スピッツの曲

スピッツの「オケラ」の感想。「挑戦」を軸に、その歌詞の意味も考察

歌詞中の主人公が憧れる原野のイメージ
こんな記事

「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。

今回の「オケラは、スピッツの35thシングル、「君は太陽」のカップリング曲。ミドルテンポの強いロック色を感じる一曲ですね。

この記事では、そんな「オケラ」の魅力を語り、歌詞の意味も考察。身の程知らずと言われても、挑戦を続ける青年の物語を考えました!

「オケラ」とは

「オケラ」は、2009年発売の35thシングル「君は太陽」のカップリング曲で、2012年に発売された「おるたな」にも収録されています。「君は太陽」はアップテンポで軽快ロックでしたが、この「オケラ」は対照的なヘビーさを感じるロック曲ですね。

曲名曲調一般知名度お気に入り度
1オケラヘビーなロック
曲が持つヘビーなイメージ

1. 演奏への印象

「オケラ」の演奏には力強い響きが溢れていて、「惑星のかけら」にも通じるヘビーなロック色を感じています。スピッツと言えば明るくポップとの印象が強い方も多いでしょうが、「オケラ」のような曲もまた、スピッツらしいと言えるでしょう。

演奏面では、何といってもイントロのギターサウンドがたまりませんね。ロックが好きな人なら、このギターの演奏は必ず気に入るはず。さらに、テンポは速くありませんがドラムも印象に残ります。少し不規則にも思えるプレーがカッコいいですね。

また、モヤがかかったようなボーカルのメロと、真っすぐなボーカルに戻るサビの対比も面白いですね。歌詞から言って、この演出はそれぞれ、迷いを抱えたメロと、それらを断ち切って、信念を貫く決意を感じるサビを生み出していると感じています。

印象的なドラムのイメージ

2. 個人的な想い

シングルのペアの「君は太陽」は、ロックバンドらしい力強い演奏を軸とした、太陽のような明るく眩い光を放つ一曲。一方の「オケラ」は、負けず劣らずの強いロック色を放ちながらも、曲が纏う色彩感は対照的な鈍色といった印象を抱いています。

「オケラ」が持つやや尖った雰囲気は、その演奏のみならず歌詞の影響も大きいでしょう。歌詞には所々、微妙にラフな単語が登場するのです。さらに、選択された単語の話に留まらず、歌詞が描く物語全体にも、主人公の反骨精神が感じられますね。

歌詞のメッセージとしては、その描き方は異なるとはいえ、本質的なテーマは「君は太陽」と同じだと感じています。つまり、「挑戦への後押し」と言ったところ。そんな「オケラ」は、スピッツらしい人生応援を感じる、私のお気に入りの一曲です!

未開の大地を進む、挑戦する主人公のイメージ

 

歌詞の世界を考える

ここからは、「オケラ」の歌詞を追いながら、歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「凡人だって、出来るはず」としました。また、そのテーマを補足するために、以下の4つのトピックを準備してみました!

解釈は私の感想に過ぎず、全くもって他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、私の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスまとめています

普通の青年のイメージ

1. 考察の前提

歌詞中の未開の大地とは、彼の未来の比喩と感じています。彼の可能性は未だに手つかずで、無限の可能性を秘めているのです。そして、身の程を教える掟は凡人の彼を制止しますが、彼は人間からオケラになって、掟をすり抜けようとするのです。

彼が飲む塩辛いスープは彼を囲む現実で、凡人の彼の行動を制限する掟と、失敗続きの挑戦からなるもの。そして、この現実が彼の涙や苦しみを生み出しています。ただ彼は、掟の論理とは違う輝きを放つ月の力も借りて、自由への挑戦を続けています。

ところで私は、彼が目指すオケラに二つの示唆を感じています。まずは、オケラがさほど人気者ではないことから、彼が世界の中心にいないことを。さらに、オケラの単純な生き物としての面から、欲望が複雑化した世界で、彼は多くを求めないことを。

2番のメロを見るに、かつての彼は掟に御されていましたが、今は違います。1番サビで断捨離した彼は、挑戦する身体だけが重要だと悟ったのです。自身の挑戦が花開く明確な手応えはなくとも、挑戦こそが彼の生きる意味。以降では、果敢に可能性に挑戦する青年の物語を考えます!
曲に感じる世界観のイメージ

