「素晴らしい音楽なくして、素晴らしい人生なし」。この記事は、そんな私の人生を彩ってくれる楽曲たちを紹介していくコーナーです。
今回の「ラクガキ王国」は、スピッツの32ndシングル「ルキンフォー」のカップリングで、疾走感にあふれた攻めの一曲ですね。
この記事では、そんな「ラクガキ王国」の魅力を語り、歌詞の意味も考察。童心の象徴、ラクガキを胸に生きる青年の物語を考えました!
「ラクガキ王国」とは
「ラクガキ王国」は、2007年発売の32ndシングル「ルキンフォー」のカップリング曲です。「ルキンフォー」は、正統派の人生応援ロックバラードといった感じでしたが、この「ラクガキ王国」は、強い疾走感を感じるロックナンバーですね!
曲名 | 曲調 | 一般知名度 | お気に入り度 | |
1 | ラクガキ王国 | 疾走ロック |
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1. 演奏への印象
「ラクガキ王国」の演奏は、疾走感に溢れたものになっています。シングルのペアだった「ルキンフォー」には壮大な広がりを感じましたが、この「ラクガキ王国」では、ロックバンドとしてのシンプルさが意図的に強調されているように感じています。
「ルキンフォー」に感じるような壮大さや気品は、スピッツの魅力の一つでしょう。ただ、それはロックバンドとしての直球勝負が軸にあってこそ。そんな直球勝負を思わせる勢いに溢れた「ラクガキ王国」には、スピッツのロック魂が感じられます。
また、ラクガキとは綿密な計画無しに、勢いで描く絵。そんな絵をタイトルに冠した「ラクガキ王国」に溢れる勢いは、ラクガキの高揚感を示すかのよう。特に、ギターソロでのやりたい放題感は、紙の上に絵の具をぶちまけるが如き勢いがありますね。
2. 個人的な想い
「ラクガキ王国」の印象を簡潔に述べるなら、「山椒は小粒でもピリリと辛い」。ロック魂を、仰々しさ抜きでコンパクトに纏めた曲と言ったところでしょうか。また、勢いある曲調と裏腹の「ですます調」で書かれた歌詞は、どこか微笑ましいですね。
ところで、疾走感に溢れた演奏、特にギターソロにはどこか制御不能感を感じていて、強い勢いとともに、微かな危うさも感じています。歌詞中には、猛スピードで疾走する小さな車が出てきますが、その車はこのままだとコースアウトしてしまいそう。
ただ、曲の雰囲気にコースアウトへの恐れを感じるかと言われれば、答えはノー。ペースを落とすことなく走り抜ける演奏では、高揚感だけが輝いています。高揚した気分と、若さが作る無謀の盾に守られた青年には、不安など届かないのでしょうね。
歌詞の世界を考える
ここからは、「ラクガキ王国」の歌詞を追いながら、歌詞の意味する世界を考えていきます。今回の考察テーマは、「童心に帰って生きる」としました。また、そのテーマを補足するために、以下の4つのトピックを準備してみました!
解釈は私の感想に過ぎず、全くもって他人に押し付けるものではありません。また、作詞意図に沿った「正解の解釈」より、私の感想が優先されます。なお以下で、私の解釈のスタンスをまとめています!
1. 考察の前提
「ラクガキ王国」の歌詞の中では、ラクガキが主人公の国になる様子が描かれています。常識の掟の中では価値のないラクガキは、彼には価値あるものなのですね。この意味で、私はこの曲にも、常識の掟と彼の在り方の対立構造を感じています。
また彼は他にも、価値が無さそうなものに好意的な態度を示しています。それは例えば、紙製の王冠や色鮮やかな果実など。いずれも、成熟した世界にはそぐわない子供っぽい印象を受けますが、それらを大切に思う彼は童心を抱いているのでしょう。
また、ラスサビの直前では、新たな掟の存在が示唆されています。ここからは、彼が世界に溢れる常識の掟、つまり全てに理路整然とした説明を求める掟を離れて、もっとバカバカしく、曖昧で子供っぽい掟に従って生きようとする決意を感じています。
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2. 真夜中の影
この世界では、全てに明確な説明をすることが求められています。曖昧さに身を委ねるのは、子供のような未熟さの証明で、恥ずべきこと。全てに確固たる根拠を持って説明できるようになることが、立派な大人、一人前になるために必要なのでした。
そして、その「正しい成長」のために必要なのが、掟への習熟でした。人々は、その掟を学ぶことで正しい振舞いを身に着け、未熟さを捨て去ることが出来ます。そして、成熟した大人は風格ある所作で、秩序ある立派な街を作り上げるのでした。
掟が沁み込んだ街はいつも秩序だっていて、整然とした佇まいを見せています。喧騒に包まれることもなく、全てが美しく整った街。ただ、そんな理想の街の中、秘かにうごめく影がありました。掟が眠りにつく僅かなスキを突いて動き出した影は・・・。
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3. 自らの国へ
完璧に思えた掟にも、実は一瞬のスキがある。掟に従順なフリを続けた彼は、ついに掟を出し抜いて、掟を油断させることが出来ました。彼は自身に共感していると誤解した掟は、警戒を緩めて休息を取り出したのです。さあ今こそ、脱出の好機です。
この千載一遇のスキを突き、この街を抜け出していく彼。そんな彼が目指すのは、この街から離れ場所に打ち立てた彼自身の国で、もちろん彼が初代国王です。掟なきその国に彼を縛るものは何もなく、そこでは自由に生きていくことが出来るでしょう。
今のところ、その国の住人は彼一人。ただ、今後彼の王国の存在がこの世界に知れ渡ったならば、この街を離れて彼に力を貸してくれる人もいるかもしれません。そう例えば、彼の大好きな君ならば、彼の下に一目散に来てくれるような気がしました。
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4. ラクガキ王国
成長という課題に圧し潰されていた彼の本心は今、再び動き始めていました。この調子なら、この成熟した街の中では影もなかった、鮮やかで浮ついた色も見つけられるでしょう。そう、彼がこの街を抜け出して彼の王国に至ったならば、きっと。
彼の好みは、掟がもたらす正しさではなく、本心の躍動。彼は、立派に見えずとも、特別な意味が無くても、心の躍動を伴うものに惹かれるのです。そんな彼が大切にしたいのは、掟の教科書ではなく、その余白に描いたくだらないラクガキなのでした。
掟の論理で価値のないものこそが、彼の王国の主柱。彼の素朴な王国は、掟が正義と呼ぶ成熟や風格ではなく、童心を主柱とするのです。彼は今、闇夜に紛れ、掟の街を抜け出します。掟の煙幕を抜けたなら、彼の自由の王国が見えてくるでしょう!
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さいごに
歌詞中では、教科書は正しさの象徴、そしてラクガキは幼さの象徴と言ったところ。ただ、正しさが時に堅苦しく思えるように、幼さも一概に悪ではありません。彼の童心、つまり自由と躍動の象徴たるラクガキは、彼の王国ではとても大切なのです!