「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「スパイダー」は、スピッツの第5作目のアルバム「空の飛び方」の中でも、知名度の高い人気曲。スピッツらしい奥深い歌詞とキャッチーなメロディーが相まった、ライブでも定番の人気曲です。
この記事では、そんな「スパイダー」の感想を語りつつ、歌詞の意味を考えます。この曲の歌詞は怖いというのが定説ですが、それは何故でしょうか?また、それ以外の解釈をする余地はあるでしょうか?
「スパイダー」とは
「スパイダー」は、1994年にスピッツが発売した5thアルバム「空の飛び方」収録曲です。デビューから僅か3年後に作られた曲ですが、初期のスピッツの楽曲としてではなく、歴代ベスト曲の一つとして、ファンに認知されている曲だと感じています。
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | スパイダー | 意味深なポップ |
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1. 演奏への印象
「スパイダー」の演奏は、私のお気に入りの一つ。というのも、この楽曲ではアコースティックギターがかき鳴らされ、間奏部分を除いて、終始心地よいリズムを楽しむことが出来るから。アコギ好きとしては、この演奏は見過ごせません。
また、この曲がライブで演奏される場合、少しテンポを速めて演奏されます。曲の持つ軽快なノリがより強調されるので、ライブ版のテンポの方が好みです。観客がリズムに合わせて手を揺らすのも、ライブのお決まりだと聞いたことがあります。
また、「スパイダー」のライブ演奏では、サビで声を切るポイントがCD版と変わっています。CDでは伸ばしていた部分をスパっと切るのが印象的です。あえて声を切ることによって、曲全体にメリハリがついて、演奏の魅力が増しているように感じます。
2. 個人的な想い
「スパイダー」の歌詞は、憶測を呼ぶ物です。歌詞表現の中に「汚す」とか「戻れない」などという不穏な言葉が出てきます。この雰囲気の中で、君を奪うと歌う主人公の心境にも、諸々の想像が働くところです。また、曲PVもただならぬ雰囲気です。
例えば、1番サビ直前、「汚す」という歌詞と重なるように、演奏の背後に赤が現れます。また、「戻れない」と言った後のサビは、終始赤の背景です。まるで、善悪の逡巡をしながらも危険な行動に出た主人公が、狂気へと転がり落ちるようです。
さらに、一番最後の4人並んでのシーンは、塀の中での記録写真のようにも見えます。草野さんだけ椅子が長いのは、主犯格として描かれているからでしょうか。光のロープで縛られる草野さんの姿は、正義の掟に捕らわれたかのようです。
歌詞の世界を考える
ここからは、「スパイダー」の歌詞を追いながら、その歌詞が意味する世界を考えていきます。今回の歌詞のテーマは、「力の限り、遠くまで」としました。このテーマを補足するために、以下の4つのトピックを準備してみました!
曲解釈はただの妄想であり、他人に押し付ける物ではありません。この曲を楽しむための私なりの妄想というだけですから、ご容赦ください!単純に、こういう話も当てはまるかもな、というだけの妄想です!
1. 考察の前提
はっきり言って、この曲の歌詞とPVを見ていくと、この曲の歌詞が「怖いストーリー」を示唆しているという指摘は、全くもって正しいと思われます。特に、曲PVの作り方があからさまで、「そう解釈してください」と言わんばかりです。
ただ、ただです。私は、そういう「誘導」に乗りたくないのです。スピッツ好きな人は、捻くれ者の方も多いかもしれませんが、私は間違いなくそういうタイプ。スピッツのミスリードには乗らないぞ、騙されないぞと意気込んでいる自分がいます。
そんな訳で、今回は「スパイダー」は怖い曲という観点を離れ、解釈を考えます。君を奪うということが、必ずしも危険な意味でなくても良いはずです。その意識を前提に、今回は「力の限り、遠くまで」というテーマを前提に考えてみます。
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2. 僕と君の姿
歌詞では、主人公が寂しい蜘蛛とされています。一方の君は、可愛いとの描写があるだけですが、陰の彼と、陽の君という対照的な二人が思い浮かびました。君については、後述する解釈もあり、毒っ気のない無垢な箱入り娘と考えました。
地下の暗がりで息を潜める彼の姿は、獲物が網にかかるのをじっと待つ蜘蛛の姿と重なります。彼の蜘蛛としての行動は、2番のメロにある君の興味を惹く嘘を張り巡らせることで、君を自分に近寄らせようとする部分に表れているでしょう。
彼の嘘は、想像するしかありません。両親が君に教える世界とは違う、より楽しい世界があり、自分は君をそこに連れていくことが出来るという嘘はどうでしょう。当然、暗がりで息を潜めてきた彼が、そんな世界を知っているはずはないのですが。
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3. 汚れのシナリオ
1番のサビ冒頭では、理由を表す接続詞が使われています。さらに、その接続詞の直前には、洗濯したばかりの服が汚れていく描写があります。これらを繋げて考えると、彼が君を奪うのは、綺麗な服が汚されてしまうからということになります。
ここでの洗濯とは、清潔で、綺麗な物を連想させる言葉として解釈しました。そして、ここでの綺麗な物とは、君の心ではないでしょうか。そして、1番のサビの直前では、その美しい心が、汚れてしまう危機にあることが歌われています。
しかも、その危機は誰かの計画通りとされています。そして、その計画の成就を妨害するため、彼は君を奪うことを目指すのです。ただ、君が汚れていくというのは、彼の主観に基づいた評価であり、そこに客観性が無いことも考える必要があるでしょう。
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4. スパイダー
1番のみならず2番のサビも、理由を表す接続詞で始まります。1番も2番もサビ直前のメロは、彼が君を奪いたい理由になっているのです。そして、この視点で1番と2番のサビ直前の描写を見ていくと、彼の心境の変化を読み取ることが出来ます。
1番のサビでは、君の美しい心を守るために君を奪うとしていたはずの彼。ところが、2番のサビでは、その理由がもう後には退けないからにすり替わっています。彼の計画への姿勢が、だんだんと後ろ向きな物になっているのは、見過ごせません。
彼がついた、嘘の魔法の効力が消えつつあるのかもしれません。2番のメロで歌われている君の知らん顔からは、君が彼への興味を失いつつある姿が想起されます。一瞬の嘘で君の気を惹くことは出来ましたが、彼の恋路に果たして先はあるのでしょうか。
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さいごに
私の中で、「スパイダー」における二人は、一心同体の逃避行をしている訳ではなく、彼の嘘に興味を持った彼女が、とりあえずついて行っているという感じです。君を連れた彼が、望む場所に到達することが出来るかは、半々と言ったところでしょうか。