また出会えるといいなと思います!
一人で歩く彼のイメージ

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さいごに

PVの最後で、謎の生物が姿を変えるシーン、貴方はどう思いますか?あれは、悲しい自暴自棄の結果なのか、それとも成長なのか。私は、切なさと幸せのどちらも感じます。卒業式のような、切なさと希望が入り混じった複雑な想いが胸をよぎりますね。

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