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2. かつての彼

この世を支配する掟は、幸せの形を定義するもの。そしてその掟は、全ての人をふるいにかけ、それぞれに「身の程」を配給するのでした。それぞれが自分の領分を知ることで、安定した日々、身の丈に合った幸せを手に入れることが出来るのです。

そんな掟は、大きな夢を抱いた彼には辛辣でした。大言を吐く前に、自分が何者かを証明しろと彼に迫るのです。もちろん掟は、今の彼が何者でもないと分かっていて、わざとそんなことを言うのでした。彼に身の程を教え込み、憧れを捨てさせるために。

挑戦は才人だけに与えられた特権で、凡人は凡人らしく身の程を知るべき。掟は絶えず、そうして生きることで初めて、幸せを手にできるのだと囁くのです。そして、執拗に続いた掟の薫陶は、いつしか彼の夢も塗りつぶしてしまったのでした。

掟が言うがまま、色々なものを拾い上げつつ、夢への憧れは封印していた彼。ただ、掟通りの正しい生活をしていても、彼の日々が満たされることはありませんでした。何かがおかしい。立ち止まって自省した彼は、幸せを運ぶはずの掟こそが、自分を苦しめていると気づきました。
同じような型にハマって生きるイメージ

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3. 苦しくとも

彼らしくあれない中に、幸せなどない。そんな当たり前に、彼はようやく気付いたのでした。彼が目指すべきは、掟通りの賢い人間とは対極的な存在のはず。例えば、見てくれ重視の掟が嗤うオケラのような、無様でも愚直に自由に生きる存在です。

失いかけたからこそ、彼の憧れは崇高な志だと分かりました。ただし、真面目一辺倒ではなく、掟が嫌う遊び心をも含んだ。そして、この自由な心を抜きで、幸せはないのです。時間はかかりましたが、彼はついに自分と志は不可分だと理解したのでした。

今のところ、彼の挑戦は空振りが続いています。掟と対峙した彼は、手も足も出せないままに、掟の予言通りの結末を重ねているのです。ただ彼に、退くつもりはありません。本当に必要なのは、身体に湧き上がる挑戦心だと分かっているのですから。

それに彼には、とっておきの希望もありました。彼が望みを懸ける切り札とは、大切な君との再会。今は離れ離れですが、必ずまた会えるはずの君。そして、君と一緒ならば、新たな局面も開けるでしょう。今は失敗続きで苦しいとしても、君と再会出来れば、全てが変わるはずです。
同志を待ち望むイメージ

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4. オケラ

自分が凡人だと分かっていても、大胆不敵に行動しろ。そうして初めて、道が開けるのです。実際、彼には近頃、地平の果てから彼を呼ぶ声が聴こえる気もしていました。七転び八起きでも掟に挑み続けた結果、夢の実現が近づいているのでしょうか。

掟と対峙した彼が、派手な空振りとともに無様に転倒する様には、多くの人が留飲を下げています。ただ彼は、いつか必ず、掟の渾身の一球を攻略してみせるでしょう。もちろん、天才的フルスイングではなく、凡人らしく小賢しいミートスイングで。

乾いた音とともに、彼の完敗と言う肴を期待した聴衆も静まり返り、この上ない快感を味わえるでしょう。そんな日を目指す彼は今日も、君との再会を待ち望みつつ、地平線からの自由の息吹に耳を澄まします。誰も賭けない、凡なる大穴のオケラとして!

私にとっての「オケラ」は、自分を凡人だと分かっている主人公が、常識的には身の丈には合わない大望を胸に、挑戦を続ける物語。彼は自分を客観視する力はありますが、だからと言って挑戦を止める気はないのです。望みを叶えるのは、才能ではなく積み上げた行動なのですから!
原野の果てから声が聴こえるイメージ

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さいごに

個人的に、月にはいつも神秘的な力を感じています。その光は、眩い輝きに慣れた人間には微弱で物足りなくとも、オケラにとっては清廉な輝きで原野を照らす希望の光。欲望の螺旋を離れた彼は、そんな月明かりを力に変えているのだと感じています!

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